第14話 VSレッドドラゴン戦

「貫けぇええぇぇぇ! グングニーーーールゥゥゥーーーー!」


 僕が今動かなければ女の子はレッドドラゴンの餌食になってしまう。

 それだけは許せない。そう思って僕は手に持って神の槍を投げつけた。


 光の線が駆け抜ける。僕からレッドドラゴンまでの最短を通ったそれはレッドドラゴンの巨大な体躯を貫通すると岩へと突き刺さった。


「GURUAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!?」


 再び大きな咆哮がしたかと思うと、レッドドラゴンは後ずさった。そして……………………。


「やっ。やったか?」


 エクスカリバーの一撃でゴールデンタートルは倒す事が出来た。

 それならば同等の武器であるこれでレッドドラゴンが倒せてもおかしくない。


 だが……………………。


「GAAAAAAAAAAAARUUUUAAAAAAAAAAAAAA!?」


 体制を持ち直したレッドドラゴンは怒りを僕へと向ける。

 くそ。流石に一撃では決まらない。


 僕はグングニルの能力を思い出す。


名称:神槍グングニル

効果:投擲時に必中の効果を持つ神槍。

必要SP:77777


 この槍は投げれば必ず目標を貫く。だから僕はこれで倒せると思ったのだが…………。


 僕は神の瞳を起動してレッドドラゴンを見る。



固体名:レッドドラゴン


レベル: 229


HP 15000/85000

MP 30000/35000

STR 60000

DEX 100000

VIT 80000

INT 15000

MND 15000


解説:火山などに生息するモンスター。鉄をも砕く牙に、鋼鉄をはじく鱗を持つ。鈍そうな見た目の割りに高い敏捷性と知能を持つ。


 効いてはいる。だが、神槍の一撃をもってしても倒しきれなかったのは事実。

 そしてレッドドラゴンは突如現れた僕に対して怒りを向けている。


 もし、身を翻して逃げようものならば即座に追いかけてきて食い殺すつもりだろう。


 僕は、レッドドラゴンから注意を反らす事無く【テレポリング】を指から外す。


名称:テレポリング

効果:任意で設定した座標に転移する事が出来る。座標は上書き不可能。

必要SP:12000


 転移先が宿に設定されている指輪だ。


 そしてインベントリから新たに取り出した指輪をその指に嵌める。


「おらぁっ! こっちだ! 掛かって来いっ!」


 まずはあいつを少女から引き離さなければならない。

 このままでは食べられてしまうどころか、戦闘の余波に巻き込みかねない。


 僕の挑発が聞いたのか、それとも脅威を先に取り除こうと思ったのか、奴は僕を獲物としてあらためる。


 僕は右手に【大気の結晶】を持つとレッドドラゴンを牽制する。


名称:大気の結晶

効果:風の上級魔法【トルネード】を使う事が出来る。威力はMNDに依存。一度使うと無くなる。

必要SP:300


 これは風の上級魔法を使える結晶だ。

 最悪飛び掛られても風圧がレッドドラゴンを押しとどめてくれると思っている。


 時間さえ稼げれば後は何とでもなるのだ。


「GAAAAAAAAAAAAAAA!!!?」


 レッドドラゴンが吼える。そしてその図体では到底考えられないような速度で走ってくる。

 僕はそのダンプにも近いであろう質量に対して結晶を解き放つ。


「くらえっ!【トルネード】」


 僕の目の前に竜巻が巻き起こり、そしてレッドドラゴンを直撃する。



「GUA! GUGYAAAAAAA! GAAAAAAAAAARUUUUU!」


 苦悶の声が聞こえる。僕が使った結晶は思っていたより効果があったようだ。

 レッドドラゴンは前に進む事が出来ずに竜巻の中心へと留まり続けた。そして――。


 魔法の効果が消える。

 レッドドラゴンは身じろぎ一つ出来ないのか、身体を動かさずにいる。


「…………今度こそ倒した?」


 僕は緊張を切らないように慎重に行動する。

 レッドドラゴンが突然襲い掛かってきても大丈夫なように聖剣を片手に近づいていく。


 もし仮に生きているとしてもエクスカリバーを振るえば確実に倒せる。そんな考えが良くなかった。

 僕は側面から回ることなく正面から奴に近づいた。


 そして生死を確認しようとした所で。


「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!」


 レッドドラゴンが頭を上げて咆哮した。その牙の奥からは火がチロチロと見えている。


「ファイアブレスか!」


 手には聖剣を持っているが他には何も無い。結晶で防ぐ事も出来なければ盾で遮ることも。

 恐らく、十分な間合いに入るまで死んだ振りをしていたのだろう。


 ここはレッドドラゴンの間合い。獲物を一撃で倒す為に苦心の策を弄した絶対回避不可能の領域だ。


 僕はまんまと奴の罠に嵌り、不用意に近づいた。


 やつの目と僕の目が交差する。

 その金色の瞳は勝利を確信しているのか、開かれた口は獲物を殺す喜びを形どっているようにみえた。


 一瞬が永遠になる中、レッドドラゴンは僕に向けてその口を向ける。

 そして、解き放たれたファイアブレスが僕めがけて殺到する。



 次の瞬間。レッドドラゴンの身体は背後から切り裂かれて真っ二つになった。


 ☆



「ふぅ。備えあればってやつか…………」


 僕の目の前でレッドドラゴンが粒子となり消えていく。

 同時にインベントリにアイテムが追加された。


・ドラゴンの肉×200

・ドラゴンの鱗×100

・ドラゴンの角×2

・ドラゴンの爪×10

・ドラゴンオーブ×1


 インベントリの内容を確認すると僕は指に嵌めていた指輪を外す。

 レッドドラゴン戦の直前に装備した物だ。


名称:テレポリング

効果:任意で設定した座標に転移する事が出来る。座標は上書き不可能。

必要SP:12000


「擬似テレポ魔法ってやつだな」


 そう。僕が新たに装備したのはテレポリングだった。

 僕はレッドドラゴンの強さをみて普通に戦っては隙をつけないと思ったのだ。


 レベル差もさることながら、たとえ回り込んだにしても動きの残滓が残っていればそれを目標に攻撃される。

 だから、相手が大技を使った隙をついて攻撃するしかない。そう思った。


 結果として策は成功した。

 レッドドラゴンを挑発して接近させ、僕が指輪でマークした場所からとおりすぎたあたりで足止めをする。


 そして、油断した振りをして近づき。相手がこっちを罠に嵌めたと確信した瞬間に転移して背後に回りこみ、エクスカリバーで一閃した。


 同じ手は二度通用しないだろうが、初見殺しは初見で殺してしまえばどうという事は無い。

 このほかにも僕は相手を嵌めるような道具の使い方を幾つか思いついている。




「んぅっ。きたか…………」


 レッドドラゴンが倒された事により、大量の経験値がなだれ込む。

 これほどの感覚は2ヶ月前のゴールデンタートル以来である。


 僕は自身のレベルが上がって居る事を確信してステータスを開いた。



レベル: 107


職業:見習い魔道士


HP 12000/12000

MP 17900/18000

STR 3000

DEX 3500

VIT 3000+100

INT 4400

MND 4400


称号:神候補 ドラゴンスレイヤー←New


ユニークスキル:Duplicate インベントリ


SP:108000



 僕はドラゴンスレイヤーの称号を獲得した。

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