第120話 温泉の攻防

まずは温泉に入り、落ち着くことにした。ここが女湯であることは、とりあえずは忘れる。


目を瞑って瞑想状態に入る──ここは男湯だと思い込み、強制的に癒しモードへと移行する。だが、そんな状態でも、周りの連中はそっとしてはくれない……


「ジンタ、酒飲むか!」

「…………」

「ジンタ、ちょっと、なに女湯で寛いでるのよ」

「…………」

「ジンタ、背中流してよ」

「…………」

「ジンタ──」

「だぁー! 俺は癒す為に温泉に来てるのだ! 癒しの時間を邪魔するんじゃない!」

「何が癒しの時間よ、そんなの男湯に戻ってやりなさいよね」

「俺が男湯に戻ると、ゴージャスたちも付いてくるではないか」

「それのどこがいけないのよ」

あっけらかんと言うニジナに、猛烈に反論する。

「さっき、襲われてたの見たろうが! 今度はタオルだけではすまないかもしれないのだぞ」

「もう大丈夫よ、今はほら、おとなしいでしょう」

「それはニジナが近くにいるからだ」

「何よそれ、人を虫除けみたいに言わないでよ」

「虫除けではない、護衛だ」

「……もう、勝手にしなさい」


ゴージャスたちは、あからさまなサービスの提供はしなくなったが、それでも俺の周りに集まり、隙あらば何かしらしようと企んでいるようだ……油断すればどうなるかわからんな──


そんな緊張の時間の中、風呂場の扉が開かれて、新たな客が女湯に入ってきた。見ると見知った顔である。

「マリフィルもきたんだ」

ニジナがそう声をかけると、マリフィルは笑顔で答える。

「はい、皆さんとはこれから仲間になりますので、裸のお付き合いでもと……あれ、どうして女湯にジンタさんがいるんですか」

マリフィルはまさか女湯に俺がいるとは思ってなかったのか、タオルで胸を隠すこともなくその豊満な胸をさらけ出していた。もちろんその姿に俺の体の一部分がやばい反応をする。


マリフィルは、特に恥ずかしがることもなく、俺のところへと近づき話しかけてくる。

「ジンタさん……よかったらお背中流しましょうか?」

すごく魅力的な誘いだが、今、俺の下半身はすごいことになっている……湯船から出たらそれがバレてしまって大変なことになりそうだ……

「いや……ありがとう──でも、もう体は洗ったから大丈夫だよ」

それを聞くと、マリフィルは残念そうな顔になった。

「それじゃあ、お隣を失礼して……」

マリフィルはそう言うと、かけ湯で体を流すと、あろうことか俺に密着するように湯船に入ってきた。

「ちょっと……そこの龍娘さん、ジンタさんに近くありませんか──それは私たちの役目です」

ゴージャスがそう言ってマリフィルに抗議する。

「──え……と、穴掘り兎さん……そんなは誰が決めたんですか?」

「私たちです……私たちはジンタさんにまだ恩返しができてません」

「そうですか──ですと、私にもその権利はありますね、私もジンタさんに恩返しができてません」

ちょっと空気がおかしくなっきた……マリフィルとゴージャスたちが変な雰囲気で睨みあう。

「ちょっと……ジンタが困っているから……あまり取囲んじゃダメよ。ジンタもそろそろ男湯に戻ったらどうかな」

ニジナが見かねてそう言ってくれる。

「そうだな……男湯に戻るとしよう……あっ……」

ダメだ……まだ下半身が大変な状態だ……このままでは湯船から出られない。

「何してんのよ……早く男湯に行きなさいよ……それともこの状況を楽しんでるわけ?」

ニジナが小声でそう声を言ってくる。

「ち……違うよ……」

違いはしないが、湯船から出られないのも事実である……

「どうした、ジンタ、何モジモジしてんだよ、さては足が痺れてるな──私が手を貸してやるよ」

そう言ってシュラが、余計なことに俺の体を引っ張る。湯船から出るとき、下半身を隠そうとしてバランスを崩してしまう。そしてその拍子に、とんでもないことに、ニジナの胸を思っ行きり握ってしまった。

「きゃっ……!!」

さらに俺のタオルがひらりと落ちて、すごいことになっている俺のアレがあらわになってしまった。それを見たニジナの顔が、信じられない速度で真っ赤になっていく……


次の瞬間、ものすごい衝撃と破裂音とともに、俺の視界が一瞬で真っ暗になった……そして意識がそこで無くなる──

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