ep1-7

 朝日に照らされてツガルは目を覚ました。

 全身が痛んで動かない。

 目を開けるとひらけた空が見えた。

 小高い丘の上で瓦礫に埋もれて寝ていたようだ。

「ハックション!」

 寒気にくしゃみをして気付いたが、彼は今何か温かい物に包まれて…抱きしめられているようだった。

「ん…何だァ?」

 それは自分より一回り大きな身体つきの騎士のようだ。

 いつの間にか男に抱き締められているとは…。

 生理的嫌悪感から彼は男の顔を睨みつけるように覗き込んだ。

「これって…!?」

 その顔には見覚えがあった。

 ありすぎるほどだ。

 しかしこうして面と向かうのは初めてだった。

 なぜならそれは、彼本人ツガル・アイゼンそのものだったのだ。

 思わず、彼は目の前にある自分の顔に手を伸ばした。

 そこでふと気付く。

 彼が伸ばした手が、細く小さな物になっていた。

 まるで、少女の手のように。

「おい、お前っ! いや、オレか? あぁ、もう! 何だってんだ一体!」

 焦るツガル。

 いや、今の彼をツガルと呼んで良いものだろうか。

 彼の姿は今や、塔の上で見た捕らわれの少女になっていたのだから。

「……ご無事でしたのね、私の身体」

 少女となった彼の下で、ツガルの身体となった彼女が目を覚ました。そして安心したように穏やかな笑みを浮かべるのだった。

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