第163話 最後の一人は……

拒否権の無い真祖のカーミラを仲間に加え、最後の一人をどうするか考える。

「ジンタ、もう一人はどうするの」

ニジナがそう言うように、闘技会への参加には後一人必要である、だが、戦力的にはすでに十分だと考えている俺はこう答えた。

「そうだな、あとはラミアの誰かでいいかなとか考えてる」

しかし、その案にはカルナギがこう指摘する。


「いや、ラミアたちはダメかもしれないぞ、みんな思い人がこの街にいるから、遠出するのは嫌がるだろうな──」

「思い人、なんだそれは、男を作ったってことか! たく……俺の知らないうちに何やってんだ」

そのうちラミア全員と酒池肉林のハーレム状態で乳繰り合う予定だったのに、予定が狂うではないか……こんなことならもっと早くに実行しておけばよかったと後悔している。


さて、ラミアたちがダメとなると、いよいよ、誰にするか悩むな……そんな俺の気持ちを察したのかニジナが提案してくる。


「誰でもいいんだったら、あの村に置いてきたラビットゴージャスとかにお願いしてみるのはどうなの、確か最強兎って呼ばれてるくらいだから強いでしょうし」

「おぉ! そうか忘れていた、あのおっさんたちがいたな、確かに適任かもしれん」

「村までなら電報人を使えば明日には連絡できるし、十分、出発までに間に合うでしょう」

「ナイスだニジナ、それじゃ早速、電報人に頼もう!」


電報人とは遠くの人や場所にメッセージや物を送ってくれるプロの配達人で、多くは飛行系の魔物を扱う、元テイマーなどが生業としていた。



ルーディアはさすがは大都市だけあって、電報人の数も豊富である、俺たちは冒険者通りに看板を出している、一軒の電報人を訪ねた。


「すぐに連絡を頼みたい! どうすればよいのだ、ここに書けばいいのか⁉︎ ほら、早く出かける準備をするのだ! こっちは急いでるから依頼に来たんだからな!」

俺は店に入って間髪入れずにそう言った。店にいた電報人はデミヒューマンの小男で、そんな俺の勢いに圧倒されてか、何か言い足そうに口をパクパクさせている。

「ちょ……ちょっと落ち着いて、順場に聞きますから……」

なんとか立ち直った店主はそう言う。

「とりあえず急ぎたい、頼めるか」

「はい、うちのお客さんは大体急いでいる人ばかりですから大丈夫ですよ、それで、どこの誰に、どんな物を届ければいいんですか」

「パモンラの村のゴージャスたちにメッセージを送ってくれ」

「ふむふむ、パモンラですね、ゴージャスたちとおっしゃってますけど、お名前ですか?」

「違う、種族だ、村で聞けばすぐにわかる」

「ふむふむ、それではメッセージをこの紙に書いてください」


そう言われて、俺は紙に短くこう書いた。

「『ジンタだ。お前たちの中で誰でもいいから一人、すぐに俺のところへ来なさい』……もうちょっと説明してあげた方がいいんじゃない?」

紙に書いた文を読んで、ニジナが文句を言ってくる。

「あいつらなら説明などしなくても、俺の意図をくみとってくれるはずだ」

「そんな『つうかあ』な中だったけ……」


さらに嬉しいことに、文面を読んだ店主がこう提案してきた。

「一人だけこちらへ呼び寄せるってことでしたら、呼び出し他人プランを利用なされば、そのまま私がお客様の元までお連れしますけど、どうしますか?」

「なんだと、そんなサービスがあるのか」

「はい、多少、料金は高くなりますけど、お急ぎでしたらそちらの方が良いですよ」

「まあ、急ぎではあるので、お願いするとしよう」

「それでは、メッセージの配送と、オプションの呼び出し他人プランを追加で、七万ゴルドになります」

「…………高いな……」

「すみませんね、これでも安い方なんですよ」

「まあ、仕方ない、ニジナ、払っといて」

「ええ〜!! どうして私が払うのよ」

「まず、電報人を使おうって言い出したのはニジナだろ、それと俺にそんな持ち合わせがないし、カルナギやカーミラもお金を持っていとは思えない……そうなるとニジナが払うしかないだろうが!」

「何よそれ…………もう……貸しだからね、ちゃんと返してよね」

「ふっ、闘技会で優勝すればちゃんと返すはずだ! そう約束してもいいとすら思っているぞ!」


ニジナは渋々、自分の財布から七万ゴルドを取り出して店主に支払ったが、当然、納得はしていなかった。




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