第175話 湯水の如く
女どもが集団で茶屋に入り、炭豆茶一杯で満足するわけなかった……ユキは冷たいアイスを注文して、ニジナたちは甘いお菓子を頼みやがる……おいおい……会計が怖くて逃げたいんだけど……
「に……にまんななせんごるど……どうやったら茶屋でこんな値段いくんだよ……」
「ブツブツ言ってないで、次は地下巨大遺跡に行くんだから早く会計済ませたら」
「おい、ニジナよ、そもそもなぜ俺が全部払わないといけないのだ、シュラやユキの分はまあ、仕方ない、カルナギやゴージャスの代金も問題ない……それに百歩譲ってカーミラの代金もいいだろう……しかし! なぜニジナとティフェンの代金も俺が払わな、いかんのだ!」
かなりの勢いでそう言ったつもりだが、ニジナは一歩も怯むことも無く、堂々とこう言い放った。
「男だからに決まってるでしょ! ケチな男なんて思われたらジンタが可愛そうだから払わせてあげてるんじゃない」
「なんじゃそりゃ!」
結局ニジナの勢いを抑えることができず、茶屋の会計も俺が払うことになってしまった……
しかし、観光地の恐ろしさを思い知るのはこれからだった……
「ジンタ、あれ撮ってもらっていいか?」
シュラがフォトグラファースキルを利用した写し絵の販売であった……値段書いてないのが気になったが、まあ、記念になるだろうと『いいよ』と簡単に言ってしまい……
「いちまんだと! 写し絵一枚が一万ゴルドは高すぎる!」
「いえいえ、ここらではこれが相場ですよ」
「キャンセルだ、シュラ、写し絵を返しなさい」
「お客さん、もう撮っちゃってるから困りますよ……ちゃんと一万ゴルド払ってください」
「……くぅ……汚い商売しやがって……」
血の涙を流しながら俺は財布から一万ゴルドを支払った。
「ジンタ、エレキくん買って」
ユキが俺の袖を引っ張ってそう言ってくる。
「エレキくんとはなんだ」
「あれ、ぬいぐるみ」
見ると棚に得体の知れない気持ち悪い生物のぬいぐるみが置かれていた……どうやらエレキタワーのマスコットキャラクターらしいが、見た目がドロドロのビチャビチャで、可愛らしさより恐怖を感じるその姿に人気はなさそうだが……
「おい、そのぬいぐるみいくらだ?」
さっきの写し絵の件もあるので店員に事前に値段を確認する。
「これですか、定価は二万ゴルドですが、売れ残ってますからね、半額でいいですよ」
「そりゃ、その見た目だから誰も買わんだろ」
「そうですかね、バスクウルフが雷撃を受けてグチャグチャのビチャビチャになって生まれたってコンセプトですからこんな姿なんですけどね」
「まあ、コンセプトはどうでもいいが、一万は高い、もう少し安くできないか」
「そうですね……では八千ならどうですか」
「もう一声だな、五千なら即決しよう」
「五千は流石に……」
「在庫処分だと思えよ、あんなの誰も買わないとお前も思ってるだろ」
「……わかりました、五千でお売りします」
五千でユキが喜ぶならとそのぬいぐるみを購入した。ユキにぬいぐるみを渡すと、その見た目アレなぬいぐるみをギュッと抱きしめて喜んだ。
ダメだ、ここにいては破産してしまう……俺は強制的にここから離れる決断をする。なぜか、眺めだけがいいこんな何もないとこに、まだまだここにいたいと言い出す皆を強引に出口へと誘導した。
「もう少しいたかったのに……醜い男は女の気持ちを理解しなさすぎよ」
「うるさいぞ貧乳ゴスロリ女!」
「ふんっ、そう何度も同じ悪口で反応しないわよ」
「貧乳、ペチャパイ、まな板、や〜いチビ、お前の母ちゃんも貧乳!」
「…………貧乳違うって言ってるでしょ! 脱いで見せたろか!」
そう言ってカーミラは服を脱ぎ出した……作戦通りだ、このままおっぱいを堪能させてもらおう。
しかし……バコーン! 服を脱いでいたカーミラにカルナギの一撃がお見舞いされる。
「こら、カーミラ、ジンタに変なもの見せるな、迷惑だろ」
いや……カルナギ……迷惑ではないぞ……
「う……だってこの醜い男が……貧乳だって言うから……私……」
「あのな、カーミラ、実は男は胸は小さい方が好きなんだぞ、知らなかったのか」
どこ情報だカルナギ……俺は大きい方が好きだぞ。
「ほんと?」
「ああ、間違いない、ニジナがそう教えてくれた」
完全貧乳からの入れ知恵かい!
そんな完全無欠の貧乳代表のニジナは、この会話に加わってはダメだと判断したのか、何も聞いてない振りをして景色を見渡していた……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます