第22話 異世界生活二日目の始まり
旅館の一室で目が覚めたオレは、頭をぼーっとさせながら部屋から出る。
木の床を踏みしめ、歩いていると、前から
「どうしたんだ? 死んでるな?」
「どうしただって!? この旅館の非常用のバッテリーが切れてたから、ずっと働いてたんだって! みんなが遊んだりしてる声が聞こえる中! 一人で!」
だから昨日の夜、全然姿が見えなかったのか。
一晩中ずっと電気を供給していたなんて、大変だったんだな。
「おつかれ」
オレは軽く手を上げてやった。
もちろん足は止まることはない。
「もっと労ってくれてもいいと思うんだって……」
オレの背中にそんな声が聞こえてきたが、今はお腹が空いている。
だから雷河などに構っている暇はない。
それに、早く休ませてあげようというオレの優しさだ。多分。
大きな階段を下り、食堂へと足を踏み入れる。
そこには多数のクラスメイトの姿と、村人と思わしき人物が数人いた。
「おはようございます」
若い男の村人は、オレに向かって頭を下げる。
昨日から一変した態度。
「おはよう。さすがタルテ、説得に成功したんだな」
「わたしは何もしてないんですけどね!?」
昨日の夕方のことである。
タルテに説得を任せたはいいが、村人たちは聞く耳をもたず、オレたちに怯えていた。
征服すると言われ、村を半壊させた(主に生と黒闇のせいで)のだから無理もない。
あのあと
突如現れた建造物に、村人たちは恐怖を加速させていった。
しかし、土だらけの村人たちを強制的に大浴場に連れていき、体を綺麗にして、さらに浴衣に着替えさせ、食事を振る舞った。
やがては落ち着きを取り戻したのか、オレたちの話を聞いてくれたのだ。
村人たちは王国に楯突くなんてと怯えた反応を見せたり、オレたちの強さを直で感じて、もしかしたらと希望を抱いていたり。
なんにせよ、この村の軍隊らしきものは既に倒してしまっており、手遅れだ。
もうオレたちに身を任せるしか選択肢はない。
そう悟ったということもあるのだろう。今は村人全員とはいかないが、多数の人間がオレたちのために食事を作るのに賛成してくれた。
ならばあとは約束した通り、オレたちが守るだけだ。
「意地悪しないでくださいよ……」
わざとタルテの失敗を強調するような言い方をしたオレに、タルテは少し泣きそうな顔をしている。
「冗談だって。タルテはもう食べたのか?」
「はい。いただきました」
そんなやり取りを終え、オレは朝食が置いてある長机へと歩いていく。
大きな皿に盛られた色とりどりの野菜。さらにたくさんの肉。お米もあるし、パンも少しだがある。
パンは袋に入っていて、もろに日本の物だ。きっとRPGが出したのだろう。
オレは一番近くに空いていた椅子に座る。
オレの左隣にはさななこさんがいて、正面には
これが今いるオレ周囲の人物たち。
「でらうめー」
すっかり目が覚めたようすのあおたんは、ふわふわと漂いながら長机の上を移動していく。
行儀が悪いと大海原に注意されているが、ハイの状態のあおたんにはそんな言葉は通用しない。自由気ままに動き回る。
「はぁ……」
「大変そうだな……」
「
「しょうがないだろ。ああでもしないと
「そうかもしれませんが……はぁ……」
そう言って大海原は真っ赤な色の葉っぱを口に運ぶ。
色的に食べたくはないが、大海原が平然としている。
なのでオレも食べてみようと箸で掴んでみたが、実に辛そうな色だ。
オレは覚悟を決め、口の中に放り込んだ。
「かはっ! すっぱ!」
てっきり辛いもんだと思っていたから、思わず吐き出しそうになってしまった。
口の中がびっくりしている。
オレが水を一気に飲み干し、口を落ち着かせていると、おしゃべりしながら数人が食堂へと入ってくるのが視界の端に映った。
顔を上げてみると、四人の女子で、その中には昨日一緒に空中散歩をした
陽色ちゃんとばっちり目が合う。
陽色ちゃんはオレから少し視線を外しながら、口を開いた。
「お、おはよ」
「ああ。おはよう」
なんだか元気が無いようにも見えるが、寝起きだからだろうか?
陽色ちゃんのグループはオレたちから少し離れた場所へと座った。
「けっこう揃いましたわね」
見回してみると、確かにクラスメイトの大半がこの場所に集まっている。
この場にいないのは、雷河、黒闇、
それ以外はこの食堂に集まっている。飲み物だけを飲んでいる人がいるところを見るに、大海原がここで待つように指示したのだろう。
しかしまだ全員が集まったわけではない。
「お寝坊さんたちを、そろそろ起こさないといけませんわね。心さんお願いしますわ」
「ん」
想樹さんが頷き、目を瞑る。
そして一分ほど経過して、どたどたと音が聞こえてきた。
「っざけんな!」
顔を真っ赤にした黒闇。
「今寝たばっかりなんだって……」
げっそりとした雷河。
「オー、辛いデース」
青ざめるキエル。
「最悪な目覚めだった」
頭を押さえる閣大宿。
「こびゃすび」
歯をがちがちと鳴らす最盛期。
「ぞくっとしちゃった!」
朝から興奮気味の奈衣。
「うええええええええええええええええん」
大泣きしているあめりん。
一体どんな起こし方をしたのか、知りたいような、知りたくないような。
ただ、一つオレは誓った。
想樹さんを怒らせないようにしよう、と。
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