第176話 地下巨大遺跡

地下巨大遺跡はドロキアの街の中心にあった……公園のような開けた場所の中心に、円形の建物があり、そこから地下へと降りるようだ。


「一人五千ゴルドだと……ここでも金がかかるのか!」

「ほら、文句言ってないで人数分払って」

「だから、どうして俺が全部払うのだ……」

当たり前のように俺に支払わせようとするニジナに文句を言う。

「花を持たせてるんでしょ、文句言わないで早く」


ニジナと不毛な支払い争いをしていると、ティフェンが意外なことを言ってきた。

「エレキタワーで、ジンタに払って貰ったから、ここは私が出すよ」

「なんと、本気かティフェン……ニジナと違ってなんと人間ができてるんだ……」

「何よ、私が人間ができてないみたいな言い方じゃない」

「できてないだろ、この守銭奴が!」

「お金って大事なのよ!」

「知っとるわ!」


ということでここはティフェンが払ってくれた……よく考えたらかなり有名なテイマーのティフェンは、底辺召喚士の俺なんかより金持ってるよな……



地下巨大遺跡は、その名の通りに巨大であった……一応、観光ルートなる立て札があり、そこを進めば迷うことはないようだが……


「こら、ユキ、そっちはルートから外れるぞ、入っちゃダメロープも張ってるだろ」

「ジンタ、こっち綺麗だよ」

「綺麗だからってダメだぞ、こういうとこはな、観光ルート以外は危ないんだぞ」


そう言いながらユキを連れ戻そうと水晶の部屋のような幻想的な部屋に入った……その瞬間……


ミシッ……


「うん?」


ガシャアアア〜〜〜!


「うわっ!」


床の水晶が派手に崩壊する……だから危ないって言ったのに……そう心でつぶやきながら落下していく……


「氷柱!」


ユキの声が聞こえる……見ると下に氷の柱が出現していた……

「ジンタ、手、出して」

言われるままにユキの方へと手を出すと、ユキは俺の手をギュッと握って……氷の柱に突っ込んだ……


パリパリパリッ………


氷の柱は何重もの薄い氷でできてたようで、落下のスピードを殺していく……そして柱の下まで来た時には、見事ノーダメージで着地に成功した。


「ユキ……お前、たまに凄いよな……」

そう褒めるとちょっとニコッと微笑むと。

「いつも凄いけど内緒にしてる」


まあ、そうかもな……さて、下に無事に着地したのはいいけど……どうやって帰るかだ……落ちてきた上を見上げるが……無理だな、この高さでは如何しようも無い……仕方ない……別のルートで帰る道を探すか……


「ジンタ、こっち道があるよ」

「そうだな、そっちに行ってみるか」


あてもないので進んでみることにした。


しばらく進むと、妙にでかい空間に出た……そこは遺跡の雰囲気とは全く別の場所といった感じで、大量の光源コケに覆われ、昼間のように明るかった……その明るさのおかげか、草木が生えていて、まるでジャングルのようだった……


「ほほう……こんな地下深くにこのような場所があるとはな……」

「ちょっと暑いからユキここ嫌い……」

確かにユキが言うようにジメッとした暑さを感じる……


「ユキ、出口があるかもしれないからここを探索するけど、我慢できるか?」

「しょうがない、ちょっとだけだよ」


ユキの了承を得たので、俺たちはこのジャングルに入っていた……


ジャングルの中心あたりまで来て、そこに大きなドーム状の鉄格子があるのを見つける……あまりに不自然なそれが気になり近づいてみた……


「なんだろうなコレ……」

「でっかい牢屋」

確かに鉄格子のイメージは牢屋だが……


ガシャ!


いきなり鉄格子を揺らす音がした……音のした方を見ると……鉄格子の内側に獣人がしがみついていた……


「す……すみません……脅かせてしまいましたか……」


獣人はそう話しかけてきた……え……と……猫の獣人かな……耳は完全に猫耳だ……表情もどことなくそんな気がする……シュラとはまた別のタイプの獣感がある感じで……いいぞ……かなりいい感じの俺好みのエロモンスターだぞ……少ない生地の服がまた良い感じでエロさを演出してくれている……


「ぐおぉぉぉぉ! なんだこの鉄格子は! これさえなければ! これさえなければ俺は!」


ガシャガシャ鉄格子を揺らせながらそう叫ぶ……


「そ……そんなに私を助けたいんですか……ああ……諦めなくてよかった……神様はこんな素敵な出会いを用意してくれてたなんて……」


何かを勘違いしてるのか、猫耳は涙を流して感動している……いや……俺は君に襲いかかりたいだけなんだけど……





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