3:邪神任侠と薬剤師の話をしよう

すぽん: ラノベ的に言うと、邪神任侠はかなり正攻法なので


しぃる: 邪神任侠、名前を言ってはいけない例のお方から「面白かったよ。クトゥルフのガワを剥ぐとオーソドックスなハードボイルドだよね」って言われた


すぽん: 闇の評議会来たな……


しぃる: 実際、クトゥルフ要素除くとマジ邪神任侠は正攻法の異能バトル物


しぃる: 俺、特別なことやる才能無いし!


すぽん: とりあえずここにきて「クトゥルフ?」ってなる人がいると思うので簡単なあらすじをお願いします!


すぽん: それともあとで付け足す?


しぃる: せやな!


 説明しよう。

 2018年3月15日に発売された邪神任侠は、薬剤師の主人公・香食禮次郎が、ひょんなことから拾ってしまった美少女クチナシと恋に落ち、愛に狂い、札幌の裏社会を牛耳る巨大犯罪組織清水会の殺し屋へと身を落とブレイキング・バッドし、邪神を崇めるカルトと対決するというハードボイルドクライムノベルである。

 古式ゆかしいハードボイルドクライムノベルなのだ。


 この作品は昨今流行りの創作神話“クトゥルフ神話”を題材として取り上げている。はるか古代より存在し圧倒的な力を持つ邪神や、隠された知識に基づくおぞましい魔術などが物語に深く関わっている。

 なお、この神話を生み出したH.P.ラヴクラフト御大の命日は3月15日である。運命を感じてしまうよね~~~~~~!


しぃる: 入れてみたよ


すぽん: おつかれ


すぽん: いや、まあ、いわゆる押しかけ女房もの(JC)で、任侠もので、そんで魔法バトルっていうやつなんですけどね


すぽん: まず、ぼくが最初に思ったのは「これ、大人じゃなくて、中高生に読んでもらいたいなあ」ってことでした


しぃる: おっ、わかってもらえますか~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!

しぃる: そうなんだよ


しぃる: こじらせた中高生に読んでもらって性癖ネジ曲がってもらいたい


すぽん: ぼく、自分がラノベを書く際に大事にしたいのは「中高生の頃の自分に読ませたいか」ってことなんですよ


しぃる: 分かる


しぃる: 俺、中高生の自分が喜ぶことだけ考えてアイディア出して、あとは編集さんに制御全部任せてた


すぽん: マジで、そう。他人の意見大事


しぃる: やっぱそうだよね


すぽん: 青木くんも一度書き上げてから編集様の意見を受け、何度も書き直しました。ぼくは集中すると執筆スピードは早い方なので、書き直すことは苦じゃなかったけど、めちゃ悩む、一日中青木のこと考えてしまう、それ故に大学に行けなくなった。アホである。


しぃる: アホ……強く生きて


すぽん: まあともかくですね。中高生の頃って本当に読む本で今後趣味とか人生がどういう方向に行くか変わっていくピュアな頃なので


しぃる: うん、俺も虚淵先生の作品……具体的にはFate/Zeroで何かが明確になったよ


※Fate/Zeroの主人公である衛宮切嗣は香食禮次郎のキャラを作っていく上でかなり参考にしました


しぃる: あと浪人時代にプレイしたデモンベイン


すぽん: だから例えば邪神任侠なんか読んで「クトゥルフってなんだろう!」とか「薬剤師ってこんなことしてるんだ」とか「任侠ものっておもしろそう」とかそういう風に思って貰える点で、すごく良いなって思いました。


すぽん: はい、そういう要素が多かったとぼくは思う


すぽん: そう、海野先生は薬学部の方なので、薬剤師の描写がリアルで良いです


しぃる: やっぱり本出すと作品の悪口みたいなのも言ってる人居るんだけど、あの描写と薬の使い方についてだけは褒めてたからね、現場の薬剤師なら多かれ少なかれ見てることなんですけど、表に出さないんですよ。そういうとこやぞこの国の――


すぽん: ステーイ


しぃる: ステーイ


しぃる: ありがとう……!


しぃる: ぶっちゃけ薬剤師、いい仕事でもなんでもないんですよね


すぽん: 薬剤師は大事なお仕事やで、みんな。あの人らがいーひんかったらマージで医者大変。感謝


しぃる: そういう仕事している人も居るんですよね。それを世に広く喧伝できていないんですよ。イメージ戦略ができていない集団は滅びます。だから大事な仕事をしていても下っ端扱――


すぽん: ステーイ


しぃる: ステーイ


すぽん: そういえば男性薬剤師ってあんまりみーひんな、東京


しぃる: 病院でも、薬局でも、女性一人だけであんまり田舎の方にポーンと乗り込めないでしょ? だから女性だと都会の方で勤務の希望出すことが多いのよ


すぽん: その分田舎の方に男性が行きやすくなる?


しぃる: そういう傾向はあると思います。でもその分でお賃金弾んでもらえるのでありがたい話です。女性だらけの都会の薬局は! 怖いぞ!


すぽん: ステーイ!


しぃる: ステイ!


すぽん: 話を戻しますが、中高生に読んで欲しいと言ったもののえっちなシーン結構ありましたよね


しぃる: むしろ中高生にこそエロシーン欲しいでしょ。中高生こそえっちな文章を一生懸命読むでしょう? 大人になるとエッチな漫画やビデオが簡単に手に入ってしまう。でも中学生や高校生が店から手に入れられるのってえっちな文章くらいですからね。ネットにもエロは転がっていますが、やはり金で買うエロスにはかないません。故にエッチなところには俺も編集様も力を入れています


すぽん: 好きねえ


しぃる: 高校生のいとこ、超喜んでましたよもんぷち先生のドスケベ挿絵


すぽん: わらう


すぽん: まあでも、これだけ要素盛りだくさんなのに設定の使い方がめちゃくちゃ上手いんですよ


しぃる: あ、飛び道具の大量使用は俺の得意技ですね。編集さんにいっぱい褒めてもらいました


すぽん: 特に異能魔法バトルに「クトゥルフ」を持ち込んだのは、それだけで魔法の説得力が凄くあるので上手いなあって思いました。


しぃる: そうなんですよね、なんやかんや積み重ねられてきたイメージのお陰で、良い意味で呪術的な得体のしれなさが出てくるんですよね


すぽん: 魔法がご都合主義にならないのって難しくて、そこに上手くクトゥルフを当てるのが良かった。ただの女装にも説得力がある


しぃる: 女装ね!!!!!!!!! 女装あれね!!!!!!! すげえ好きなシーンなの!!!!!!


しぃる: ほら、あそこって禮次郎が人間初めて殺すからさ。そこへの落差を出すために直前までギャグっぽくしつつ一気に落とした。ジョジョみたいに。そのついでに自分の主人公に女装させたい欲望をうまくね


すぽん: でもあれ「どーせお前女装させたかっただけだろ」にならないんですよ。


しぃる: 名前を言ってはいけない例のあの人に胸を張って「僕も女装作品書きましたよ!」って言いたかった


しぃる: あの有葉がすげえ楽しそうに喋ってるシーン、実質中の人だよ


すぽん: いやでもこれ海野先生めちゃ興奮するのわかる、この女装シーンの挿入が凄く上手いんですよ


しぃる: でしょ????????? あれ我ながら技量極まってたなって! 丁度編集様の指導の効果がめちゃくちゃ出るようになっていた時期だったのもあってすげえ上手にできたなって!!!!!!!


すぽん: 魔法って難しくて、ぼくファンタジーとか書いてる人ほんとに凄いなって思うんですけど、何が難しいかって、その魔法のシステム体系に綻びがある時点でめちゃくちゃ説得力が弱くなるんですよね


しぃる: システム体系に綻びが生まれると、それはもう法になりませんからね


すぽん: 海野先生はそこにクトゥルフからの借り物を使うことで上手く書いたなあ、って思いました。


しぃる: 魔法はロジックなんですよね。違う世界のロジックがあって、そのロジックを決定する神の類がいて、その存在の声みたいなのを雰囲気できっちり聞き取れると魔法が書けます


すぽん: 魔法を書くってなると、一から自分で魔法体系作り上げるのってめちゃくちゃ難しいですよね


しぃる: 一から魔術基盤を組み上げた男、ラヴクラフトかトールキンになれますからね


すぽん: そう、偉人ですもはや


しぃる: どちらも時代は近いんですが、トールキンが王道みたいな扱いになって、ラヴクラフトが異端みたいな扱いになってるの、イギリスとアメリカの関係性とかも絡めて語ると面白そうだよなあ


すぽん: まあ、あと設定では、ヤクザと薬剤師の設定の使い方とかも上手いなあって感じでした。物理で殴るっていうのはやっぱり快感がありますね


しぃる: ヤクザに関してはモデルになった組織が有って、薬剤師に関しては日頃見ているので、まあ!


すぽん: 車で突っ込むシーンめちゃくちゃ好き


すぽん: 魔法を物理で殴るっていうのはめちゃくちゃいいですよ


しぃる: 衛宮切嗣ですからね


しぃる: 車で突っ込むシーンはですね、二つの世界のルールがぶつかっているんですよ


しぃる: すなわち人間の世界を支える人の理。そして神々の世界を紡ぐ神の理。この二つが争い合うことの象徴が女神シュブ=ニグラスの化身をランドクルーザーで轢き殺すってことなんですよ


しぃる: あと神話生物の細胞増殖にサルファマスタード打ち込むってことでもあります


すぽん: こんな緻密なことを考えなきゃいけないって思うと安易に魔法もの書けなくなるな……


しぃる: 北海道の大地で精霊の声を聞くとなんかそんなこと考えたくなるんだよ


しぃる: だから北海道出身のクトゥルフ作家様は多いんだよ


すぽん: さすが北の国は違うなあ


すぽん: そんでストーリーなんですけど


しぃる: はい


すぽん: なんか、ケチでもつけてやろうって思いながら読んだんですけど


すぽん: これ、本当にケチつけるところがない、いい作品でした


すぽん: 海野先生のあのロジックが忠実に生きてる


しぃる: ぶっちゃけケチつけられるようなところは編集さんが全部埋めてくださいました、故にあれは完全無欠です。俺一人じゃたどり着けない場所だった


すぽん: まあでも、エンタメ的には大正解ですよ。本当に。期待を裏切るところが全くない


しぃる: 予想は裏切るけど、期待は絶対に裏切らないのが主義です


すぽん: 本当に、「あー! そうしてくれるかあ!」ってところでちゃんとそうしてくれるのが


しぃる: 俺が精霊の声で押し切ろうとするところを編集様が補ってくださるのが本当に助かります……!


すぽん: 北の風に毒されているな


しぃる: 北の風は精霊を帯びている


しぃる: うさぎやさんも精霊の声を聴くと生きやすくなる


すぽん: 北、行くかあ~


しぃる: 北来いよ~!


しぃる: 8月中なら休みとれるぜ~!


すぽん: 今全財産千二百円ですから


しぃる: 生きて


すぽん: 特に最後のバトルは良かったですね


しぃる: あそこいいでしょ!!!!!!


しぃる: 最後のバトルはFGOのCCCコラボだった、刻を裂くパラディオンだった。僕は男女平等がモットーなので男も女も大切なものはこの手で掴み取れというスタンスです。なのでクチナシちゃんは愛する人を守る為にこれまで隠していた切り札の純粋暴力でマリアを叩きのめそうとするし、マリアもクチナシちゃんへの子供扱いをやめて「あなたを殺せば禮次郎はひとりぼっちで依存してくれる!!!」って殺しに行くし、禮次郎も「お前を殺さなきゃ俺は人間になれないんだ!」ってマリアを殺すんですよ


すぽん: そうやってみんなFGOをしてぼくを置いていく


しぃる: すまんな、メギド72やろうぜ。今なら確定召喚チケット発売中だし、リセマラ不要で最初のガチャを引き治せる。クオリティの高いシナリオと豪華な音楽、凝っているのに操作は簡単という絶妙なゲーム性が癖になる


すぽん: おお……


しぃる: ヨビサマッセートッキーヲコーエワレッラーヲー


※メギド72の主題歌とは関係ありません


すぽん: 海野先生すぐ歌うな


しぃる: キュウニウタウヨー


※シンフォギアの主題歌とは関係ありません


すぽん: 最後のバトル、やっぱり主人公が一枚上手っていうか、紙一重のところで頭が良いっていうのはエンタメには欠かせないですよね


すぽん: やっぱり主人公には賢く強くあってほしいんですよね、バトルものとして


しぃる: そりゃね! 最後は知勇を尽くして大敵を圧倒するのが英雄譚ですよ!


すぽん: そこに行くまでの過程もいいんですけど、やっぱり最後ここで! ってところにまた一つブーストをかけるってのが


すぽん: バトルものとしては完璧でしたね


しぃる: 最後に毒盛るのとかエロい女の子の定番暗殺ムーブなんだけど

禮次郎がやることでフィニッシュムーブとして決まるという


すぽん: まあでも最後の話ばっかりしてますけど、勿論序盤からずっといいです


すぽん: 出会いのシーンとかも印象的ですし


しぃる: いやでも最後の盛り上がりすごかったからね分かる。出会いはあれ編集さんとも「これ一本で話として成立するよね!」ってキャッキャしてた


すぽん: 中盤の情報開示の仕方なんてのもいいです。謎を置いておくことでリーダビリティ保ったりとか、そういう技があらゆるところで光ってる


しぃる: あれは本物川小説大賞で鍛えました


すぽん: すごいぜ本物川


しぃる: 名前を言ってはいけない例のあの人に「とにかく力でぶん殴れ」って教えを受けたのが良かった。俺に殴る力なんて無いので速度と正確性を高めて擬似的に力を生み出す仕組みを作りました


すぽん: まあ、兎に角海野先生は本当に努力型作家だな、って沁みましたね。やっぱりこう、エンタメ小説にはロジックが絶対に必要だって。それは本当にこの作品に表れてますよ。


すぽん: 起承転結、全部が全部、エンタメとしてあるべきことをちゃんとやってるんですよ。


しぃる: 編集様に指導を受けた結果です


すぽん: まあ、人の意見は本当に参考になりますよね……


しぃる: パワーってことだと、うさぎや先生のパワーは青木くんで感じて「やべえ、こいつ天才じゃねえか……」ってなった。正直、生まれ持ったパワーだけの相手なんて怖くないんですよ。でも溢れ出るそのパワーで、己が身を灼きながらも、それを制御して叩き込む相手は見ていて勝算が無いぞって不安になってくる


すぽん: えへへ


すぽん: じゃあ、青木くんの話に移りましょうか


しぃる: 移ろう


 そういうことになった。

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