第79話 戦いの準備

冒険者の一団が、見晴らしの良い丘の上から数キロ先の沼地を見下ろしていた。その一団はパーティーと言うには規模が大きく、軍隊と言うには少なかった。


「キルバスの沼地が一望できるし、比較的守りやすいのでこの丘に拠点を設営しよう」


ディレイの言葉に、意を唱える者はいなかった。すぐに手分けをして、その場に簡易的な拠点が設営される。


簡単な作りであったが、拠点は、砦のような見た目のものが出来上がった。モンスターの群れが、ここまで攻めてくる可能性を考えて、多少守りやすように作られている。拠点ができると主要メンバーは集まり、作戦会議が開かれた。


「まさかジンタが助っ人を連れてくるって言った時は、誰を連れてくるんだと思ったけど、まさかリスティアが現れるとは思わなかったよ」


ルキアがリスティアを見ながらそう発言すると、彼女は微笑みながらこう返す。

「ジンタとは友人なんだ。無理なお願いをして悪かったな」

「全然無理じゃないよ。僕たちにとっては願ったり叶ったりだよ」


ルキアは正直にそう思っていた。五次職のリスティアの参戦で、戦力が大幅にアップしたのは間違いない。


「まず、制圧手順だけど、一気に殲滅するには無理がある数なので、日にちをかけて少しずつモンスターの数を削っていく。ある程度モンスターの数が縮小したら、一気に殲滅する感じでいこう」

ディレイが大まかな作戦の方針を話し始める。

「そうだね。無理をするのはやめよう」

ルキアもそれに賛成した。


「少し発言して宜しいですか・・・その作戦ですと、どれくらいの日数で殲滅できそうですかね」

そう言ってきたのは、今回のギルドミッション担当者で冒険者組合の職員であるミルフィネットであった。さすがに規模の大きなミッションなので、お目付役として参加していた。ディレイがそのミルフィネットの問いに答える。

「そうだな・・おそらく敵は十万以上は軽くいると思うので・・1日1万を討伐するとして、10日はかかると思うぞ」

「そうですか・・・」

ミルフィネットは、少し残念そうにそう呟く。すごく私的な理由で二、三日で帰りたかったのだけど、その希望は叶いそうになかった。


「ディレイ。実際に討伐をするパーティー編成だけど、どうするつもりだ。うちの連中は低レベルの者が多いから、できれば混成パーティーにしてもらいたいんだが・・」

そうディレイに質問したのは、今回の作戦に助っ人として参加してくれている、同盟ギルドの白の貴婦人のギルマス、ビフィスであった。


「そうだな、戦力が均等になるようにパーティー編成は考えよう」


パルミラギルド、白の貴婦人を合わせた冒険者数は百二十人。それを十のパーティーに編成する。パーティーリーダーは、パルミラギルドからルキア、ディレイ、ヴァルダ、ジーク、エミュリタの五名が、白の貴婦人からビフィス、ルザー、パルディアの三名が、それと五次職のリスティアを入れて九名、と、ここでまではすぐに決定した。あと一人は誰にするか少し悩む。


「レベル的に言えば、シュラザードかウリエル、ジュエルのうちの誰かだな」

ヴァルダがそう言うと、ディレイも同意する。

「そうだな・・その辺が無難か・・」


「僕はジンタがいいと思う」

ルキアがとんでもないことを言い出した。すぐにディレイが反対する。

「いや・・さすがにジンタは二次職だぞ。レベル的にも仲間を引っ張るのは難しいと思うぞ」

「最近はパーティーリーダーとして頑張ってるみたいだし、あのユキやシュラに指示を出して上手く立ち回ってるみたいだから、リーダーとしての資質は高いんじゃないかと僕は思ってるんだ」


意外にもヴァルダもエミュリタもルキアの意見に賛成した。

「そうだな・・ジンタってのは面白いかもしれない」

「そうね・・サブで誰か三次職をつければ戦力的にも問題なさそうだし・・」


さすがにヴァルダとエミュリタがそう言うならディレイも納得するしかない。少し心配ではあったがそれを了承した。


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