第2話 不穏な未来

 クルドは落ち込んでいた。自分の観念が確立出来ていないのに、大それた力を手に入れた為、身体と心の均衡が取れておらず、不安定さを否定出来ずにいた。

「大きいものは抱えきれない。ふ~っ」

「何、黄昏ているんだい。君はあの部屋でいつも黄昏ていたじゃないか。俺は君の皿から色々と貰ったから覚えている」


「大きい力は大変だ」

「そんな事ないと思うよ。大丈夫さ」

「どうしてそう言うんだい」

「君は、幾つあの聖なる木ノ実を食ったと思ってるんだい」

「ああ、そうだったね。急に眠くなってしまったが」

「そうだぜ、しっかりしてくれ。暴走するんだったら動かさなけりゃ良いのさ」

「どう言う事だい」

「君は君なんだ。好きに使えば良い。君の能力じゃないか。使えないなぁと思えば蔵の中にしまっておけば良いのさ。目に付かなければ無いのも同じさ。そうすれば苦しまなくて済むだろう」

「君は簡単だね」

「クルド。車でも免許をとっても乗らなければそれで良いのさ。君は凄く速く飛ぶ事が出来る翼を持ってる。でも寝る時まで使わないよね。それで良いのさ」

「う〜ん」

「さあ。次の旅に行こう。力に酔わなければ大丈夫さ。酒に酔って自分を忘れてしまう事だけはいけないんだよ。力に飲まれ、力に自分が振り回される事は許されないんだ。君なら大丈夫さ」


 クルドは俺に静かに話し始めた。

「君はお父さんに会うことになる。この事は絶対なんだ。君は悲しい思いをするはずさ。それでも行くのかい」

「行くさ。絶対に会う事になってるんだろう。だったら逢いに行こう。俺は父と母に会うのが目的だった。是非とも行かないとこの世界に来た甲斐がない」

「悲しくても?」

「君がいる。ミランダがいる。ソレアがいる。それが全てさ」

「そう。そうだね。行こう」

「それに逃した魚は大きいって言う。ディオスと対決しなければならないなら早くやっちまおう」


俺たち三人は、クルドが大聖龍に会う事が出来る様に祈った。クルドがやって来て聞く。

「君たちは何に祈ったの?」

「クルド。俺はキョロシ様に」

「私もキョロシ様に祈りました」

ミランダ、ソレアはこの世界の人だった。やはり大方のものは中つ国の大神聖龍キョロシを崇めていた。

「アキオは?」

「ハハハハ。大日如来様」

「それは何?」

「クルドよ。俺たちの世界では世界の守護者は多くあるが、世界を照らす太陽を命の恩人と考える。だから、君は先見の力がある事は俺はわかっている。行き先など言わなくても君は到着するさ。でも、今日までの事を感謝する事はありだろう。俺は感謝を捧げていたのさ。あの空に輝く二つの太陽に」

「そうだったの」


 クルドは見えた世界を進む。何も言わなくても良い。これであとは大丈夫と俺は考えていた。

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