第3話 謎の島

この島は本当に何も起こらない。時間がとても長く感じる。ここで勤務していると、何か人生を無駄に浪費してるような気分になる。それでも誰も見てないのに時間通りにきちんと立哨し、規定通りに巡回する俺はやっぱり真面目なんだなぁとつくづく思う。カメラで録画されてるわけでもないのにね。

そして暇すぎて何もやる事が無いと、いろんな妄想が浮かんでは消える。暇潰しには妄想はちょうどいい。一番はやはり、何故この島に警備員が必要なのか?そして雇い主は誰なのか?という事だ。ここに来て以来のこの3年間はそればかり考えていたと言ってもいい。来てすぐは島中を細かく見ていった。最初は密猟者が来るのかと思って、海岸を特に気をつけていた。しかしめぼしい海産物も宝石や鉱石、金なども何も見つからなかった。そりゃそうだ。密猟者が来るなら配属になる時に教えられるはずだ。次に考えたのはとてもベタな漫画的なものだ。海賊のお宝が隠してあるのではないか!というよくあるパターンだ。半分冗談で、でも、もしかしたらもしかするかも!と思いつつ、やはり島中を探した。洞窟はないか?特に干潮時に出てくるようなのはないかと、海岸沿いは丁寧に見ていった。あとは地中をソナーのような古い機械で探査してみた。もちろん古いのであまり深くまでは測れない。宝の地図のようなものや、目印になりそうな岩や地形なんかも調べてみた。まあ、そんな漫画みたいなことはあるわけがなかった。あとは、地下の少し大きめの、あのシェルターが怪しい。何故この島にシェルターが必要なのか?いつ造られたのか?全くわからない。最近のもののような感じもするし、100年前のものと言われても違和感はない。そう考えると少し不思議なつくりだし、デザインだ。それで100人は収容出来て、その人数が1年は生活出来るような設備であるシェルター内を、各部屋全て丹念に調べてみた。個人の部屋のベッド、デスク、リビングルームのソファーの裏、スポーツジム、食料倉庫などなど。もちろん手掛かりは何も出なかった。それではと、もしやこの島には軍関係の秘密基地やさらにはあの伝説の兵器、核爆弾ロケットがあるのでは!と思い、また島中を探し回ったが、やはり何も出なかった。いったい業務以外で、俺はこの島を何周したのか(笑)。しかしシェルターも違うとなると、あとはあの地下の研究室しか考えられない。あれを守るために警備員を雇っているのだ。そう思い、なんとかあの研究室に入れないものかと、頑張ってみたが、やはり入れるわけはなかった。ダクトもドアも天井も何もかも、相当な頑丈さと緻密さで、まさにアリの這い出る隙間もない。それが余計に怪しい。もしかして、倫理に反するような危険な実験でもしていたのではないのか?動物実験とか、危険な物質を作るとか、異次元へのゲートを開くとか、宇宙人を隠しているとか。でも全く手掛かりは無かった。あとは自分でも意味がわからないが、この場所、緯度経度に人がいること自体に意味があって、誰もいないと宇宙のバランスが崩れるとかなんとか(笑)。流石にここまで考えると、妄想のし過ぎでわけわかんなくなってて、不条理過ぎて笑ってしまった。うーんいったい何の島なんだろうか?そしていつも妄想のスタート地点に戻っていく。

しかし今日はいつもと違った。耳に内蔵されてるスピーカーから着信音が鳴ったのだ。俺は空中を手で触って目の前にモニター画面を表示させた。丸田区長からだった。俺は敬礼をして、

「はい、第八管区太平洋第十六派遣隊、只野J三郎、勤務中異常ありません。」

といつもの文句を言った。

「はい了解。あーどもども丸田です。お疲れ様です。楽にして下さい。」

「お疲れ様です。」俺は敬礼を解いた。

「今からお客さんを連れて行きますんで、いつものタクシーの他にもう一台の車のナンバーを送るので、入れるように解除しといて下さい。」

この島には登録してある飛行機や車じゃないと入れないように、センサーをセットしてある。登録してない乗り物が侵入すると、アラームが鳴り、我が社の警備システムセンターと警察へ通報が行くようになっている。

「お客さん・・・ですか?」

この島にうちの会社の人間以外が来るのは、聞いてる限りでは初めての事だ。

「はい、そこの契約者さんが一度見ておきたいとおっしゃってね。私も初めて会うんですよ。ちょっと急なんですけど、ただ見るだけみたいなんで何もないと思いますから。じゃあ1時間後に行きますんで、よろしくお願いします。

えっ・・・・、契約者さんって事はこの島の契約者さんが分かるのか。じゃあ一気にこの島の秘密が分かるかも。完全に分からないまでも、ある程度の秘密は明らかになるか。

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