第183話 予選一回戦

予選会場は、急ごしらえのお粗末な作りの円形のコロシアムであった……ここで順番に試合がおこなわれる。


東ブロックの最初の試合は、四次職のマスターテイマーと、三次職のマスターサモナーの戦いであった……興味は無いが、ニジナとティフェンが観戦して情報収集した方がいいと、うるさく言うので見てやることにした。


サモナーが召喚石から五体のモンスターを召喚する……そうだよな……本来の召喚士の姿はこうだよな……


「テイマーの方はライノレックス中心に重量級を揃えた、攻撃力と体力で勝負するスタイルのようね……それに対してサモナーの方はストーンゴーレムを前衛にして、アイスウィッチなどの魔法攻撃に特化した後衛モンスターが火力を出すスタイル……対照的な編成だけど、相性的にはサモナーの方が有利だわ」


ティフェンがお願いもしてないのに解説してくれる……俺とニジナはへ〜、とかふ〜ん、とか、適当に相槌を打つ。


しかし、さすがは自称最強のテイマーであるティフェン、解説通りにサモナーの有利に試合が進む……


テイマーの重量級モンスターたちの攻撃を、ストーンゴーレムは一体で防いでいた……もちろん、後方から回復と支援を受けてのことだけど……その間に、アイスウィッチなどが火力を集中させて、テイマー側のモンスターを一体づつ倒していく……


気が付けばテイマーのモンスターはライノレックスだけになっていた……


五対一では、強力なライノレックスも太刀打ちできるわけもなく、勝負はサモナー勝利で終わった。



「凄い、三次職が四次職に勝ったわね」

ニジナの感想に、ティフェンが簡単に解説する。


「相性の問題が大きいわね、最初にストーンゴーレムを倒すだけの火力の集中ができれば結果は大きく変わったと思うわよ」


まあ、相性云々で結果が変わるくらいでは大したことないだろ……



次の試合は、東ブロック最有力選手の登場であった……四次職のハイネクロマンサーのベルッチ……アナウンスが言うには、最初は特別招待選手での出場予定だったらしいのだが、その取り扱うモンスターが尋常じゃないほど異様な為に、一部のスポンサーから嫌悪され、特別招待枠から漏れたそうだ……なんとも可愛そうな……


しかし、実際ベルッチのモンスターを見て、その一部のスポンサーの気持ちを理解した……


「うっ……凄い匂いだな……」

「ドラゴンゾンビの臭気ね……あまり嗅がない方がいいわね、毒素が強いからお腹壊すわよ」


俺はティフェンのその言葉を聞いてすぐに持っていたタオルで口と鼻を塞いだ……ニジナは適当な布切れを持っていなかったのか、俺のタオルの端っこを奪って口と鼻を塞いだ。


ベルッチはドラゴンゾンビの他に、アンデッドトロール、スケルゴン、ディラハン、メダロアと見た目だけで逃げ出したくなるようなパーティー構成で対戦相手も顔を引きつらせて固まっている……


試合は一方的な展開になった……目ん玉に神経がモロモロと出ているような見た目の気持ち悪いモンスター、メダロアが石化光線を放ち、相手のモンスター全てを石化してしまった……それをスケルゴンが粉々に砕いて試合が終了した……


「うわ……あれって蘇生できるのか……」

「う〜ん……灰になったわけじゃないから大丈夫だと思うけど……」



さて、次は俺の試合である……ユキたちと一緒に会場へと入った……対戦相手はあの自称天才テイマーのなんとかっておっさんだな……


「ジンタ、どうすんだ、向こうは重量級ばっかみたいだけど、また私一人でやるか? それともユキの絶対零度か?」

シュラがそう聞いてきたけど、他のメンバーにも出番を用意しないとな……


「いや、ここはゴージャスに頑張ってもらう、できるなゴージャス」

「はい、もちろん、ジンタさんの為ならこの命尽きても頑張ります!」


実際、ゴージャスの実力を知らないんだよな……かなり上位のモンスターだってのは聞いてるけど……


「おやおや、ビビって逃げたと思ったけど、ちゃんと試合会場まで来たんだな」


試合相手のバンクツが嫌みたらしくそう言う……


「初戦は不戦勝みたいな試合だと聞いたんでね、自信はないけどやってきた」

さらに嫌味たらしく俺は言い返した。


「ふ……不戦勝だと! ふざけやがって……実力差って奴を教えてやるぜ!」


バンクツのモンスターは全てでかい……ドラゴンもどきに、一つ目巨人……それほど広くない予選スタジアムがさらに狭く感じる……それに対して戦うのはひょろっとしたゴージャスだけとは俺は何を考えているのだろか……まあ、本人はやる気満々のようだから少し様子を見てみるか……

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