モンスターハーレム
第160話 新たな旅立ちの前
ギルドパルミラの寮にある共有スペースで寛いでいると、ニジナが何も言わずに俺に近づいてきた。ニジナの両手にはお茶が持たれており、その一つを俺の前に置く。
「モンスター闘技会に参加するって聞いたけど……」
「ああ、賞品が豪華だから、いっちょ貰ってこようと思ってな」
「ドロキアに行くんでしょ、ちょっと遠いよね」
「そうだな、片道、10日はかかるかな」
俺がそう言った後、しばしの沈黙の後、ニジナが急に変なことを言い出した。
「……もう……しょうがないなぁ〜仕方ないから私も一緒に行ってあげるよ」
「え? どうしてそうなるのだ、今回はモンスター闘技会に出るだけだから別に来なくてもいいぞ」
「何言ってるのよ、道中だって危険がいっぱいでしょ!」
「いや……ルーディアとドロキアの間は街道が整備されてるから比較的安全だが……」
「馬鹿ね、安全だと思ってる場所だって危険はあるものじゃない」
ははん……読めたぞ、ニジナの奴、モンスター闘技会の優勝賞品のおこぼれを狙ってやがるな……なんて強欲な奴だ、ここははっきりしておいた方がいいだろう。
「ふん、それならついてきてもいいが、優勝賞品は少しもやらんからな」
「いらないわよ、賞品なんて……ていうか、あんた、本気で優勝できる気でいるの?」
「当たり前だ、何の為にドロキアなんて遠くに行くと思ってるんだよ」
「さすがに優勝は無理じゃないかな……そのモンスター闘技会って、全召喚士、テイマーとかに送られてるんでしょ、そうなると五次職のアルティメットサモナーとか、テイマーエンペラーとかも出場するかもしれないのよ、そんなの二次職の召喚士であるジンタが、勝てるわけないじゃないのよ」
「ふっ、ニジナよ、戦うのは俺じゃないだぞ、ユキやシュラだ!」
「ユキちゃんやシュラちゃんにだって限界があるわよ」
「いや、あいつらは強い! マスターである俺が言うのだから間違いない」
「もう……そう風に思ってる人ばっかりが集まる大会なんだってば……それにさっき闘技会の説明見たけど、参加するモンスターは五体で1チームでの参加になるみたいだけど、ジンタにはユキちゃんとシュラちゃんの二人しかいないじゃない、それはどうするの?」
「……五体? えっ! そうなのか! どこ、どこに書いてるんだよ」
「もう……全然見てないじゃないの……」
確かに闘技会説明にそう書かれていた……五人か……召喚制限で三人が限界なんだが……と、思ったのだが、よく読んだら召喚契約をしている必要はなく、支配下状態であれば、どのような形態でもいいようだ、ならばマリフィルも連れて行けるな……まあ、それでも三人だけど……
「マリフィル以外で後、二人か……」
「ちょっと、ジンタ、マリフィルにお願いするんだったら早くしないと」
「どうしてだ?」
「本当にちゃんと読まないわね、そこに出場するモンスターは冒険者はダメって書いてるでしょ、今日、マリフィルはどこに出かける予定よ」
「あ!! 冒険者になる儀式で女神の祭壇に行くって言ってたな!」
「冒険者になっちゃったら闘技会に出れないわよ」
「わわっ、急がないと!」
と、言うことで急いで女神の祭壇へと向かった。
「あっ、ジンタさん、ニジナさん、見てください、冒険者になったんですよ」
うわっ! 間に合わなかった……
落ち込む俺の姿を見て、マリフィルが言ってくる。
「やっぱり、魔法使いとかの方が良かったですかね……」
「いや……そうじゃないよ……え〜と、基本職は何を選んだのかな」
「戦士です、ヴァルダさんみたいなパーフェクトアーマーを目指しています」
それを聞いたニジナがマリフィルにこう言う。
「マリフィルはタンク職希望なんだね」
「はい、みなさんを守れる存在になりたいんです」
確かに冒険者になる前から、マリフィルには高い防御能力があるみたいだけど……うっ……それは闘技会が終わった後にして欲しかった……
さて……あてにしていたマリフィルがダメとなると、後3人も見つけてこないといけなくなったな……どうしたもんか……
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