第17話 笑うクルド

 ディオスがドナカムナの扉を開けた所に巨人が現れた。中に入ろうとするも踏みつけられ、一本残った足を持たれ、引きちぎられた。

「ぎゃー!やめてくれ!」


ディオスは叫び、泣き出した。足は巨人が放り投げると空間に消えた。ディオスの血がちぎれた部分から滴り落ちる。今度は少し残った尻尾を持ち、引きちぎった。

「ぎゃー!この悪魔め」


 ディオスは苦し紛れに体をくねらせ逃げ出そうとした。だが巨人は許さない。今度は口の上顎と下顎を両の手でつまみ、裂こうとする。涙目になるディオス。だが、そんな事で許されるはずも無く、力一杯割かれてしまった。もう声も聞こえない。目があり手がついている赤いミミズはそれでも巨人の手から逃げようとする。こんな苦しみを受けても死ねない世界ドナトカムナ。何とかしてドナカムナに逃げ出そうとしたが捕まり、足を失い、口は割かれ、声も失いそれでも死ねずに今あるディオスであった。血潮が巨人の手を濡らし、手から滑り落ちたディオスはやっとの思いでドナカムナの入り口にたどり着いた。苦しい吐息の中、転がり込むようにドナカムナの世界に落ちていった。


だが、ドナカムの入り口は開いたままだった。巨人が覗き込むと赤いミミズが必死で奥へ奥へと進んで行くのが見える。巨人は手を穴に突っ込んで弄り出した。


 手が自分を追いかけて来ることを知ったディオスは慌てた。手は何とも早く大きく、自分に迫り来る。いくら進んでももうそこまで近ず来つつある手を見て恐怖するディオス。


 巨人は何度も手を入れて捕まえようとするが捕まえられない。怒り出した巨人は口から火を吐き、穴の中に火を吹き込み、その世界を火攻めにした。ディオスは地獄の釜茹でにされた罪人の様な苦しみを負うが死ぬ事は無い。永遠の苦しみが続く様であった。


 巨人となってディオスを散々苦しめたアキオであったが、クルドの笑い声で振り向いた。そこには笑い転げるクルドがいた。


「クルド。なぜそんなに可笑しいんだい」

「だってアキオ、君が昔聞かされていた怪物の様に思えて来るからさ」

「ああ、カカレウとかにいると言うや奴だろう」

「そうさ。そいつは世界を壊し、空を破いて消え去った。ドラゴンを引き裂き、火を吐いて燃やし尽くし、世界は三度滅んだとされている」

「でも、それは君たちの言い伝えなんだろう」

「そうだよ。ドラゴンは幼い頃、みんなカカレウの世界の事を毎夜聞かされるんだよ。それはそれは怖い話さ。その中にはドラゴンの血の雨が降ると言う場面があってね。足と尻尾が引きちぎられて空から落ちて来るんだ。びっくりして見ていると血が雨の様に降り始め、ドラゴンの悲鳴が聞こえ、最後には下顎が落ちて来る。それで悲鳴は聞こえなくなり、涙が雨の様に降り続くと、話には出て来るんだ」

「ふ〜ん。じゃあ、何?俺ってカカレウの魔神のような事をしたのかい」

「そうだね。力の制御なく、全てを壊し、空間も切り裂き、ディオスを追い詰める。まるで話の中に出て来る魔神だね」


 クルドは静かに自らを納得させるかの様に話す。

「でも君でよかった。魔神が君なら全てを破壊する事などあり得ないと思うからさ」

「でも俺が暴れて破壊しまくった。あれはドナトカムナの世界の事なんだろう」

「いや、もしかしたら昔の世界でアキオは暴れたのかも知れないよ」

「俺は人だからあんな力無いし」

「違うよ、きっとアキオだからこそあの力が出せたんだよ。精神の力が物質の世界の空間を捻じ曲げたんだと思うよ」


 俺はクルドとお互いの考えを話し合い、この世界からの脱出を計画した。


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