第137話 悪い奴らの挽歌
暗い部屋の一室──
全身黒ずくめの、見るからに怪しい人物が四人、どう見ても良からぬ相談をしていた。
「それで魔獣の方はどんな調子なんだ」
体を包み込むようなローブを羽織っているので、どのような人物かは定かではないが、一際大きな体と、太い声からすると成人男性であろう者が、四人の中で一番小柄な人物にそう声をかける。
「凄まじい戦闘力ですよ、1体で上級冒険者のパーティーを殲滅するほどですから……」
そう答えた小柄な者は、高い声から推測すると女性のようだ。
「その強力な魔獣が50体とは……もう、冒険者の街ルーディアも、攻め落とせるんじゃねえのか」
輩のような軽い口調でそう発言した人物は、最初に話をした男より随分若い男の声のようだ。
「ルーディアの冒険者達を侮ってはいけません……五次職の冒険者の戦闘力は、今のあなた達に匹敵します……それが10人以上もいる……現在の我々の戦力では勝つことはできません」
おそらく四人の一番中心であろうその者の声は、美しく澄んでいた……話の内容を無視すれば、女神の言葉だと思う者もいるであろう、威厳と独特なカリスマ性のあるその言葉に、3人の人物は深く頷いた。
「それでは予定通り、魔獣の数を増やすのと、あれを復活させる準備を進めよう」
大柄な男の言葉に、皆、頷いて同意する。
「やはりメリューカを攻め滅ぼして、神器や魔道具を奪うのが早いと思いんだけど、どうよ」
「確かにメリューカなら現状戦力でも簡単に殲滅できそうだし……あれの復活には大量の魔力源が必要ですからね」
軽い口調の男の言葉に、小柄な女が同意する。
「そうですね……メリューカの住民には悪いですけど──皆殺しにして全ての神器と魔道具を回収しましょう」
ローブを深く被ってるいるのでその表情はわからないが、残酷な判断を涼しい声で言い放った。
暗い部屋での会議が終わると、小柄な女は薄暗い廊下を一人歩いていた──
廊下といっても天然の洞窟に手を入れているだけの通路で、10メートル間隔くらいで置かれている魔法灯篭の明かりがなければ完全な暗闇の場所である。
小柄な女は、岩場をくり抜いて設置されている木製の扉の前に来ると、少し笑みを浮かべてその扉を開いた。
扉を開くと、くぐもった複数の唸り声のようなものが聞こえてくる──
「ああ……美しいわ……どうしてあなた達はそんなに私を興奮させるの……」
そう言いながら小柄な女はローブを脱いで、近くにあった洋服掛けにそれを掛ける。
ローブを脱いで現れた小柄な女の姿は、胸の半分以上を露出している青い服に、お尻を強調した太ももが丸出しの短いズボンといった格好で、冒険者としてはあまりにも無防備であった。
彼女は、小柄な体に似つかわしくない大きな乳房を揺らせながら、興奮した眼差しで部屋を見渡していた。
女の目線には、複数の女性が、ロープや鎖で拘束されている。彼女達はほとんど裸で、ヒューマンの女性もいれば、デミヒューマンの女性もいる──そんな女性達の一人一人に近づき、胸を触ったり、唇に触れたりして興奮を伝える。
「今日はあなたと愛を語りましょう……」
そう言って指名したのはセイレーンの女であった──
小柄な女は、セイレーンの女の口を塞いでいた猿轡を外した。
「わ……私を家に帰してください! こんなとこ、もう嫌!」
喋れるようになったセイレーンの女は、すぐに抗議の声をあげた。
「ダメよ……あなたは私のおもちゃとしてずっと一緒にいるんだから」
その言葉を聞いて、セイレーンの女はブルっと身震いをする──
「ほら……気持ちいい事してあげるから……そんな寂しい事言わないで……」
そう言いながら女は、セイレーンの大きな胸を弄ぶ──
「いや……」
「いやなの? でもあなたの乳首はこんなに固く大きくなってるわよ……」
「…………」
セイレーンの女は頬を赤くして下を向いた。
「ふふっ……」
女はその反応に満足したのか、嬉しそうに微笑む。
さらにセイレーンの女への責めをエスカレートしようとした時、部屋の扉が勢いよく開かれた、そして大きな男が入ってくる。
「報告します! メリューカの森を抜けて、冒険者のパーティーがこちらへ向かっています」
女は、いいところを邪魔されたことに怒っているようであった。
「冒険者が近ずいているですって……あなたは──そんな報告の為に私の楽しみの邪魔をするのですか……」
「いえ……ラウガ様が……」
さらに何かを伝えようとした男の言葉はそこで止まる、代わりに低いうめき声をあげていた。
どこから出したのか、女は黒い鞭を手に持っていた、それで報告をしていた男の首を絞めあげていた。
「ま……待ってください……っ……す……スフィルレン様……」
苦しむ姿を見て少し気が晴れたのか、スフィルレンと呼ばれた女は鞭を引いた。
「それでラウガはなんと言っているの」
「はぁ……はぁ……はい……8人ほどのパーティーと戦力的に丁度良いので、新しい魔獣の実験体に使ってはどうかと……」
「……フン……まあ、そうね……それじゃ、出来立てホヤホヤのあの子を出してみようかしら……」
そう言うスフィルレンの顔は禍々しく微笑んでいた──
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