第81話 ハーレムアタック

初日に続き、二日目、三日目も討伐は順調に進んだ。だけど、ジンタパーティーは四日目に波乱の展開を迎える。


ジンタは、ある存在に対しては極端に目が良くなる。なので当然のごとく数キロ先の目標にすぐ気がついた。


「全員待機!」


そう叫ぶと、ジンタは猛ダッシュでその場所に向かった。そこは敵の群れのど真ん中で、端から見れば無謀な特攻に見える。いや・・実際、無謀な特攻であった。


「ジンタ・・・一人で魔物の群れに向かって・・何してんのよ」


待機指示に従って、みんなその場に留まっていたが、さすがにニジナは心配で声を上げる。


「それにしてもどんな作戦なんだ・・あれでは魔物がジンタに殺到していくだけに見えるぞ・・・まさか! ジンタのやつ・・囮になって、魔物を密集させようとしてるのか!」


ジュエルがジンタの行動を予想してそう発言した。そしてジュエルの想像通りに、魔物がジンタに元へ群がり始めて、ジンタを中心に魔物の大きな塊と化す。


ジンタの目指したのはラミアの一団であった。それは下半身が蛇、上半身が美しい女性のモンスターで、綺麗な乳房を惜しげもなくさらけ出しているエロい子であった。ジンタは、パーティーで行動して彼女たちを巻き込んでの乱戦になることを嫌がり、仲間を置いて別行動を取ったのである。


「エロマント! 女が触り放題の楽園だ! 俺が死んだらお前もスケベできなくなるんだからちゃんと守るんだぞ」


ラミアは少なく見ても10体はいた。ジンタの襲撃を敵襲だと判断してそれを迎え撃とうとしていた。だが、ジンタに彼女たちへの攻撃の意思は無く、走り込んで近づくとラミアの一体に飛びついた。


仲間に飛びつかれたラミアたちは、攻撃を躊躇する。ラミアの知能は高い方で、仲間への配慮などを考える知性は持っていた。不用意に攻撃できなくなり、なんとか仲間からジンタを離そうと全員で奮闘する。しかし、ここでエロマントがその力の本領を発揮する。マントは謎の力で大きく広がると、すべてのラミアを包み込んで、その裸体を堪能し始めたのだ。


マントにエロく絡み捉えられたラミアたちは、意味不明なこの状況に混乱していた。もはや攻撃する気力を失い、マントとジンタにその体を貪られるだけであった。


しかし、周りの他の種族のモンスターたちには、ただ単純に敵がテリトリーの飛び込んできたとしか見えていなかった。すぐにジンタに群がり、攻撃を開始する。しかし、エロマントがそのモンスターたちの攻撃をその防御性能を遺憾なく発揮して防いでいた。


そんな状況を少し離れて見ていたパーティーたちは、これを好機だと判断していた。

「敵が考えられないくらいに密集しているな・・これがジンタの作戦なのか・・」

千体近い敵が集まる光景を見て、ルドビッヒがそう呟く。

「あそこに一斉に範囲攻撃打ち込んだら終わるんじゃないかな・・ジンタはこれを読んでいたんだね」

絶対にそんなことはないんだが、仲間たちはこれがジンタの作戦だと信じていた。


ジンタの作戦を無駄にしない為に、あのモンスターの塊に範囲攻撃を一斉に打ち込むことになった。もちろん、あそこにいるジンタを救出するのが先なので、その為に高レベルの二人が動く。


ジュエルとウリエルはジンタを救出する為にモンスターの塊に近づく。そして行動を開始した。ウリエルは10体の叫びの死霊と呼ばれるモンスターを召喚する。このモンスターは戦闘能力は低いが、ある特殊能力を持っていた。それはマインドシャウトと言うスキルで強烈な叫び声を発するのだが、この叫びを聞いた者は一時的に行動不能になるのである。


叫びの死霊は、一斉に叫び声をあげる。その叫びは凄まじく、千体のモンスターは一斉に動きを止める。その間に、敏捷をブーストしたジュエルがジンタの元へ駆け寄った。


近づいてきたジュエルにすぐに反応したのはエロマントであった。すでに興奮状態のエロマントは、近づいてきた極上の女体に、エロい生地を伸ばす。


ジュエルはジンタのマントが絡みついてくるなど考えてもいなかったので、そのままマントに簡単に捕獲される。巨大に肥大したマントの中では、ジンタが10体のラミアと、ついでに取り込まれたジュエルと一緒にもみくちゃにされていた。ジンタは女体に囲まれた幸せな瞬間を噛み締めていた。


「ジンタ! みんながここに一斉攻撃をする。早く逃げないと危ないぞ」

もみくちゃにされながら叫ぶジュエルの言葉に、ジンタは露骨に嫌な顔をする。

「え・・・そうなのか・・」

楽しい時間を邪魔された子供のように落胆したジンタは、すぐにエロマントに指示を出した。

「エロマント。地面に潜って攻撃を避けれるか」


ジンタはあまり考えずにそう言ったのだが、エロマントはその要望に応えた。ジンタとジュエルと10体のラミアを守るように包み込むと、巨大なワームのような動きで地面の中に潜っていく。



「あ・・・ジンタとジュエルが変な布に包まれて地面に潜っていく・・」

その光景を見ていたニジナが唖然とした顔でそう言う。


ルドビッヒは、ジンタたちが完全に地面に潜りきったのを見て、一斉攻撃を準備していたユキたちに声をかける。

「今ならジンタたちに影響はないぞ。攻撃開始だ!」


その言葉を合図に、全員が魔力や弾を気にせず、全力の攻撃を敵の塊に放った。

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