第180話 機嫌が悪い日
「だから、フィフナスタさんにちょっと話しかけられて話をしていただけだって……」
ニジナが何を思ったか、さっきのフィフナスタとのやり取りの弁解をし始めた……ニジナが誰と仲良く話しても俺には関係ないぞ……
「それでいきなり呼び捨てか? 随分仲が良くなったもんだな」
だけど何故かイライラしている俺はちょっと強く言ってしまう……
「そんなの知らないわよ……」
「ジンタ、そんなにニジナを責めないであげて、フィフナスタは女癖が悪いって聞くから……ニジナのことが好みで手を出そうとしてるのよ、だからニジナは悪くない」
ティフェンがニジナを擁護する……それにしてもニジナが好みなんて、何とも趣味の悪い奴だ。
「なんだよ、ティフェン、お前、あのフィフナスタって奴を知ってるのか?」
「だから、召喚士のジンタが知らない方がおかしいんだって……前に金龍を召喚するアルティメットサモナーの話したでしょ」
「ああ……なんか聞いた覚えあるな……まあ、興味ないから記憶から消去したんだろ」
「消去しちゃダメだよ……今回の闘技会の優勝候補だよ……まあ、優勝するのは私だけど……」
「それでニジナ、そいつと、どこぞの山にはいく気なのか」
「何よジンタ……私がその人と二人でどっか行って平気なの?」
「俺はどっちでも構わないよ、ニジナの好きにすればいいだろ」
「もう……じゃあ好きにするわよ!」
何だよ……何怒ってるか意味不明だ……ニジナはそのまま怒って宿に帰ってしまった……
「ジンタが悪い」
シュラが簡潔にどちらに非があったか結論を出した……
「何だよ、どうして俺が悪いんだよ」
「女心をわかってなさすぎだ」
「はあ、俺はニジナを女だと思ったことないぞ!」
「だったらニジナはジンタの何なんだ」
「……ギルドの仲間……」
「それだけか?」
そう言われたらちょっと迷う……確かにそれだけなのかな……だけどそれが何なのか俺にはわからなかった……
「とにかく謝ったらどうだ」
カルナギが謝罪を提案する……何をどう謝ればいいのだ……俺は何が悪かったんだよ……
「そうよ、醜い男は土下座して裸で町内一周して謝罪するべきよ」
「うるせえ貧乳ゴスロリ女!」
「どうして私だけ速攻で言い返すのよ!」
さて……本当にどうするか……形だけでも謝るか……いや、そんな理由もわからないのに謝罪なんてしないぞ俺は……
「ジンタ……別に謝らなくてもいい……ニジナのそばに行くだけでいいよ」
ユキが俺の気持ちを全てわかったような発言をする……なんとおませさんなのだ……まあ、行くだけなら……
俺はとりあえずニジナの部屋に向かった……そして軽くノックする……
トントン……
「……誰?」
ドア越しにそう声を帰ってくる。
「俺……」
「話したくない」
「俺は話したい」
「…………」
ドアがゆっくり開いた……
「何よ、ジンタ……」
「とにかくお邪魔するぞ」
俺は強引にニジナの部屋に入った。
「ちょっ……ちょっと……いきなり何よ……」
俺はニジナの言葉を無視して、ベッドに腰かけた。
「…………」
「…………」
どちらも沈黙してしまって何も話が進まない……その雰囲気に負けたのかニジナが話を切り出した。
「何よ、話がしたいんじゃなかったの……黙ってないで何か話しなさいよ」
「…………行くな……」
「え!?」
「その何たらって金龍の奴と山に行くな……」
そうだ……アイツとニジナが山に行くのを考えるとイライラするのだ……よくわからないけど、それをニジナに伝えた……
「ジンタ……うん……行かない……ジンタがそう言うんなら私は行かないよ……」
そう言いながらニジナが俺の隣に座ってくる……そのまま妙に密着してきた……
ニジナはジッと俺の顔を見る……そして瞳を閉じた……うぬ……これはあれだな……仕方ない……あれをするか……俺はそっとニジナに顔を近づけていってあれをしようとした……
「うえ〜ん〜〜〜」
なんだなんだ……ドアの方を見ると、いつものごとく部屋を覗いている一団が……泣いてるのはティフェンだな……
「もう……みんなどうして覗いてるのよ!」
あれをあれしようとしたのを邪魔されたのでご立腹のニジナがドア向こうの連中に文句を言った。
「だって〜ニジナがジンタと〜やだ〜私もジンタとチューしたいよ〜」
なんだよそれは……
「ダメ、いくらティフェンでもそれはダメ!」
「もう〜ニジナの意地悪〜」
そう言う問題か? そう思ったがティフェンは真面目にそう考えてるようで、しつこくニジナに交渉している……いや……俺の意思はどうでもいいのか……そう思ったがこの場でそれを言っても無意味なのでここは黙っておくことにする。
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