第4話 「謁見」
目の前で自己紹介した想像上だけだと思っていたリアル王女様の登場にクラスメイト達が気を取られている間、颯天はこの異世界に自分の鞄がある事に安堵、回収していた。周りを見れば颯天以外の鞄が落ちていた鞄をクラスメイト全員がそれぞれの自分の鞄を持っており、そして現在颯天達はナタリーア王女の先導の元、騎士達に囲まれるようにして自分達を召喚したこの国アスロットの国王が待つ謁見の間へと向かっていた。
(‥…作りとしては普通の石に見えるが…)
(うむ、どうやら普通の材質のものではないようじゃの)
ただの独り言だったがまさか答えが返ってくるとは予想していなかったが、逆に念話越しに答えが返ってきた事に颯天は安堵した。だが念の為の確認は必要だ。
(ああ、そうみたいだな。ところでやっぱり白夜も召喚されていたのか?)
颯天と白夜は契約を交わしたことにより目に見えない、霊的な接続、つまり
(ああ、そうみたいじゃの。何かに引っ張られるように感じがしての)
(それで、目を覚ますと俺と一緒に召喚されていた、って事か)
(ああ、どうやらそうらしいの。それと、幸いの事に主殿との霊路への影響もないようじゃしの)
(そうか、それは良い情報だな)
颯天にとって白夜との霊路のつながりはアドバンテージにもなり、霊体化した白夜であれば情報の収集などの難易度も容易になる。また何より颯天にとって白夜は半身と言っても過言ではない存在でもあった。
(っと、とりあえず話はまた後にしようかの。そろそろ目的地のようじゃぞ)
(ああ、そうだな。じゃあ、とりあえず夜にまた話そう)
(了解じゃ)
白夜との念話を切るのと先を歩いていたナタリーア王女と騎士たちは一旦足を止め、ナタリーア王女は颯天達へと振り返る後ろではシャンデリアが輝き、そして赤いカーペット、壁は白亜のような真っ白な壁。まさしく絵になる言葉のままであった。
(まさしく、王族が持つ、人を導く類のオーラだな)
颯天は単純に感心したがクラスメイトは少々違ったらしく、思わず見惚れている奴が大半を占め、残りの少数は感心したようにナタリーアを見ていた。
「長い間歩かせて申し訳ありません。これより国王陛下と謁見をしていただきます」
ナタリーアの先ほど召喚の間でも説明された事に対する言葉に見惚れていなかった少人数は覚悟を以て頷き、見惚れていた他多数は何となくという感じで頷いていた。そして颯天は少数に属しておりちゃんと頷いていた。
「分かりました。それでは陛下と会っていただきます。」
改めての確認を取り、ナタリーアは頷くと謁見の間へと続く門を開ける指示をすると、扉は音を立てながら徐々に開いて行く。
「では、参りましょう」
そう言うと颯爽とドレスの裾を翻し、ナタリーアは開いた扉の奥、謁見の間へと足を踏み入れていく。
「いよいよか‥‥」
「ああ、この世界の王様とのご対面だ」
「ああ、ワクワクしてきた」
颯天と同じく少数に属している古賀大雅、小林猛、西乃阿貴斗がそれぞれに頷きながら歩を進めた。先ほどまで周りを囲っていた騎士達は今現在少し離れた所に避けていたので、騎士たちが作った道の中心を歩いて行く。そしてそれを皮切りに見惚れていた周りのクラスメイト達も呆けた奴を小突いて正気に戻し歩いて行く。そして颯天はその中に紛れる様にして謁見の間へと歩いて行く。
(さて、この国の王様には俺はさして興味が無いからな…まあ、とりあえず抜け出すなら夜だな)
そう密かに城からの脱出を考えていた颯天だったが、注意が少し散漫になっていたのだろう。それ故に伏見が颯天を見ていたという事に気が付かなかった。
謁見の間の天井には先ほどここに来るまでに見た中で最も大きなシャンデリアがあり、床は真っ赤なカーペットが敷かれており、壁は白亜。
そして奥の一段高くなったところにある玉座には五十代ほどに見える青い髪と金色の瞳を持つ壮年の男がいた。頭には王冠があり、それが男を王であると颯天達に教えていた。そして、玉座の前まで歩いて行き、跪いた。
「おおリーア戻ったか。…後ろにおられるのが勇者の方達ですかな?」
「はい。勇者召喚の儀、異世界よりこの世界をお救い頂ける勇者様が我らにお力をお貸しいただけるとのことです」
その言葉に国王の周りにいた臣下と思しき人たちも驚きの声を上げた。
「おお、それは誠ですか!」
国王も例外ではなく、玉座からやや前のめりになりながらもナタリーアにではなく、直接こちらに尋ねてきた。
「はい、俺達は、この世界を救うために力を貸しましょう」
代表してそう答えたのは、先程の少人数に属し、クラスの中でリーダーでもある古賀だった。
―――――――――――――――――――
「それでは、宴までまだお時間が有りますので、こちらでお休みください」
城の使用人であるメイドに誘導され、颯天達は城の中の一室、恐らく貴賓室と思しき部屋へと通された。
そして、使用人が部屋から出ると、抑えられていたクラスメイトの歓喜が溢れ出した。
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