第5話 グキラメデスの深慮
南に飛ぶ事二日、南海の孤島に到着した。見ると普通の島だ。ヤシの木があり緑が生い茂る。だが、何かがおかしい。普通ではない。
「クルド、降りない方がいい。ここはおかしい。普通ではない」
「アキオ。君もそう思うかい。僕も何か分からないけれどおかしいと感じるんだ」
「旦那様、あれを」
ソレアが指差す方を見ると海岸線に沢山の骨が転がっている。
「何の骨だろう。このままでは島に上陸出来ないぞ」
クルドと島を一周して、どんな様子か見てみたが、南の海岸だけが何とか大丈夫の様に思えた。クルドにユックリと降りてくれと頼んで降りてみた。だが、ここも何かおかしい。
「ほんと。何かがおかしい。この違和感って、何でしょうね」
ミランダが言う。ソレアも同意し、盾と斧を手に持ち、警戒を怠らない。
「分かったわ。鳥の声がない。虫が飛んでいない。獣の鳴き声がしない。命の息吹を感じない。ここは見てくれは生きているけれど、全てが死んでいるんだわ」
ミランダは辺りを見渡し、何かいないか観察していた。
ソレアは海岸に咲く花を見て驚いた。
「あっ!この花は毒の花。ダガヤンゴ。この森には入らない方がいい」
俺は多くの木の種類はわからないがソレアが言う毒の花をみて、全体にこの島は毒の木々に覆われているんだろうかと推測をしていた。
「クルド。ここのドラゴンはなんて言うんだい」
「グキラメデス様だよ」
「そのお方はどの様な力を持っておられるんだい」
「僕がみた世界では多くの世界を救っておられたから」
「どの様な世界なの?」
「どうだろう。物凄く暗い世界だった」
「ふ〜ん。どうしようかな」
俺とクルドで島の上空に登り、大声を出し、呼びかける事にした。
「グキラメデス様、出てきてもらえませんか。お願いです」
「返事がない。生きているんだろうなぁ。どうして返事がないのか」
「アキオ。僕には分からない」
「クルド。この島全体を焼く尽くしたらどうだろう。中まで入っていける」
「だろうけど、いいんだろうか」
「君だけで行ってみるかい。俺たちには無理な世界だ」
何故か人を遠ざけるかの様に作り上げられた島の環境。この環境をどう思う、ミランダとソレアに聞いてみた。
「毒が好きなんでしょう。ご自分の好きな植物を集められたとか」
「ミランダ殿が言われる通りだと思います。だからと言ってこの島の全てを焼き尽くすと大ごとになります。雲になった毒は何処かで多くの人や命を奪うでしょう」
確かにことは我らの目的だけに留まらず、多くの命に迷惑を振りまく事になる。やはり無理がある様に思う。どうしようかと思い悩んでいたら、ミランダが言い出した。
「これは大聖龍グキラメデス様の試練では?」
「どう言う事だい」
「つまり、いかにして会うかと言うことです。この難問を解決しろとお求めなのでは」
「でも、もしかして寝てるだけなのかも知れないぜ」
「例えそうであったとしても考えてみましょう、何か手立てがあるはず」
「あっ、そうだ。カイガロカ様の聖印を授かったじゃないか。空間に穴を開けて会うんだ。そうだよ。それしか無い。クルド。君次第だ。俺たちは何も出来ないみたいだ。意識を集中してグキラメデス様を探せ」
クルドは考えたがなかなか出来ない。それでクルドに別の島に降り立ち瞑想するように言った。クルドは目を瞑るがなかなか出来はしない。
「やっぱり、無理があるのかなぁ。空間を捻じ曲げるんなら何処でも行かなくても、用事は済ませられる。きっとさっきの所からでも話は出来たと思うがどうだろうか」
「アキオ、そう言っても出来ないよ」
「考えるんじゃ無い!感じるんだよ。クルドが相手のことを感じるんだ。ただそれだけさ」
クルドは何も言わずにただ横になっていた。俺たちは寝ているんだろうと思っていたが、クルドは瞑想してる様だった。瞑想と眠りは紙一重という所か。
その夜焚き火を囲んでクルドを心配しながら火を眺めていると、ミランダとソレアが右と左から身を寄せてくる。脇から背にかけて柔らかい温もりがあたり心地よい。これはこれで良い感じだなぁと心の中では思っていたが、ウトウトしているうちに朝を迎えていた。クルドは俺たちをみていた。
「クルド。起きていたかい。どう瞑想は?」
「アキオ。もう、会って来ちゃったよ」
「えっ!あの・・・・・」
「そうだよ。グキラメデス様にね。聖印も頂いたよ」
「すごいじゃぁないか」
「君たちのおかげだよ。君たちの寝息を聞いていたら、うまく瞑想できていたみたいなんだ」
「なんだいそれは。良かったじゃぁないか」
「アキオごめんね。グキラメデス様に言われたんだ。お前の観は自分勝手だ。相手の立場に立たなければ意味がない場合がある。そこの所をよく考える様に。そう言われて帰って来たんだ」
「そうかい。分かれば良いんだ。次は大聖龍ケサロナ様だな」
「ここからだいぶんと戻る事になるよ。それも早く行かなければならないらしいんだ」
「それじゃぁ、飛ばすんだ」
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