第100話 危機的状況
その後も、ジンタたちは、トレジャーボックスのポイントを回って、メリューカヘと向かっていた。三匹目のおっさんが出た後は、トレジャーボックスは空振りが続き、おっさんが増加することはなかったが、トレジャーの回収もできずに、未だに何も手に入れることができていなかった。
その後、トレジャーボックスの回収の為に、街道から少し離れたルートを進むことになったのだけど、これが最悪の選択となった。街道を離れてでも、遠回りのルートを選択したのは、そのエリアに、無数のトレジャーボックスのポイントが存在しているからである。
問題が起こったのは、トレジャーボックスの密集地帯である、ミルゴ砂漠に入ってからであった。砂漠の中を彷徨うこと3日。砂漠の中を移動する為に、水と食料はかなりの量を用意していたのだが、三匹のおっさん……いや、途中でさらに2体増えて、五匹のおっさんとなったおっさんたちにより、水と食料を食い尽くされたのだ。
「さて、砂漠から脱出するにも、水も食料も無い。どうしたものか……」
さすがのジンタも、力なくそう言う。俺たちは、もう、丸一日、食べ物どころか水も飲んでいない。
「おっさんをまずは捨てていこう。さすがにこいつらと一緒だと死んでしまう」
ロッキンガンが現実的な話をし始める。それに対して、ユキが猛反対をする。
「ユキ……食べるの我慢するから……おっちゃんたち捨てないで……水を飲むのも我慢するから……」
何かの愛着が湧いたのか、ユキは必死に訴える。ニジナとキネアも、さすがに人としてどうよっとロッキンガンを責めた。こちらに女性陣の矛先が向いてこないように、ここは黙っていることにする。しかし、現実問題、どうにかして水と食料を手に入れないといけないのだが……
「今更ながら、インパクトバース論で考えると、もしかしたらこの状況であれば、トレジャーボックスから、水や食料が出てくるんじゃないかな」
俺がボソッと思いついたことを言うと、みんな少しざわつく。
「ありえるわね……試してみる価値はあるんじゃないかしら」
キネアがそう言って俺の意見を肯定すると、みんな頷いて賛成する。
強い思いがトレジーボックスから出てくるアイテムを作り出すといった突拍子もない考えのインパクトバース論であるが、それを信じて俺たちは近くのトレジャーボックスに向かった。
ポイントに、トレジャーボックスは存在した。ロッキンガンがトレジャーボックスをアンロックする。みんな息を飲んでロッキンガンを見守っていた。
インパクトバース論を信じるなら、空腹で、喉の渇きのある今なら、トレジャーボックスから水と食料が出てくる可能性が高いはずだ。だけど、少しだけ、おっさんがさらに増える恐怖を俺は感じていた。頼む……食料と水であってくれ、そう願う。
「よし! みんな喜べ、食料が出てきたぞ」
そのロッキンガンの報告に、みんな喜びの声をあげる。これで助かるぞとこの時はみんな思っていた。だが、出てきた食料を見て言葉を失う。
「いや……この状況でクッキーが出るかね」
トレジャーボックスから出てきたのは、美味しそうなクッキーであった。熱い紅茶などと一緒に食べる分には最高のお菓子だと思うけど、さすがに水も何も、水分がないこの状況では、それは凶器にすら見える。
「だね……こんなの食べたら口の水分全部持ってかれて、大変なことになるよ」
さすがに今の状況では禁断の食べ物だろう。全員が食べるのを躊躇した。だが、そんなことを考えずに、そのクッキーを口に放り込む連中がいた。そう、五匹のおっさんたちである。彼らはクッキーを美味しそうに食べると、口の中の水分をすべて持って行かれて、悶絶していた。それを見て、ああはなりたくないと、手に持ったクッキーをそっと置いた。
「そうだ、この状況でトレジャーボックスを開ければ、水が出てくるんじゃないかな」
ニジナがナイスなことを言った。確かに今の状況では、全員が水を欲している。かなりの高確率で水が出てきそうであった。クッキーはまだ沢山あるので、水さえあればそれも食べることができ、いろんな問題が解決しそうであった。
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