わすれもの
迷い込んだ子供を喰らう魔女。
一年を通して青々とした葉を携える木々と時折辺り一帯を覆う霧は光と熱を嫌う魔女を守る為にある。
故に森から魔女は出られない。
しかし忘れる事無かれ
決して、あの森に入ってはいけない。
誰が言い出したのかわからないが、
この地域の子供は皆知っている。
私も祖母によく聞かされた。
もっとも、昔から森と共に生きてきた祖母は馬鹿な噂だと笑っていたが。
他の老人達は子供が森に入る事を毛嫌いしていたが祖母は違った。
好奇心旺盛だった私を散歩に連れて行ってくれた事を覚えている。
祖母が亡くなった後、私は1人で森を歩くようになった。
幼い頃の私と同じように、好奇心に満ち溢れた子供達と出くわすと童心に帰って一緒に遊ぶようにしている。
祖母との思い出の詰まった、私の家とも言えるこの森を恐れてほしくなかったから。
子供達と遊んでいるとあっという間に時間が過ぎて、夕方になってしまう。
可愛らしい子供達とお別れして自分も家に帰ろうとすると、自分の手や服が真っ黒に汚れている事に気がついた。
年甲斐も無く泥だらけになって遊ぶのもなかなか良いものだ。
ふと足元を見るとおもちゃが転がっていた。子供達の忘れ物だろうか?
私の手や服と同じように汚れてしまったそれを拾い上げて懐にしまった。
綺麗にして、また会えた時に返そう。
立て付けの悪い扉を開けて家に入る。
おもちゃを机に置いて、とりあえず手を洗ってから着替える事にした。
振り向くと視界の端に棚が映った。
ガラス越しに見える棚の中には様々なおもちゃが飾られている。
私と遊んでいると不思議とみんな忘れ物をしてしまうらしい。
その都度拾って丁寧に保管しているけれど.....
どうして、誰も会いに来てくれないんだろうか?
Crydle 非奈 @Arane
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。Crydle の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます