あの子はサマナー!

ナメクジ次郎

第1話 実はあの子は……

 春、それは出会いの季節。

 新たな環境に身を置く人も居れば、そうでない人も居る。それでも否応なしに新しい友好関係や新しいステージに挑まなければならないものだ。

 だからと言って、今目の前に広がる異様な光景は、新しい環境として受け入れていいものなのだろうか。


「あー! そっち! そっちに逃げた! 追いかけて!」


 そうやって騒がしくしているのは、淡い色の金髪をツインテールに纏めた、一見すると中学一年生くらいにも見える女の子。

 チカちゃん……もとい雨崎千夏、僕の幼馴染だ。


「ボーっとしてないでスバルも追いかけてよ! 家の外に出ちゃったらご近所中に大迷惑よ!」

「ならなんでそんなの呼んじゃったの!?」

「だ、だって簡単に召喚できる悪魔だって本に書いてあったんだもん!」


 悪魔、そう、悪魔だ。

 アニメとか、漫画とか、ゲームに登場するアレだ。

 そして彼女はそれを召喚したのだ、しかも僕の目の前で。

 あまりにも非現実的な話だし、中学二年生が授業中に考えた妄想だと思われるかもしれない、けれど現に今目の前で膝下くらいの大きさをしたメットを被った獣っぽい人が家の中を縦横無尽に暴れている。


「あっ電子レンジの中に入った! んもー! どうやったら出るの? やっぱガソリン? ガソリンしかないの?」

「いやそれは大惨事になるでしょ絶対……」

「だったらスバルも何かいい知恵出してよー!」

「自分で出した悪魔なんだから自分で責任持とうよ!?」


 どうしてこんなことになったのか、事態は数時間前に遡る……。


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