第2話 始まりはいつも唐突
「よし……と」
小物類が入ったダンボールを置く、これで引っ越しの荷物は全部だ。
僕、赤坂昴は四月から親元を離れて祖路紋市の高校に通う男子高校生、ちょっと変わった事があるとするならスポーツや勉強の為に進学したんじゃなくて、この場所に来たくて進学したことだろうか。
地方都市である祖路紋市には、小学生の時三年間だけ住んでいた。
両親の都合で引っ越してからも何故かずっと未練のようなものを感じていて、ネットで調べたり、アルバムを漁ったりしてここの街並みを思い出しては思い出に浸る日々を過ごしていたら変な子だって言われたっけか。
そして祖路紋に帰ってきた一番の理由、それは……。
「チカちゃん、元気にしてるかな」
幼馴染のチカちゃんに会いに行くためだ。
***
「この辺の道も全然変わってないなぁ」
アパートから出て街を歩く、昔住んでいた場所の近くを探して部屋を借りたんだから当たり前なんだけど、再開発した地域があるって聞いたから少し不安だった。それも杞憂に終わってよかったけど。
「ええと、確かこの駄菓子屋を右に曲がって三件目……」
幼い頃の記憶を頼りに歩いていくと、確かにあった、思い出の通り、変わっていないその場所。
表札を見るとそこには「雨崎」の文字、間違いない、チカちゃんの家だ。
「やっぱり、引っ越してなかったんだ。よし……」
一度深呼吸し、インターホンを押す。
反応はない、数秒待ってもう一度インターホンを鳴らすがまた反応はない。
「出かけてるのかな」
物は試しにと、ドアノブを捻ってみる。
鍵は、開いていた。
「誰か居ませんかー」
返事はない、留守なのに鍵を閉めないなんて不用心だなぁ。
「また日を改めるか……」
扉を閉め、振り返ったところでドン! と何かが爆発したような音が家の中から鳴り響く。
「チカちゃん!?」
誰も居ないはずだった家でこんな音がするなんて絶対にただごとじゃない、そう思い勢いよく扉を開けて家の中に入る。
「ケホッケホッ」
入ってすぐの部屋、確かリビングだった場所から咳き込む声が聞こえる。
この声は……。
「大丈夫!? チカ……ちゃ……ん?」
「ふぇっ……」
部屋に入ると、目の前には異様な光景が広がっていた。
カーテンが閉め切られ、電気が消えた暗い部屋。そして床に敷かれた謎の紋様が書かれた布に倒れた蝋燭、そしてその中心へたり込んでいるに黒いローブを羽織った女の子。
その頭の上には、鶏もも肉。
「ええと、久しぶり」
「もしかして……スバル?」
「うん」
暗い部屋の中、数年ぶりに再会する二人。
ロマンチックなはずなのになんだろうこのしまらなさは。
お互いにしばらく見つめあう、どれくらい時間が経っただろうか、数秒か、数分か。
いい加減居づらさを感じ口を開こうとしたとき、突然部屋に置いてある時計の音が鳴る、大音量で。
「あーっ! 呆けてる場合じゃなかった! スバル、あんたも手伝いなさい!」
「手伝うって何を!?」
「契約よ契約! さっき呼び出したのと契約しなきゃこのまま暴れまわっちゃうの!」
「け、契約……?」
「そ、あたしね、
久しぶりに会った幼馴染は、本物の召喚士でした。
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