第181話 予選の予選
いよいよ闘技会が始まる……ニジナの機嫌も戻ったようでいつもの調子で悪態を突いていた……
「ほら、司会者が説明してるよ、ちゃんと聞いた方が良いって」
「うむ、ちゃんと聞いてるぞ」
「さて、特別招待選手の方らは本戦からの対戦となりますので、本日は試合はござません」
どうやらティフェンは今日は試合がないみたいだ……
「予選会場ですが、四つに別れています、東ブロック、西ブロック、南ブロック、北ブロックです、それぞれどのブロックになるかは前の看板に書かれてますので確認してください」
看板を見ると、なぜかそこには俺の参加ナンバーがなかった……
「あと、看板に参加ナンバーが無い方ですが、予選に参加する為の予選を行いますので、後方のリングへと集まってください〜」
予選の予選だと……意味がわからん……俺は係の人間に文句を言った。
「おい、予選の予選とはなんだ、どうしてそんな意地悪をするんだ」
「いえ、予定していたより参加人数多くてですね……こちらもそんなことはしたくなかったのですが、そのような対応を取らせてもらうことになりました……」
「まあ、なら仕方ないが、どうして俺なのだ、俺は自称、優勝候補なんだぞ」
「自称……あっいえ、予選の予選の対象者は二次職、実績の無い三次職と決まっております、失礼ですがあなたは二次職のようですので……」
チッ……ちゃんと考えてるじゃないか……これじゃ文句が言えん!
「ジンタ、どうしたの、予選にも出れないの?」
揉めている俺を見て、ニジナたちがやってきた……
「いや、予選の予選があるらしい……」
「予選の予選? また面倒ね……」
「私が文句言おうか、特別招待選手の私が言えば、ちょっと優遇してくれるかもしれないし」
ティフェンがそう提案するが、ここで彼女に変な恩を受けるのもあれなので断った。
「いや、パパッと予選の予選を終わらせてくる」
まあ、終わらせるのはカルナギ達だけど……
予選の予選は大きなリング状のスタジアムで行われるようで、参加するモンスターとマスターが全てそこに押し込められていた……
「さて、予選の予選に参加する皆様、時間も無いのでさっさと説明します、戦いのルールはバトルロワイヤルになります、全員で一斉に戦って、生き残った4グループが予選への出場権を得られます」
なんとも大雑把だな……運営側はこの予選の予選に出ている者を全く期待していないのがよくわかる。
「それでは戦いを開始してください!」
スタジアムの外からニジナとティフェンの応援の声が聞こえる。
「ほら、ジンタ、頑張って!」
「ジンタ、負けるな〜!」
いや……戦うのはカルナギたちなんだって……
戦いはいきなりの大乱闘で、大騒ぎとなっていた……
「ジンタ、どうすんだ、その辺のを片付けるか?」
「いや、みんな俺の周りに固まれ……」
「それでどうするのよ醜い男!」
「何もしない……ちょっと数が減るのを待とう」
今、戦ってるのは血の気の多い連中同士で、何もしなければ戦いに巻き込まれないんじゃ無いかと思った……
俺の予想は的中する……戦いを積極的にやってるグループ同士がぶつかり合い、どんどん人数を減らしていく……
パッと見ると、残りは10グループくらいになっていた……そろそろかな……
流石に人数が減って、生き残りが目立ってきた……戦いは避けられないだろ……案の定、俺たちを見つけた一つのグループが絡んでくる……
「なんだ、お前ら弱そうだな……よくここまで生き残ったもんだ」
女性タイプのモンスターばかりの俺のパーティーを見て、ひげモジャモジャのおっさんがそう言った。
「運が良かったんだろ」
謙遜してそう言ってやる。
「ガハハハっ、何言ってんだ、お前の運は最悪だ、なんせ、この俺に睨まれたんだからな」
どうもセリフが雑魚っぽい……やはり運はいいようだ……
「よし、お前ら、あいつらを皆殺しにしてしまえ!」
おっさんはさらに雑魚っぽいセリフで攻撃を命令する……俺は強者ぽいセリフでそれに対抗した。
「シュラ、一人でやれるな……」
しかし、俺の意図を理解していないシュラがこう言い返す。
「……え? 私一人でやるのか?」
「やれないのか?」
「いや……どうだろ……いけると思うけど……面倒だな……」
かなり面倒臭そうにシュラは襲いかかるモンスターたちを迎え撃った……最近、シュラはさらに強くなったと思う……大きな猪のようなモンスターや、二つ頭の蛇など、敵のグループのモンスターを鉄の爪で切り刻んでいく……
全てのモンスターを一人にやられて呆然としているおっさん……まあ、運が悪かったんだろう……
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