第12話 最後の言葉
ドラゴンギガトマに会いにクルドと共に地上に降り立った。地上はゾンビが十二人に減っていた。やはりツバルフは出て来れなかったみたいだ。ゾンビ達は何か夢遊病患者の様に彼方此方にフラフラと歩き回るだけで、何かをすると言う気持ちは失せてしまった様に見えた。
ギガトマは相変わらず眠ったままであった。その時雷がギガトマに刺さるアンテナに落ちた。あたり一面火花が散り、ゾンビ達は倒れていた。
「誰だ。お前達は。何用だ」
初めてギガトマの言葉を聞いた。
「我が名はクルド。聖印を授けてもらいにきました」
「それでその下におる奴は何者ぞ」
「私はアキオ。あなたの頭に同化したディビー・マクレインの息子です」
「そうか。やっとこの時を迎えたか。長かったぞ。よく来た。待ちかねておった。コヤツはもう人ではない。ただの亡者だ。だが、俺とコヤツとは今の所離れられない。だが、仕方のないことかも知れぬと思う日々であった。こやつの手下は我が力が及び生きて屍となり、多くの事を成し遂げた様に話しておったが俺にはどれもこれもダメだと感じておった。クルドよ聖印受け取るが良い」
「あなたはこの後どうなさいますか」
「アキオとやら。最後はもう訪れたのじゃ。お前がここに現れた時、それが最後の時なのじゃよ。定めなのじゃよ。お前はこの男と言葉を交わしたであろう。それが全てなのだ」
そう言ったギガトマはもう何も語らず、目を閉じた。
ミランダとソレアは俺を支えてくれた。クルドは早く乗る様に言ってくれて、フワッと舞い上がり、ギガトマの頭上に到達した。俺は死滅の玉を取り出し、ギガトマに投げようとした。まさにその時、父ディビーが目覚め、俺に話しかけてきた。
「おい。お前。俺の息子だと言ったな。だったら俺を助けろ。元の世界に連れて行け」
なんとも理不尽な言いように俺は怒りを感じた。だが、父親の心を元に戻せる、なんとなるんじゃにかと感じることがあり、一瞬躊躇しかけた。グレーグの言葉が蘇る。
「躊躇はするな。するべきではない。その先には何もない。失うものが多すぎる」
俺は死滅の玉を投げ込んだ。モウモウと青い光が発生し、ギガトマやゾンビをその光の中に納めてゆく。水晶の谷の一部は青い光で覆われた。ゾンビ達は光の中で体が崩れ去った。クルドと水晶の谷を離れて山から光が消えるまで見ていた。光は三日三晩続き、四日目の朝にはなくなった。ギガトマの亡骸もゾンビの亡骸も全ては消え失せていた。
「やっと死ねたんだ。死は全てのシガラミからの解放者。千年目一杯働いたんだ。あとはゆっくり眠ることだ」
俺は水晶の谷に残る多くの機械を目にしていた。
「さて、この機械はどうしようか。使いこなせる者はこの世界には居らず。使い方ではこの世界に害をなし、滅びをももたらすかも知れぬものだし。破壊してしまおう」
クルドに眼下に見える全てを亡きものにするように指示した。
この後、湖は北に大きく広がり、水晶の谷なる場所はこの世から消えさった。
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