第8話 力の限界
どんなモノにでも限界があるようだ。観の力もこれからの行き先は見せてくれないらしい。クルドは迷って居た。キョロシの元に赴き、観の力の使い方を尋ねるつもりであった。だが、中つ国に着くとクルドはキョロシには会えなかった。
「アキオ、会えないって辛いね」
「仕方ないさ。これは試練なんだろう」
「そうなんだ。けど、どうして見えないんだろう?」
「手探りで探し当てってみよって事かな」
「最後の最大聖龍ギガトマ様をどうして探すのか分からないよ」
「いや、俺たちは大きな手がかりを掴んでいる。クルド、鬼のおっさん達の事覚えているだろう。そうだ、あいつらさ。あの時手鎖を着けられて拐われてきた男の子が言っていた。覚えてるかい。知らない。仕方がないなぁ。あの時、子供は言っていたなぁ。ここから南にある南北に細長い湖で、湖の南の端にあった村から見える北にある高い山の麓の水晶の谷と」
「そこに行くの?」
「言ってみようじゃないか。ダメならまた考えよう」
「行くのは良いが、ミランダ、ソレア。ここに居てくれ。君たちを傷つけたくない。決して安全な旅じゃぁ無いんだ」
「あなたは私を捨てるつもりなんでしょう。ダメです。着いて行きます」
「旦那様が傷つく事はダメです。俺が一緒に行く、きっと護ってやる」
「クルド、俺は不幸なのか、幸せなのか」
「君しだいさ」
クルドと飛び立ち湖の上を南から北へ飛んだ。
「あの山が北を見た、こっち方面で一番高い。あの山に行こう」
「アキオ。水晶の谷って言ってたけど水晶ってどんなものなの」
「クルド、透明で先が尖って居て、紫や無色のものがあるんだ。行けばわかるよ」
ミランダが指をさし、叫ぶ。
「あれを。きっとアレです。あの谷間に少し光を反射してるところがあります」
「アレは、なんでしょうか?」
ソレアが見たのは黒い何かが蠢いている所を目撃したからでした。
「ソレア殿、アレはきっとドラゴンだ。黒かったぞ。グエルよりももっと漆黒だった。グエルではなかろうが、黒いドラゴンはあまり好きになれん」
「ミランダ殿、確かに。だが、大聖龍様ならこの旅の終わりも近い」
二人の話は別にしてキラキラ光る谷間の中に黒い何かを見た時は気持ち的にあまり良くは無かった。俺たちは水晶の谷の入り口に立ち。クルドは大聖龍ギガトマに入域の許しを求めた。だが、何も返事がない。クルドはただ黙って待って居た。これが礼儀だと教えられた為、クルドは段々と普通のドラゴンと同じになって来た。俺はもっと言えと諭したが、中々言う通りにしない。それで俺は水晶の谷に入る事を決めた。ミランダやソレアは反対だった。クルドはどちらかと言うと俺と同じ意見の様に思えた。けれど変な常識がクルドの行動を阻んでいる様に見える。
水晶の谷は光が当たればキラキラと光り、目を開けて居られず、それで雪山で作った骨のスコープを装着し、水晶の柱の横を静かに歩いて行く。最初は何も音らしきものが聞こえなかったが、暫く進むと煩いくらいに大きくなって来た。多分音は上か、山肌を通って響いているので誰にも聞こえないのだろう。
大きな水晶、木に例えるなら縄文杉の様な太い水晶の柱が点向かって伸びて居た。それも何百も。その中を音のする方に近寄って行く。少し窪んだ所に多くの人間が足かせをはめられ、何かを作らされていた。命令しているのはどうも俺と同じ現代人みたいな奴らだった。
「やった!もう少しだ。これで帰れる。何年もかかりすぎた。俺たちは年を取りすぎた。帰っても誰も知り合いなんて居ないだろう」
「何を言う!博士も俺たちもここまでできた事を喜ばねば」
「だが、この装置にエネルギーを入れる事が出来るのか」
「ああ。俺が見つけたドラゴニュームが解決してくれる筈だ」
「だが、この前に作動させた時、暴走した。空間が歪み地震が引き起こされ、あのドラゴンが暴れ出したじゃぁないか」
「だからその問題は解決した。ここの装置はこの一千年、我々が創り上げた全く新しい装置なんだ。だから、きっと帰れる」
「そうだと良いんだが。この世界の住民をこんなに苦しめて、俺たちは正しいと言えるのか」
「こんな下等な文化しか持たない奴らに遠慮は要らん。こき使い、我々に奉仕させることこそ、世界のためと考えている。気にやむな。奴らもドラゴン様と崇めているじゃぁないか」
「博士も変わってしまった。この世界もこの世界の住民も、全てが俺たちの仕出かした災害で地獄に落ちたとしか考えられない。アレを見ろ、あの男は最後に捕まえたやつだ。成人式にここの水晶を手に入れに来ただけなんだぞ。八人来て、あの装置が動き、地震が起きて他の仲間たちは水晶の柱の下敷き、生き残ったあいつはここで奴隷だ。こんなの許される筈がない。俺はもう辞めたいよ」
「馬鹿が、ここを出て何処に行く。帰れるのもあとわずか。この実験が失敗したら泣け!だが、俺はまだやるぞ。どれだけ犠牲を出しても必ず帰って見せる。お前も見ただろうこのドラゴニュームの力を。これを持って帰ればきっと世界は変わる。俺たちは大金持ちだ。それに動力、駆動原理も全てが変わる。兵器としてもこんな最高なものがあるか。核弾頭などもう作らなくても良い」
「馬鹿野郎。こんな物を俺たちの世界に持って帰ってみろ、地球は滅亡する。我らの世界は無くなってしまうぞ」
「馬鹿か。そうなればこの世界を征服すれば良い。俺たちは未来人だ。この世界の奴らは原始人だ。俺たちに征服されて当然だ」
「お前は帰ることを念願し、装置を作っているのではなかったのか」
「これからはどうなるか分からないと言ってるだけだ」
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