第1話 二人の出会い

ep1-1 第1話 二人の出会い

「お見合い~~っ!?」

 姫君、ソニア・フォン・メイルシュトロームははしたなく大声を上げた。

「こほん、失礼。取り乱しましたわ」

 数瞬後にはいつも通りの清楚な佇まいに戻るあたり、流石は姫君である。

 ソニアの侍従達が見守る中、王妃であるソニアの母親マリアから言い渡されたのが先の見合い話である。

「相手は由緒ある血統を持つ方々よ。写真を頂いているの。見て頂戴」

「いえ、見ません。残念ですがお母様、わたくしはまだ心の準備が…」

「あら、私もこのメイルシュトローム家に嫁いだ時には心の準備などする間もありませんでしたわよ」

「ですが…」

「貴女はもう子を成せる体。王家に生まれた者は家の繁栄の為に身を尽くすものです」

「はい……」

 語って折れる相手ではないと知っているソニアは言及を止めた。

 ここはひとつ従順な所を見せて隙を見計らい…。

 その後、どうするのか?

 ソニアは母の説教に相槌を打ちながら、幾度目かの宛ての無い家出の算段を立て始める。

 こんな時、自分をこの窮屈なお城から連れ出してくれる殿方がいれば……とソニアは夢見る。

 強くて逞しい、どんな事があっても絶対に自分を助けてくれる素敵な騎士がいつか自分を奪い去ってくれたらいいのに。どんな時にも、例え世界中が自分の敵になっても最後まで自分の味方でいてくれる人がいるのならば、自分もその人にずっとついていこう。

「あぁ、早くここから連れ出して。わたくしの運命の騎士様……」

 見上げた窓の向こうから、欠けた月がソニアを見下ろしていた。

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