第164話 ゴージャスに登場

モンスター闘技会に参加する為には明日にはドロキアに出発したい──しかし、参加メンバーの最後の一人となるラビットゴージャスの到着が、予定より遅れていた。


「遅い! 何をしてるんだゴージャスは……」

俺の心の叫びに、ニジナが冷静に反応する。

「そもそもくるの前提の発言ね、面倒臭がってこない可能性もあるわよ」

「ふっ……ゴージャスたちは俺に恩を返したいと思っているはずだ、来ないなってことは絶対にない!」

「何を根拠にその自信が出てくるのよ……」

「自身に根拠など必要ないだろうが!」

「普通は何かを根拠に自身を持つものなの!」


そんなニジナとの不毛なやりとりをしていると、部屋にユキが入ってくる。そして無表情でこう伝えた。

「ジンタ、ゴージャス来たよ」

「おっ、やっと来たか!」


そんなユキに続いて、あのラビットゴージャスの一人が入ってきた。しかし……その姿を見て、さすがの俺も驚いた。

「どうしたんだ、ゴージャス、その傷は……」

そうなのだ、ラビットゴージャスは全身傷だらけのボロボロ状態で、やってきていた。

「は……はい……ジンタさんに一人だけ来いとの優しいお言葉をいただき、誰が行くかで揉めに揉めまして……結局、拳で語ることになった結果です……」


「……そうか……なんかゴメンな……」

「いえ、これも全てジンタさんにご恩をお返しする為です、お気になさらずに」

顔面血だらけで言われてもな……さすがの俺でも気にするぞ。


「とりあえず、傷を見てあげるからこっちに来なさいよ」

傷だらけのゴージャスにニジナがそう言ったのだが、一瞬、何を言っているのかわからなかった……よくよく考えたら、そういえばニジナってハイプリーストだったな…………俺にブツブツ小言を言うのが役割ではなく、仲間の傷を癒したりするのが専門なんだと思い出した。


まあ、とりあえず、これで出場するメンバーが揃ったので、明日にドロキアに出発することが決まった。



「別の部屋ですか……一緒の部屋で、今晩はあれやこれやのご奉仕を予定していたのですが……」

明日の出発なので、ゴージャスは寮のゲストルームに泊まってもらうことになったが駄駄を捏ねる。

「俺の部屋はユキとシュラもいるから無理なのだ、悪いがここで我慢してくれ」

「……はい……それではこちらでご奉仕させていただきますのでお待ちしています」

ぐっ……やはりそうきたか……しかし、それも俺の想定内……次の手をちゃんと考えていた。

「で、どうしてカーミラがこの獣と同室ですの」

明日の出発が早いからと理由をつけて、カーミラにもゴージャスと一緒にここに泊まらせる。

「獣って……私はウサギです」

「ウサギが獣じゃないって、堂々と言い張れる神経が好きくないですわね」


どうやらカーミラは好みにうるさいようで、ゴージャスの血には興味がないようだ、まあ、その方が平和的で都合がいいが……


「ジンタ、ちょっとカーミラの行動が心配じゃから、私もここに泊まろうと思うのだがよいか」

カルナギは責任感が強いようで、カーミラが悪さしないか心配のようだ、さらに都合が良いので、それを了承した。



次の日、ドロキアへの出発の朝──


「うわ〜なんて美味しそうなお嬢ちゃんなの……ちょっと朝食にひと噛みお願いできないかしら」

カーミラはユキを見て不謹慎にそんな一言を発する。そう言えばこいつ、ヴァンパイアのくせに朝日を浴びても全然平気そうだな……ちょっと気になったのでそれを聞いた。後、ユキを朝食にしようとしたのはカルナギに怒られて断念したようだ。


「え、どうして私が平気で朝日を浴びてられるかですって、だ! か! ら! 私はヴァンパイアじゃ、ないって言ってるでしょ! 顔が醜いと、頭も悪くなるんじゃないの」

「だ! か! ら! 醜くないって言ってるだろうが、そこそこナイスガイだ、覚えろゴスロリ変女!」

「ゴスロリ変女って何よ!」

「知らんが、お前のイメージにぴったりではないか」

「もう、変な名前つけないで頂戴!」


ちょっと気になっていたカーミラとシュラの相性だが、良くも悪くもないようだけど……どうやらカーミラはゴージャスに対してもそうだったけど、獣系の女が苦手のようで、どこか避けているように見える。一方シュラの方だが、十分、可愛いと思えるカーミラの美貌に、あからさまに性的興奮を感じているようだ。

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