第24話神界の宴会
「それじゃあ皆。グラスは持ったかな?」
目の前ではイケメン平松が立ち上がり、全員を見渡している。
ここは神界にある食堂。僕ら13人はここでお互いの無事を祝って乾杯をしようという事になって集まった。
「一応元の世界基準で未成年の人はお酒は駄目ってことにしてあるけど。大丈夫だよね?」
そういうイケメンはきっちりお酒を用意している。
僕は他の席の人間に目を向けてみる。どうやら僕を含めて未成年は四人らしい。
平松パーティーの男の一人。
草薙パーティーは全員が成人。
女の子ペアのパーティーは二人とも未成年。
「この一年間。色々な事があったと思う。辛かったこと。楽しかったこと。悲しかったこと。時には死にそうになったり、時には理不尽な事を強いられたかもしれない。だけど今日ここにこうして集まれた事を僕は嬉しく思う。出来れば来年もこうして皆で杯を掲げたいと思っている。それじゃあ長くなったけど――乾杯」
「「「「「「「「「「「乾杯っ!」」」」」」」」」」」
「…………かんぱい」
さして辛い経験をした覚えがない僕は一人だけ気まずく小声で乾杯した。
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神界に到着してから5時間は経過しただろうか?
僕は周囲の喧騒を冷めた目で見つつチビチビとジュースを飲んでいる。
召喚された12人の人間はパーティー関係無しにパーティーに参加しているようで、非常に楽しそ――煩い。
そんな風にじっと見ていたのがいけなかったのか?
一人の男が僕に気付いて近づいてきた。
「なおっち。そんな所に居ないでこっちで一緒に話そうぜ」
「…………なおっち?」
僕はテイミングされたスライム系のモンスターでは無いのだが?
目の前で明るい調子で僕を誘うのは、平松パーティーで唯一の未成年の男で名前は――。
「上杉。その呼び方やめろ」
「えー。いいじゃないっすか。俺も久しぶりにタメの日本人と話せて嬉しいんすから」
まあ。周りが年上ばかりだったようなので気を使っていたのは解らなくも無いのだが…………。何故にこんなにフレンドリーなんだろう?
僕はグイグイ来る人間は苦手だ。ましてや茶髪のロンゲなリア充となると永久に距離を置きたい。
「それならあっちに居る女の子二人組に話しかけてくるといい。先ほどの自己紹介で18歳といってたし」
僕が指差した方に居るのは同じゲートを潜ってモカ王国に辿り着いた二人組だった。
「それならなおっちも一緒にいくっす。そうすれば男女二人ずつで釣り合いがとれるっすから」
「僕はいいよ別に…………」
そういいつつ僕は二人を観察する。黒髪ロングと茶髪の組み合わせ。
確か黒髪の子が
結局、上杉は僕が動かないと解るなり腰を落ち着けてしまった。
出来るだけ一人で居たかったのに…………。ホモなんじゃないか?
☆
「皆。聞いてくれ!」
パンパンと手を叩いて注目を集める。
平松と草薙が中央に立つと自然と他のメンバーもそちらに視線を向けた。
「今も伊織と話してたんだけどさ。一度僕らの認識を共有しておくべきだと思うんだ」
そう言って周囲をぐるりと見渡す。
「認識の共有ってどうするんすか?」
隣の上杉が疑問を口にする。
「まず。僕らは神候補。その事を踏まえた上で聞きたいんだけど。この中に神になっても良いって人はどれだけ存在するか」
「そんなの皆なりたいんじゃないっすか? なんたって神になればやりたい放題っすよ。女の子にモテモテっす」
そんな煩悩まみれの神が存在したら世界があっという間に滅ぶぞ。
皆も同意見だったのか上杉に冷たい視線が集まる。
「俺はごめんだな。神なんて堅苦しくて責任が伴うような存在になりたかねぇ」
草薙が答える。
「私は神になりたいわね。そして世界を平和に導くの」
彼女は草薙パーティーの魔法使い。
どうやら彼女は率先して神になりたい人種のようだ。
「とりあえず現時点で良いので神になりたい人間は僕の所に。なりたくない人間は伊織のところに集まってくれないか」
平松の呼びかけにぞろぞろと人が動く。
そして僕を除く全員が移動を終えた。移動した人間の内訳はこんな感じ。
神になりたい派
神になりたくない派
見事なまでに神になりたがる人間が少ないな。
「後は藤堂君だけど。君はどっちだい?」
ぼーっとしていたせいで乗り遅れたようだ。
僕は目立つのを嫌って多数派へと合流をしておく。
そして全員が移動を終えると。
「とりあえずこれが暫定的な区分けになるね。もちろん途中で気が変わった場合は変更してもらっても構わない」
既にリーダーシップを発揮している平松。もうこいつが神でいいんじゃないかと僕は思ったのだが。
「それで。僕から提案があるんだけどいいかな?」
全員が平松の言葉に耳を傾ける。
「とりあえず同じ世界の人間同士で争うのが一番不味いと思うんだ。だから現在の神を目指す三人を元にパーティーを組み直してそれぞれ神の座を目指すというのはどうだろうか?」
全員に浸透するようにぐるりと見渡すイケメン平松。その視線はどれもが肯定的だった。
僕は嫌な予感がしつつもその流れに逆らうことが出来ずに事態を静観するのだった。
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