第23話 王国征服作戦
「今この村には面倒事がいつくかありますの」
七人の怒りなど無視し、
「まず一つ目、一番近くの街から百人を超える軍隊が来ていますわ。次に草原に魔獣とやらが大量に発生しているらしいですの。どうやらあの龍の縄張りだったみたいで魔獣は近づかなかったのですが、その龍がいなくなって縄張りを拡大しようと大量に出てきているとのことらしいですの。想樹さんの情報では村のほうへも魔獣がやってきているのだとか」
大海原は特に焦る様子も見せず、平然を言ってのけた。
このくらいは想定内の範囲だろうし、なんら問題にはならないだろう。
「いつまでも魔獣がやってくるのは面倒ですので、取りあえずあの草原にはあの龍並みの強さを持つ何かを配置するのが得策だと思いますの。あの龍でも可能ですが、ちょっと頭がおバカさんですので他に頭のいい魔獣を飼いならすのが一番ですわよね?」
「となると……」
「ええ」
オレと大海原は視線を合わせ、そして、想樹さんへと移した。
「
「僕がやる!」
RPGは食い気味に、名乗りを上げた。
その目は闘志によってメラメラと燃えている。
「お任せします、といいたいところですが、王国に着くまでに三つほど街を経由しないといけないらしいですの。なのでそれを全て征服しちゃいましょう? それがいいですの!」
大海原は胸の前で両手を合わせ、無邪気な子供のような笑顔でそう言った。
「そうと決まれば早速チーム分けしますわよ!」
大海原を中心に、話し合いを行った。
積極的に参加を表明するものもいれば、拒否するものもいる。
中には強制的に参加させられたものだっていた。
その結果がこうだ。
魔獣討伐チーム。
実質二人みたいなところがあるが、戦力的には小太郎がいるので問題はない。倒し損ねるなんてこともないだろう。
軍隊撃退チーム。
るう、あめりん、キエル、
異世界の軍隊がどれほどの強さなのかは、予測するしかない。この村にいたやつら程度なら余裕で追い返せられるだろう。少し戦力が過剰な気もするが、相手がどれほどの実力があるのかわからないので妥当と言えば妥当だ。
街1征服チーム。
黒闇。
チームにすらなっていないが、こいつに関しては何も言うことはない。
どんな相手だろうが、ひとひねりで勝利してくるはずだ。
たとえ街全体が敵だったとしても。
街2征服チーム。
RPG、
バランスの取れたチーム。
戦闘力、応用力、索敵能力、機動力。全てにおいて非の打ち所がない。
これぞチームって感じだ。
街3征服チーム。
あおたん、巨匠、
ちょっと問題のあるチーム。
バランス自体は悪くない。むしろいい。しかし女性二人の気持ちがやばい。
魔獣捕獲チーム。
これに関しては、想樹さんの意向で決められた。
他に増やそうかと問うと、想樹さんは頑なに拒否したのだ。
オレと二人でやりたいとのことだが、その意図はまるでわからない。
村防衛チーム。
あげた三人以外はほぼ休みみたいなものだ。
以上が組み合わせになったわけだが、
「だから! 寝てないんだって! 他にも休みがいるのになんでだって!」
一人が猛抗議している。
机をバンバンと叩き、寝たいのだと、はっきりと何度も口にしていた。
「これはもう決定事項ですの。眠いなら移動中に寝てください」
「あおたんの速さじゃ全然寝れないって!」
それ以降は雷河が何を発言しても、大海原は聞こえないものとして振る舞っていた。
そうなる理由もわからないわけではない。
なんせ、生と奈衣が完全に遊び目的で参加しているのだ。
つまり二人のお守りが必要になってくる。
そのため、戦力が高い雷河が抜擢されるのは自然のこと。
最強候補の一人が休みに入っているが、それは仕方のないことだ。
そいつは強さだけは本物であり、黒闇と張り合う。
しかしその能力は強すぎるだけではなく、一癖も二癖もある。それゆえに調整が難しい。簡単に言えば、手加減が得意ではないのだ。
街を崩壊させかねない。
最盛期を全カ所に配置するなんて不可能で、今の拠点である村が壊れるのは防がなければならない。必然的に防衛チームになってしまう。
現実的に考えて最盛期を同行させられない。
だから元に戻すなんてことはできやしないのだ。
征服するつもりが、滅ぼしてしまいました。じゃ洒落にならない。
どうしても休みになってしまう。
だから雷河には強さを補強するためにも、参加してもらう他なかった。
なんだかんだ、大海原は雷河を信用しているのだろう。
そして、大問題なのがオレたちのチーム。
魔獣を捕獲するという目的に完全に合っていない。
主にオレが。
深刻な攻撃力不足。
しかしこれに関しては、少しだけ考えがある。
それは……。
「タルテ……オレに魔法を教えてくれ」
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