第182話 そして予選へ

予選の予選のスタジアム……見ると、かなり人数は減っていて、数えると5グループくらいになっているようだ……生き残りが睨み合う……あと1グループが消えれば予選の予選突破だ……やはりと言うか、当然と言うか、一番弱そうに見えるのか、俺たち以外の全てのグループが、俺たちに襲いかかってきた……


さて、どうする……カルナギは秘密兵器だからな……ここはユキに頑張って貰おう。

「ユキ、絶対零度だ!」


絶対零度で皆殺し……かなり酷いように思えるが、今回の闘技会、運営側が用意した蘇生士は50名、五次職ヒーラーなども待機していて、死んですぐに蘇生を行えば、ほぼ100%で蘇生される状況を考えると安心の闘技会なのだ……まあ、そうじゃないと思いっきり戦えないよな……


ユキの絶対零度の威力は絶大だった……襲いかかる4グループは驚異的な冷気に襲われ、次々と凍結していく……一体だけ氷結耐性のあるアイスゴーレムが生き残ったが……ユキはそのアイスゴーレムに近づき……トンっと軽く叩いた……するとボロボロと崩れ落ちていった……どうやらHP1で生き残っていただけのようだ……それにしてもユキ……貫禄が出てきたな……


うぬ……ちょっと待てよ……俺ら以外を全滅させてしまったぞ……大丈夫なのかこれ……


結果を見て、係の人が飛んできた……

「……全員倒しちゃったんですか……」

「はあ……すみません……」

「いえ、予選の予選ですから……問題ありません……おめでとうございます、予選の予選、突破です!」

「はあ……どうも……」


まあ、最初から数を減らすだけの予選の予選だから4グループが1グループになっても問題ないのだろう……ということで俺たちは難なく予選の予選を突破した……


「やったねジンタ、これで予選に出れるね」

ニジナが嬉しそうにそう言ってくれる。


「う〜ん、どうもな……予選の予選だからかな……あまり嬉しくはないぞ……ギャラリーも全然いなかったし」

「まあ、それでも勝たないと予選に出れなかったんだから……」

「そうだけどな……」


こうして、俺は予選に出れることになった……予選からはブロックごとのトーナメント戦で、ブロック1組だけが本戦に出場できる。


予選会場は東ブロックだと案内された……東ブロックの予選会場へ行くと、予選の予選を戦ってきた俺たちと違い、すでに参加する選手たち戦いに備えて準備したり、作戦会議などをしているようだった……


「ジンタ、トーナメント表が貼り出されたわよ」


ニジナが言うように、会場に建てられた立て札に、紙が貼られる……見ると東ブロックの予選に参加するのは八組のようだ……三回勝てば本戦に出れるってことだな……


予選の試合方式は、五対五の集団戦闘戦だそうだ……本戦は一対一で戦う方式らしいので、予選も大雑把に決着をつけられるらしい……こんなに予選を軽視するなら最初から本戦だけにすればいいのに……



「ギャハハッ、おい、おい、嘘だろ……俺の一回戦の相手はこんなひ弱な奴らかよ……」


いきなり失礼な物言いで現れたのは、ちょっと高そうな装備をしているおっさん冒険者であった、おっさん冒険者が引き連れているのはゴツそうなモンスターばかりで、総体重だけなら俺のパーティーの100倍はありそうだ。


「なんだよ、黙ってないで一回戦で当たるこのバンクツ様に挨拶しろよ」


「うっす!」


俺が丁寧にそう挨拶すると、なぜかバンクツは怒り出した。


「なんだ、その舐め切った挨拶は! 頭を下げろ! 土下座しろ! 敬意を払え!」


「了解っす!」


敬意を払ってそう返事すると、バンクツの顔色がどんどん赤くなっていく……


「舐めてんのかこの野郎……」


「あっ……ばれた?」


「くっ……いい度胸じゃねえか……もうすぐ四次職の、自称、天才テイマーのバンクツ様にそんな態度をとるとはな……いいだろ……試合では少しだけ手を抜いてやろうと思ったが、もういい! 全力で叩き潰してやるぜ!」


「あっそう、まあ、頑張ってくれたまえ」


「どんだけ俺の怒りを増幅させんだこの野郎!」


今にも掴みかかってきそうなほどバンクツは怒りに震えていた……だけどなぜだろ……全然恐怖は感じていなかった……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る