第178話 攻防とか

地下巨大遺跡で迷子になった俺とユキは、なんとか脱出ルートを探して、地上へと戻ってきた。


「ほら、言った通りでしょ、醜い顔があの程度でくたばるわけないのよ……」

「だって……私……」


地上に戻ると、なぜかニジナが泣きじゃくっていた……

「どうしたんだ、ニジナ……何泣いてるんだよ」

「もう……あなたを心配してたからでしょ……無事で良かった……」


「こんなこと初めてじゃないだろうに……」

「わからないけど……今日はすごく不安だったの……ジンタが遠くに行ったみたいで……」


そんなニジナの気持ちはよくわからないけど、心配させたことには素直に謝った。


さらにニジナ以上に号泣していたのはティフェンである……あまりの泣きっぷりに謝るのも躊躇する。


「ああああ〜ん、私……心配で心配で……ジンタが無事で良かった〜あああ〜ん」


いや……そんなに心配するような仲なのか……まだ出会って数日しかたってないんだけど……そう思ったが余計なことを言うとまた泣き出しそうなので黙っておく……


「ジンタ、地下で可愛いい姉ちゃんと楽しそうに話ししてたんだよ」


しかし、ユキの何気ない一言が、その場を修羅場とかした……


「可愛いい姉ちゃんってどう言うことよ、ジンタ!」

ニジナがいつのように過剰な反応をする……そして……


「うわ〜んっ……ジンタの浮気者〜」

いや……待て、ティフェン……浮気者ってなんだ……別にそんな関係でもないだろうに……


「違うって、今回の闘技会の賞品である雷猫に偶然出会って話をしてたんだよ」

「またそんな嘘ばっかり言って! そんな偶然あるわけないでしょ!」

「うわ〜んっ……嘘ついてまで私に気遣いした〜それはそれで嬉しい〜」


うっ……頭痛くなってきた……


「あのな、そもそも俺がどこの姉ちゃんと話そうと勝手だろ!」

「ダメに決まってるでしょ、ジンタの癖に生意気言わないの」

「何だよそれ!」

「いいから本当のことを話しなさい!」

「だから本当のこと言ってるんだって!」


たく……話にならない……俺は話を強引に終了させた。


まだニジナとティフェンがブツブツ言っているけど無視して、俺は宿へと向かって歩きだした……



ブツブツ言っていたニジナたちも大人しくなり、宿の酒場で皆で食事をしていると、ジュアロンが微笑みながら近づいてくる……


「ジンタくん、どうかね、私が隣に座ってあげるけど、ああ、遠慮はいらないよ、他に人がいても気にしないから」


そう言って俺の隣に座っていたニジナを押し除けて強引に座ってきた。


「こら、ジュアロン! ジンタがトイレの便器押し付けられたような嫌な顔してるでしょ、やめなさいよ!」

朝のことを気にしているのか、ティフェンがそう言ってくれる。


「大丈夫、私は便器に顔をつけても嫌じゃないから」

「くっ……なら仕方ないわね……」


意味不明な理由で引き下がるなティフェン!


「それでジンタくん……どうかね、今晩、私の部屋にくる約束だが……」

「してないよそんな約束!」

「そうだったかな……私の記憶は間違わないと近所のおばさんたちから評判なんだがな……」

「なら、そのおばちゃんたちの記憶が間違ってるんだな」

「なるほど……それは気づかなかったな……しかし、今晩、君が私の部屋にくるのに近所のおばさんは関係ない!」


そりゃ関係ないけどさ……あんたが言い出したんだろうが……


「ダメよ、ジュアロン、ジンタはその……あの……今晩は私の部屋にくるから……」


すごい照れながらそう言うティフェンだが……いやいや、そんな約束もした覚えないぞ……

「ちょっと……ジンタ……いつの間にティフェンとそんな約束したのよ……」

「いや、約束してないって……」


「ダブルブッキングというやつだな……まあ、それなら仕方ない、この場でどちらの部屋にくるか決めてもらおうか」

「そうね、私の部屋を選ぶのは間違いないわ」


「……まあ、その二択ならティフェンの部屋で……」

「なぁ! そんなバカな……この私の部屋に来ないで、この変質女の部屋にいくと言うのか……血迷うなジンタくん……この女はエロそうに見えるが、処女だぞ……」

「こら、ジュアロン! 変なこと言わないでよ! まあ、そうだけど……」


いやいや……そもそも人間のティフェンに俺は興味ないから……生娘だろうが何だろうが関係ないぞ……

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