第3話 大聖龍
「クルドは大聖龍になれるんだろうか?」
「もしかしたら、もうなっているんじゃないのか?」
「なぜ、まだ聖印を欲しがるのか?」
俺の中に疑問が生まれて来た。それで長老オルガに尋ねて見た。
「何の欲望も持たない者だけが与えてもらえる。また、受けるのには力を必要とするのだ。アキオ、君は聖なる木の実は一つかも知れないと考えた。だから、他のドラゴンに食われる前にクルドに食わせようと考えた。その結果、クルドの潜在的力量が全ての木の実を体内に収めさせた。クルドは体内に力を蓄えた状態で今ある。自身の力の変容を自らの力で抑え込んでいる。これは稀な事なのだ。ドラゴンはその属性の為、何らかの力の変容が体に現れる。クルドは何も現れていない。これは凄い事なのじゃぁ。だからこそ、多くの大聖龍と言われる者たちが聖印を与え、クルドの未来を確かめるのじゃろうて」
「それじゃあクルドの未来はどうなるんだい」
「キョロシ様でさえ、多分、判らないのではないだろうか」
「それではどこに行き着くか判らない船に俺たちは乗っているのかい」
「ふ〜ん。そうとも言える。だが、その船を操縦しているのはアキオ、君だと言う事を忘れないでくれ。君があの穴から現れて、このワシに大見得を切った時からこの定の一つに加わったんだよ。もう後には戻れないと知ることだ」
俺はクルドに乗りながらオルガの言葉を考えていた。
「クルド。どこに向かってるんだい?」
「ああ。カイガロカ様の所だよ。あそこが一番近いからね」
「ふ〜ん。そうなんだ」
大きな大陸が見えて来た。俺の後ろにいるソレアが言う。
「あれは東にあると言うガタシカです。多くの香辛料や獣皮が我が国にも送られて来ます」
ガタシカの海岸線は緑豊かだったが、クルドはドンドン飛び続けている。緑もなくなり、何もない砂漠の上に出た。砂漠の果てに何かの遺跡が見えて来た。クルドは速度を落とし、遺跡の広場に降り立った。
「こんな所にいるのか。どこにいるんだろうか」
「アキオ。ここにいる事は分かってるんだ。でも後は何故か判らない」
「お〜い。出て来てくださいよ〜!呼びかけても返事しないとはよっぽどへそ曲がりなんだ。どうしてやろうか」
「旦那様、あまり時間が無いのでは」
「ソレア。それはそうなのだが。どうしようか」
「私たちに水浴びをさせて貰えませんか」
「ミランダ。それは無理だろう」
「でもこの遺跡は水の都の様に思えませんか。水で溢れていた痕跡が見えます」
「そう言えばこの所なんかは池か水路の様だな。全体に水があれば景観もよくなるか」
「クルド。君の水の属性を使って水を出せるかい」
「アキオ。出来るけど。この辺水浸しになるよ」
「良いじゃ無いか。カイガロカをびっくりさせてやろう。やってやろうぜ」
クルドは大雨を呼び辺りは水に溢れた。水路には水が溢れ、木々が芽吹き、花が咲き誇った。ミランダとソレアは水浴びをして楽しんだ。二人が笑い声をあげて泳いでいると風が吹き、地鳴りが響いた。
「やった!カイガロカ様が怒ったのかな。出て来てくれると助かるんだが」
俺は辺りを見渡したが、判らなかった。ミランダは自分たちが泳いでいるプールみたいな所の端に大石があり、それが揺れていることに気がついた。
「アキオ。あれ。あの大岩が変だわ。揺れてるわ」
三人で見ていると岩のあたりの空間が歪んで来た。見ていると大きなドラゴンの顔が出て来て辺りを見渡す。水に溢れる光景を見たドラゴンは「チッ」と言って、また空間の中に帰っていった。俺は何かを考えていた。それで「ハッ」と思いついた。
「ミランダ、ソレアすぐに出ろ。早くしろ」
二人は前を隠す様にして出ようとする。以外と可愛いじゃ無いか。そう言う態度俺は嫌いじゃ無いぜ。だが、いまはそんなこと気にしてる場合じゃない。慌てて二人の手を掴み、引き上げた。二人は何を思ったか俺に抱きつき、嬉しそうに濡れた体を引っ付けてきた。
「おい、見ろ」
俺が指差す先を見た二人は驚いた。水が大きな空間に吸い込まれてゆく。あのままなら大変なことになっていたと思う。二人は腰が抜けた様になり俺の膝に抱きついていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます