第48話 シンリャークside 四天王出陣
「…………おい、なんだアレは?」
呆然と呟いたのは、四天王のソノニーだった。
「どうやら飲みすぎたようだ。魔獣が次々に瞬殺されると言う幻覚が見える。酒は飲んでも飲まれるな。飲みすぎには注意しないとな」
「いえ、幻覚ではありません。アレがアマゾネス1号です」
目にした光景を受け入れられないソノニーに、シレーが現実だと告げる。事実、さっきまでベロンベロンにまでなっていた酔いは一瞬にして覚めていて、握っていたグラスも今は地面に転がっていた。
「事前に申し上げた通りでしょ。アマゾネスは超ヤバいって。今回は金棒を持っている分、前より酷いかもしれません」
しかしそれはシレーとウワンにしてみれば見慣れた光景だった。例え魔獣が百体いようとも彼女は止められない。ただ飛び散る血と肉片の量が増えるだけと言うのは、今まで見てきた中でとっくに分かっていた。
だが、初見である四天王にはどうやら刺激が強かったようだ。
「魔獣を瞬殺って、マジだったのか」
「俺、てっきり話盛ってるんだと思ってた」
ソノニー、ソノサン、ソノヨンの三人とも、さっきまで赤かった顔色が、今は心なしか青く見える。だがそんな彼らにシレーは言った。
「だからこそ、四天王の皆様をお呼びしたのです。宇宙にその名を轟かせし四天王様のお力で、あの憎きアマゾネスを見事やっつけてください」
「えっ………?」
「俺達が?あいつを?」
とたんに、ザワついていた四天王の声が沈黙へと変わる。
「皆様も仰ってましたよね?久しぶりに本気を出せる強者と戦いたいと」
「そ……そうだったな。最近の敵はどいつもこいつも弱っちくて困ってたんだ。アマゾネスもまあ、退屈しのぎくらいにはなるかもしれんな」
「おお、さすが四天王様」
心なしか顔が引きつっているように見えたシレーだが、まさかシンリャーク最強の四天王に限ってそんなことはないだろうと思うことにした。
だがそこでソノサンが言った。
「しかし如何に相手が強者とは言え、我ら四天王が三人がかりと言うのも大人げない。ここは順番に一人ずつ戦うのが良いだろう。と言うわけで、頼むぞソノニー」
「えっ!?」
白羽の矢を立てられ、ソノニーは声をあげる。
「わ……私が一人で戦うのか?」
「四天王の戦う順番というのは決まっているだろう。最初がソノイチ、次がソノニーお前だ。今回はソノイチがいないから、繰り上げてお前が一番手だ」
「お、おう。そうであったな。だがどうだろう、いつもいつも同じ順番ではみんなも飽きてないか?ここは一つ、今回はジャンケンで決めると言うのは」
「いや、お前が一番手だ」
「…………」
気のせいだろうか?シレーの目には、あれこれ言っているソノニーの顔が青ざめているように見えた。
「あの、念のため四天王全員で戦われたらいかがですか?その方が手早く片付きますし」
余計なお世話かもしれないと思いながらもそう提案してみる。しかしそれはソノサン、ソノヨンの二人によって却下されてしまった。
「なんだと。貴様、ソノニー一人では不安だとでも言いたいのか!」
「それはソノニーに対する侮辱だぞ。一人でも十分に決まっているだろう!」
四天王のうちの二人から責め立てられ、ヒッと短い悲鳴をあげる。
「大変失礼しました。そうですよね、ソノニー様なら一人でも楽勝ですよね」
これ以上不興を買ってはたまらないと、即座に手の平を返すシレー。しかしそんな彼を見るソノニーの顔は相変わらず青ざめて見えた。
しかしそれでもソノニーは言う。
「も、もちろんだ。アマゾネスごとき、このソノニーにかかればチョチョイのチョイとやっつけてくれるわ」
「おお、なんと頼もしい。さすがは四天王の一角、ソノニー様」
こんな強気な事を言っているのだから、顔色が悪いのなんてきっと気のせいだ。シレーは自らの心に抱いた疑念をしまい込むと、改めて四天王に告げた。
「それでは、アマゾネスを倒すため、これより全員を地上に瞬間移動させます。えいっ!」
その瞬間、宇宙船の中から四天王及びシレーとウワンの姿が消えた。直前にソノサンとソノヨンが「えっ、俺達も?」と慌てていたようにも見えたが、きっと気のせいだろう。
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