第177話 雷と猫と饅頭

「そうか……それでここに……」


鉄格子はとても破壊できるような代物じゃないので、仕方なく猫耳の話を鉄格子越しに聞いていた。


彼女はラプラスという深い森のさらに奥で家族と暮らしていたらしいが、冒険者のパーティーに捕獲され、この街へと連れてこられたそうだ……


「家族はどうなったんだ……」

「……それは聞かないでください……」

「……そうか……」


多分みんな冒険者に殺されたのだろう……俺はそれ以上聞かなかった……のだがなぜか彼女は自分から話し始めた。


「はい……まさか私を囮に使ってみんな逃げ出すとは思いませんでしたよ……」

「へぇ?」

「それも私を動けなく拘束してですよ! 親のすることですか……」


なんというか……別の意味で気の毒だ……


「それでこれからお前はどうなるんだ……まさか殺されたりはしないよな」

「はい……どうも聞いた話では何かの大会の賞品になるそうです……」

「まさかモンスター闘技会か!?」

「ああ……そんな感じの何かですかね」

「じゃあ、君は雷猫……」

「人間はそんな名で呼びます……雷猫のタマキです……」

「よし、なら話は早い、実は俺もその闘技会に参加するんだ……」

「本当ですか!」

「ああ……だから優勝して俺が解放してやる……」


「あああ……神よ……なんと素晴らしいことでしょうか……人間に捕まってしまった時はもう私の貞操は終わりだと諦め……何かの賞品にされると聞かされた時は、すごくエッチなことを毎晩されるんだと絶望していたのに……こんな誠実そうな真面目で、絶対にいやらしい目で私を見ない素晴らしい人物が助けてくれると言ってくれるとは……あああ……神よ感謝します」


いえ……もの凄くエッチな目で見てますけど……もちろん色々する予定ですが……それはほんとすみません。


「ジンタ、猫、お腹空いてない」

ユキがそう指摘する……確かにこんなとこで閉じ込められて、ちゃんとご飯を貰っているのか心配だ。

「えっと……確かエレキタワーで買ったお菓子が……あったあった、タワマン! ほら、こんなものしかないけど、食べるか」


「まあ、なんてことでしょう……私を助けてくれると優しい言葉をかけてくれただけではなく、こんな施しを与えてくれるなんて……本当に今日は素晴らしい日です……ああ……神に感謝します……もちろんお腹は空いてますし、ここのご飯は十分な量をいただいていません……育ち盛りなこともありますし、ぜひ、ご賞味したいと思いますが、それを簡単に受け取っていいのか……もしかして交換条件でエッチことをしなければいけないとか……なんという苦しい選択ですか……食べ物を貰うには自分の体を差し出さないといけないなんて……神よ……なんと残酷な試練を私に……」


「で、食べるのか」

「もちろんいただきます!」


タマキはタワマンを美味しそうに頬張る……慌てて食べたものだから喉に詰まらせて咳き込む……


「コホッ、コホッ……」

「ほら、飲み物……慌てて食べるからだぞ」

「んぐっ、うぐっ、グピっ……」

タマキは俺の渡したお茶を一気に飲み干した……

「ぷはっ……助かりました……なんとお礼を言ったらいいか……これはエッチなお礼をするくらいな借りになりますかね……それともどんなことをすれば……やだ……いきなりはハードプレイはダメですよ……軽いエッチからお願いします……」


さっきからエッチを嫌がってるように言ってるけど、もしかしてちょっと興味がるんじゃないのかコイツ……まあ、スケベなことはあとでじっくりすればいいだけだし……まずは……

「よし、それじゃ、俺が優勝してお前を助けたら、俺の召喚モンスターになれ、それでチャラだ」

「召喚モンスター……」


「ユキもジンタの召喚モンスターだよ」

そうユキがタマキに伝えると、彼女は小声でこう聞いた……

「エッチなことはされますかね……あなたはまだ子供だからあれでしょうけど……」

「ジンタ、メスのおっぱい好きだよ、ユキも大きくなったら触らしてあげるんだ」

な……なんてこと言うんだユキ……恥ずかしいだろ……


「それでは、私を召喚モンスターにお願いします……」

どういうわけかそれで納得したのか、彼女は召喚モンスターになることを了承した……いや、まじでエッチなことされたいと思ってないか……


「こら、うるさいぞ猫! 誰かそこにいるのか!」


どこからか声が聞こえる……


「あ……見張りの人間です……このままでは見つかります……」

「そうだな……ここは逃げるとしよう……」


俺がその場から去ろうとした時……

「あの……ジンタさん……頑張ってください……」

「ジンタでいい……さんなんていらないよ」


俺は振り向いてそう言った……



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る