ep1-6
「グヌゥ…!」
勢い余って老人を跳び越えたツガルが振り返って見たのは、魔力回路のローブから黒い煙のような物を吹き出しながら呻く老人の後ろ姿だった。
煙は次第に収まり、ツガルに向き直った老人は平然と両手を広げて見せた。
黒いローブの端がほんの少し切れただけだ。
「なかなかやるではないか、人間。だが余興は終わりだ。黙ってそこで見ているが良い」
老人が手を突き出すと再びツガルを見えない力に吹き飛ばされ、そのまま壁に押さえつけられた。
老人は片手をツガルに向けたまま、怯える少女の髪を掴んで無理やり立たせる。
「あぐっ」
「もう良い、明日まで待って居れぬ! 今ここで貴様の身体を貰うぞ、ソニア!」
老人のローブが再び光る。
呼応するかのように床一面の魔力回路も輝きだす。
禍々しいオーラが室内を満たし、壁に備えられた本や薬液瓶が床に投げ出される。
暴れる少女を老人は両手で首を締める様に吊し上げた。
「回路は起動した! もう誰にも止められん! ソニアよ、怯える事はない。何も貴様を殺そうという訳ではないのだ。貴様の身体をいただく代わりに、貴様にはこの老いた身体をくれてやる。ふはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははゥアッ!?」
ドゴッ!
両手を離した隙をツガルは見逃さなかった。渾身の体当たりで老人を弾き飛ばす。
老人の身体は真横から突き飛ばされて壁に当たって折れた。
呆気ない最期であった。
しかし、魔力回路に取り残された2人は…。
「怪我は無いか、お嬢ちゃん」
「んーっ! んーっ!」
首を横に全力で振る少女。
「そうか、元気そうだな」
「んーっ! んーっ!」
「あの爺さん、死んじまったみてえだが…この床の光ってるやつ止まらないな?」
「んーっ! んーっ!」
「ああ、口枷な、今外してやるから」
「んーっ! ぶは! げほげほ!」
「よしよし、怖かったな? 今足枷も」
「それどころじゃありませんわ! 早くここから出ないと手遅れに……!」
…なった。
魔力回路は力を開放し、極太の光の柱となって天を貫いた。
「な、なんだーーっ!?」
「いやぁーーーーっ!!」
光の奔流の中で2人は意識失っていった。
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