第25話神界のダンジョン~平松パーティー~
「それじゃあ。今日は宜しくね」
目の前ではイケメン平松が手を差し出してきている。
僕はその手をとると。
「迷惑掛けないようにします」
適当に謙虚な態度をとるのだった。
さて。どうして僕が平松と握手をしているのかというと。
僕が正式に彼のパーティーへと招かれたから…………………………………………。
などという事は無い。
これは先日の宴会での話の末の結論だった。
曰く。
僕ら神候補はお互いにパーティーを組み連携や連帯感その他仲間意識を強めていくべき。
曰く。
幾つか臨時でパーティーを組めばおのずと役割が理解でき。最終日に別れる際には自分に適したパーティーが見つかるのでは無いだろうか?
曰く。
お互いの長所を見せる事で、お互いの弱点を補えるのではないか。
色々言ってはいるが、ようはお試しでパーティーを組んで使えるか見てやる。という意味だろう。
神になりたいと公言する以上、自分のパーティーには使える人材が欲しいはずである。
今回。様々な組み合わせを見るのはその一環だろう。
「じゃあ。早速ダンジョンに入ろうか」
そう言ってリーダーシップをとる平松。
僕らが現在居るのは、神界の建物の一角にあるダンジョンへの転移ゲートだ。
「その前に言っておきます。僕は魔術師なんで後衛を担当させて頂きたいのですが」
いきなり突入しようとする平松に僕からいっておく。
「ああ。そうなんだ? 確かにワンド持ってるし、防具も薄いからね。うん。わかった。じゃあサクラと連携してもらおうかな」
僕は平松の視線の先を見る。
朝倉桜。白い装束に赤いプリーツミニスカート。巫女装束を思わせるその衣装にポニーテールといった格好をしている。
なんでも神系統の装備らしく、魔法を使う際のボーナスが受けられるんだとか。
見た目の格好がこうごうしい割りに妙にエロイ。特にミニスカートとか…………。
「宜しくお願いしますね」
僕は期待をこめずにそういった。何故なら。
「ええ。勇樹さんのサポートがんばりましょう」
この人。平松にべた惚れだからだ。
いや、この人だけじゃない。
今回のパーティーメンバーの内訳はこうなっている。
リーダー……
メンバー……
メンバー……
メンバー……
メンバー……
メンバー……
僕と平松を除けば全員が女性。そしてその内3名は元々が平松パーティーの人間だ。
そして彼女達は全員が平松に好意を抱いているようなのだ。
だから、たとえ他の二人の衣装もエロくて目の保養になったとしても僕は他人に目が向いている女に邪な感情を持つほど落ちぶれていないのだ。
残る肝心の一人といえば…………。
「相川さんは前衛なんだね。一緒に戦おうね」
「ええ。お願いします」
態度こそ毅然としているが、いつ平松のイケメンスマイルにやられるかわからない。
そうなるとハーレムにくっついている僕はいたたまれなくなるので勘弁して欲しいところである。
・ ・ ・ ・
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・ ・
・
「とりあえずお試しの無料ダンジョンだからそうそう危険なモンスターは出ないと思うけど。各自油断しないように」
ダンジョンに入るなり。平松の声が引き締まる。
流石はイケメンだ。締めるところはきっちりと締めるらしく言動に隙が無い。
さて、今平松が言った言葉の意味について幾分の説明が必要だろう。
僕らが現在居る神界には現界では思いもよらぬ設備が多々存在している。
それは武器の合成設備だったり。魔法の開発設備だったり。新薬の開発研究所であったり。
この世界においてあらゆる研鑽が可能な設備が目白押しなのだ。
そして当然武器や防具、魔法と言った技術を開発したら試したくなるのが人の
そういった人間の為に用意されているのが神界のダンジョンである。
ここには様々な種類のダンジョンが存在している。
火山のダンジョン・深海のダンジョン・天空ダンジョン・砂漠ダンジョン・ETC。
種類を挙げればキリが無いが、ようはそれぞれの目的に沿ったダンジョンが存在する。
ドラゴンと戦いたければ火山。シーサーペントなら深海。みたいな感じだ。
それらのダンジョンに入るためにはSPが必要になる。
これは一律1000SPだ。
神の説明では【保証金】のようなものらしく、一応無くても入れるらしいのだが…………。
「皆。敵襲だ!」
おっと。敵が現れたようなので説明は後ほど。
☆
「凜ちゃんは左のハイオークを頼む」
平松はそういうと自身は右にいるハイオーク二体へと突っ込んでいく。
だが、平松が突っ込むそのハイオークの後ろには三体のオークアーチャーと二体のオークメイジが控えていた。
このまま突っ込めば平松は集中攻撃を受けることになる。
「【アローレイン】」
だが、赤崎が矢の雨を降らせると、オークたちが浮き足立つ。スナイパーのスキルで範囲に矢を降らせる技だ。
「かの者に眠りを――【スリープ】」
続いて朝倉の魔法が放たれると後方のオークアーチャー三体が眠りに落ちる。
これで残るのはハイオークが二体とオークメイジが二体。
「バフ掛けます。神の祝福を――【ブレッシング】」
坂上の補助魔法が前衛の二人の身体を包み込み動きが数段良くなった。
それと同時にオークメイジのうち一体が魔法を完成させる気配を放つ。
『ミズキ。右を止めろ』
『ミィ。リョーカイナノ』
僕はあらかじめ召喚しておいた水の上位精霊のミズキに命令してオークメイジの魔法を潰しておく。
ついでにもう一匹も魔法を使えなくなるように【サイレス】も忘れない。
まず、平松がハイオーク二体を苦戦することなく切り倒す。
そうしている間に相川も自分が担当したハイオークを倒してのけた。
そして、後に残るのは眠りに落ちたオークアーチャーと魔法が使えないオークメイジだけ。
平松達は確実な連携でそれらを処理していった。
・ ・ ・ ・
・ ・ ・
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・
「ふぅ。まさかダンジョンに入っていきなり中級のモンスターに遭遇するなんてね」
戦闘が終わると平松が一息ついた。
「でも。私達思ったより苦戦しなかったよね。勇樹があっという間に全部片付けてくれたし」
「まあね。でも相川さんも凄いよ。並みの冒険者なら数人かかりで倒すハイオークを一人で倒しきったんだからね」
確かに相川の動きも中々だった。女性とは思え無い程に鋭い剣技で終始ハイオークを圧倒して見せたからね。
「それに比べて…………」
「ん?」
全員の視線が僕へと向かう。それに対して僕は疑問の声を上げてみる。
「藤堂だっけ? 突っ立ってないでせめて魔法の一つぐらい唱えたほうがいいんじゃない?」
そう答えたのは赤崎。見るからに落胆した顔をしてみせている。
「そうですね。少なくとも3度は魔法を使うタイミングがありましたわ。味方に被害が出ない状況で打てるタイミングが。です」
そう言ったのは朝倉。彼女は魔術師なのでタイミングを誰よりも熟知しているのだろう。
「あははは。藤堂君は今までソロだったんだからさ。仕方ないよ。今回の目的は連携を学ぶ意味もあるんだから。これから覚えてくれればいいさ」
冷たい女性陣に対してフォローをしてくれる平松。内面までイケメンとかちょっとずるくないかな?
「次はがんばります」
そんなフォローを貰った僕は平松のメンツを潰さないように一応頷いておくことにした。
それから10度程、戦闘を繰り返す。
ダンジョンの1層の浅い部分だというのに出てくるのは中級モンスターと初級モンスターの混ざった群れなのは神界のダンジョンだからだろう。
現界のダンジョンとは強さの質が桁違いにようだ。
平松達は各々が出来る最善を尽くしてそれらのモンスターと対峙して倒していった。
だが、僕はミズキに軽く妨害を命じる意外は特に動くことなくその日のダンジョンを終えた。
お陰で、ダンジョンから出る頃には女性陣の視線の冷たいこと冷たいこと。僕は明日以降のパーティーが早くも嫌になり始めていた。
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