ep3-5

 ソニアはツガルをイスに座らせて、手に持ったスポンジをわしゃわしゃと泡立てていく。

「ソニア、貴方の手を煩わせる訳にはいきません。やはりわたくしがソニアを……」

「いーから、いーから! 一度やってみたかったんだよなー、他人の背中を洗うっての」

 ソニアは得意げな笑みを浮かべると、ツガルの広くて大きな背中を思いっきりガシガシと洗い始めた。

「そーれ、ごしごし!」

 だが。

「あ゛~~! いだだだだ! ちょっと、何て事なさいますの!?」

 非力な姫の腕力でも、傷だらけのツガルの背中には非常に負荷の大きい行為になってしまった様だった。

「あ、わりぃわりぃ。力加減が分からなくてよ」

「まったく、貴方ってそういうガサツな所だけは男のままですのね」

 わずかに恨めしげな声を上げてツガルは抗議した。

 しかしすぐに機嫌を直す。

「わたくし、旅で負った傷がまだ癒えていませんのよ。もっと優しく、柔らかく撫でるように洗っていただけませんか?」

「お、おう……」

 仕方なくソニアは手のひらに泡を乗せて、そっと撫でるようにツガルの背中を洗っていく。

「いいですわね。でもその小さな手を使っていると、その間にバスタブのお湯が冷めてしまいそうですわ」

「あ、ああ。がんばる」

「そうではなくて、もっと柔らかくて面積の大きな物を使ってくださいませんか?」

「え……?」

 ソニアはどうすればいいのか分からず、ツガルの視線を追った。

 その視線の先には、ソニアの発展途上の双丘があった。

「おい、こんな時にどこ見て…いや、そうか。これを使えば…!」

 ソニアは自ら何かを閃いた。スポンジの泡を自分の胸に乗せていく。

 そして、おそるおそるといった動作で体ごと預けるようにツガルの背中に密着した。

「これなら…どうだ? 痛くないか、ツガル」

 ソニアは、危険な道中に自分を身を挺して守ってくれた勇敢な騎士のために何とか役に立ちたいという想いから、自分の柔らかい体をスポンジ代わりにしてツガルを優しくいたわった。

 懸命に、しかし優しくツガルの体を洗うソニア。

「ああ、ソニア! わたくしは感動しております。まさか貴方がわたくしの為にそこまでしてくださるとは……!」

 ツガルは感激のあまり涙した。

 なんて無垢な魂の持ち主なのだろうと心の中で彼を讃えた。

 これまで散々ツガルからスケベなイタズラをされてきて尚、今まさに陥れられているとも気付かずにソニアが体を張ってくれているという事実に深く感動した。

 そして、背中を撫で回す柔らかな膨らみの感触を堪能した。

「気持ち良いか? ツガル」

「ええ、とっても! 気持ちイイですわ!」

 2人の声が浴室に響く。

 やがてツガルの背中の隅々まで洗い終えたソニアは、泡を流そうと手桶を取った。

 しかし、ツガルに制されて手を取られ、ぐいと引き寄せられてしまった。

「な、何?」

「ソニア、まだ前が残っていますよ」

 ツガルはそう言うと、軽々とソニアを持ち上げて抱きかかえた。

 ソニアは足を開いてツガルの両足をまたがされ、体の前面がぴったりとツガルに密着する形になった。

「お、おい! 顔が、顔が近いっ!」

 赤面するソニアをツガルは離さない。

「ほら、背中を洗ってくれたようにこちら側もお願いいたします。ほら、ごしごし」

 ツガルの腕に抱えられてソニアはツガルと共に泡まみれになっていく。

「こら! やめろ! あ、あ゛~~っ?」

 哀れソニアの声だけが浴室に響いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る