タロウ視点2

頭がボヤーッとしている。

そうだ。いつもみたいに『おさんぽの時間』の前に寝たんだった。

大きなあくびが出る。まだ眠たいし、体も思うように動かない。


これはきっと、まだ寝ろということなんだ。そういうことなんだ。

そうと分かってきたら、ウトウトしてきた。

このウトウトしているときが、すごく気持ちいいんだよなあ・・・・・・


ガタッ。


ピクッ、と耳が動く。寝ようと思っていたのに、コイツが動き出したな。

いまは何時だろう・・・・・・


“PM4:12”


いつもよりちょっとおそいみたいだ。00の数字が12になっている。

でも、間違いなく、『おさんぽの時間』。さっきまでウトウトしていた体は気づくとウズウズしていた。

ちょっとじまんの、クルッとなったシッポもブンブンと勝手に動いている。


「タロウ、おさんぽの時間だよ~」


待ってました!

いつものように、首輪にリードをつけてもらうのを、座りながらコイツを見上げる。


人間は『にそくほこー』ってのをしていて、ぼくたちでいうと、後ろ足だけで歩いているらしい。マネして、ためしにやってみようとしたことがあるけれど、とてもじゃないけれど、歩くことなんて出来なかった。

すごく不便なのに、わざわざ『にそくほこー』しているなんて、人間はなんてフシギなんだろう。


それと、『よーふく』っていうのを身につけている。時々、他の人間と住んでいる、なかまが無理やり着せられるらしい。動きづらそうだし、なんだかかゆそう。

そんな『よーふく』を、やっぱりわざわざ身につけている人間だけれど・・・・・・

今日のコイツはいつものダボダボした『よーふく』じゃないみたい。フシギに思っていたら、数字が飛び出てくるみたいに、コイツが身につけている『よーふく』にソックリな『よーふく』が目の前にあらわれた。

『ブラウス』と『スカーチョ』っていうらしい。『よーふく』でもいろいろあるみたい。本当、よく分からないなぁ。


「よし、お待たせタロウ!行こうか」


わあい!

毎日のことだけれど、やっぱり『おさんぽの時間』が好きだ。

大きな道に出て、モサモサとした草が生えている方へまず向かう。

さてと・・・・・・おじゃまします。

ぼくが気づいたころにはやっていた、この行動は『ほんのーてき』におこなうもので、『マーキング』っていうみたい。

いつも歩くこの道に何か所かやっているんだけれど、時々、別のなかまが『マーキング』しているところがある。こうやって、あいさつしたりするのも目的みたい。


どんどんといつもの道を歩いて、大きな柱、四角い――『じはんき』っていうみたい。そこの角、また大きな柱と『マーキング』。


次はたしか、小さい柱に・・・・・・あれ?いつもと反対の道に、コイツに、引っぱられた。こっちじゃないよ、ってもどそうとしても、コイツはもどろうとしない。

仕方なくついていく。

でも、なぜかおぼえているぞ。この感じ。なんだか、いやな予感がする。


ぼくは不安でコイツを何度も見上げるけれど、知らん顔でコイツはどんどんと進んでいく。


――思い出した。


この道は、アクマの住む家へ進む道だ。

ぼくは、その場で必死にふんばって、進むまいとした。

コイツがひっぱるせいで、首輪が顔のほうに押しやられる。ムチャアと顔がつぶれる。でも、かまうもんか。


「タロウ、顔つぶれてるよ・・・・・・写真撮っとこ」


おい、なに笑ってやがるんだコイツ。

すごく怒りたかったけど、いまはふんばるんだ。がんばるんだ、ぼく。


フワッと体が軽くなる。コイツに持ち上げられてた。

やめろ、アクマの家まで行くつもりなんだな!バタバタと足を動かして、にげようとしたけれど・・・


「到着~。さ、観念しなさい。タロウ」


着いてしまった。アクマの家に・・・・・







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