第115話 鉱山ダンジョンまで行きましょう
マリフィルの謝罪は、村人たちへの土下座から始まった──
そもそもマリフィルのことを悪く思っている村人などいなく、誠心誠意謝罪することで、村の秘宝を盗んだこと、そしてそれを使用して消滅させたことは許された。
ただ、村のお守りである宝石がないのは困ると言うことで、俺たちとマリフィルで代わりの宝石を鉱山ダンジョンで見つけてくることになった。
「おい……なぜ鉱山ダンジョンへ行くパーティーの面子におっさんたちがいるのだ?」
「いや、鉱山に鉱石を採掘しに行くと言ったら、ツルハシをどこからか持ってきて行く気満々なんだよ」
ロッキンガンがそう説明する。
「おっさんたち、鉱山に行きたいのか?」
俺がそう聞くと、おっさんたちはウンウンと頷いた。これまで、何もしたがらなかったおっさんたちが何かにやる気を出すのはいいことだ、ここは同行を認めることにした……が──
「それはいいとして、どうしてジークたちは見送り側なのだ?」
ジーク、キネア、ロッキンガンの3人は、いってらっしゃいと言わんばかりに見送る側に立っていた。
「うむ……ここはジンタの経験の為に、あえて心を鬼にして、俺たちは残って、酒盛り……いや、安全祈願の祭りをすることにした。まあ、戦力的にはヴイーヴルもいるし大丈夫だろ──人手もおっさんが8人もいるしな」
「勝手なことばっかり言ってるな……高価な宝石が見つかってもやらないぞ」
「それは仕方ないが──まあ、精々いい石を見つけてこいよ」
こいつら……どうせ大した物なんて見つからないと思っているな……こうなったらダイヤとかミスリルを見つけてアッと言わせてやる。
鉱山ダンジョンは、村から歩いて山間に10分ほどの行った場所にあった。
「ジンタ、おっさんたちバテてる」
ユキがそう言うので見ると、おっさんたちが全員、はぁーはぁーと息が乱れている。10分くらい山を歩いただけでバテるくらいのスタミナなのに、鉱山での採掘なんてできるのかね……ちょっと心配になってきた。
「ジンタさん……」
「どうしたマリフィル」
「シュラさんが密着してきて歩きにくいです……どうにかしてください……」
そう言われて見ると、シュラがマリフィルの腕に抱きついて、いい感じに胸に肘が当たるように歩いている。同性だからギリギリセーフだが、おっさんがあれをやれば犯罪レベルの行動だ。
「シュラ──ダメだぞ」
「ふん──ちょっとくらいいいだろう」
「ちょっとじゃないからダメだ」
「ちぇっ……」
「それより、ジンタ、鉱山ダンジョンのどの辺で鉱石は取れるの?」
ニジナが不意にそう聞いてきた。俺は堂々とこう答える。
「うむ、そんなのは知らないぞ」
「……もしかして、鉱山ダンジョンの情報、何も聞いてきてないの?」
「おいおい──俺がそんなに間抜けだと思うのか──場所を聞いてるから到着してるんだろう」
「いや……中の様子とかは聞いてないの──」
「馬鹿野郎! 聞いてたら言っている」
ニジナの想像を絶する呆れ顔を無視してると、マリフィルが鉱山ダンジョンを説明してくれた。
「中はそれほど深くないです、最下層が三階層で、そこで鉱石が取れます。主に取れるのはスズとメノウ、後は銅が少し……」
「あまりいい鉱石は取れなさそうだな──」
「そりゃ、いい物がポンポン取れるなら、もっと人気あるんじゃないの」
「よく考えたらそうだな……」
これは残って宴会の方が正解だったかもしれないな──てか、あいつら、それを知ってて残ったんじゃないだろな……
鉱山ダンジョン────ダンジョンの名が付いているとおり、ここにもモンスターは出現する。俺たちが最初に遭遇したのは、巨体のゴーレムだった。
「ジンタ! でっかいのがそっちに行ったぞ!」
シュラの警告に右手を見る。大きな体を揺らせながらゴーレムが走ってきていた。10メートルほどの巨体で、押しつぶされたら一溜まりもないなさそうだ。
「マリフィル!」
肉体労働は俺の仕事ではない、ここは頼れる強モンスターに役目を譲る。
マリフィルは巨体のゴーレムに負けないくらいの存在感のある巨乳を揺らせながら、手をゴーレムの方に向ける──そして気合とともに、闘気を放出した。大地が揺れるような波動をマリフィルは放ち、近づいたゴーレムを粉砕した。
「すごいなマリフィル──」
「いえ……ゴーレムはその素材と質量で強さが決まります……先ほどのゴーレムは大きくはありましたが、素材はスズでできていましたので、弱く、柔らかったです」
確かにゴーレムの強さは素材で決まるけど、あの大きさを一撃で屠るのはすごいと思う──
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