第71話 九死からの決着
ジンタとニジナに迫るニンジャマスターに、氷の槍が降り注ぐ。それを後方に飛んで避けると、何度かジャンプしてその攻撃者にターゲットを変更した。
ユキは迫り来るニンジャマスターに、アイシクルランスをさらに放った。無数の氷の槍が、ニンジャマスターに襲いかかるが、全ての槍を避けると、ユキの目の前に迫る。
ユキの隣にいたミチルが、物理耐性フィールドの防御魔法を唱えた。そんなユキとミチルに対して、ニンジャマスターは容赦ない一撃を放つ。二人は大きく吹き飛ばされて地面に倒れた。
ジンタ、ニジナ、ユキ、ミチルが倒れている姿を見て、シュラとヴァルダは助けに行こうとした。だが、黒い鎧の男、拳闘士、魔導士の三人の攻撃に身動きができなかった。
それでも無理にその場から離れようとしたシュラに、魔導士の雷撃の魔法が直撃する。体に痺れるような衝撃を受けて、シュラはその場に崩れ落ちる。
一人、まだ動けるヴァルダであったが、黒い鎧の男と、拳闘士の連携攻撃に吹き飛ばされる。
それでもヴァルダは立ち上がった。自分が倒れば、ジンタたちの命がないと、その思いだけが彼を動かした。
「まだだ・・俺は戦えるぞ!」
そう言ってヴァルダはハンマーを振り回す。だが、すでにダメージは限界を超えていて、振るうハンマーに力は無かった。
「はははっ。すでに勝負はついたな・・まあ、よく戦ったと褒めてやるよ。だが、俺たちにここまで逆らったのが許せねえ。殺してやるから覚悟しろ」
そう言って黒い鎧の男は、仲間に目で合図を送る。それは殺戮の命令であった。
ニンジャマスターが、短刀に闘気を込める。そして倒れるニジナに歩み寄った。
ジンタが呻きながらニジナに覆いかぶさる。そしてマントで防御するが、さすがにさっきの攻撃をもう一度受ければ、マントで防いでも命は無いように思えた。
「ジンタ・・もうダメだよ・・あなたは逃げて・・」
「・・・・大丈夫・・このマントは強い・・耐えれるぞ・・」
そう言って離れようとしなかった。ニジナはぎゅっとジンタの手を握った。そして死を覚悟する。このまま二人で死ぬのならそれはそれでいいかな・・そんな風に思っていた。
だが、その覚悟は無駄に終わる。ニンジャマスターは意味不明な攻撃に吹き飛ばされた。
気配を察知するのが得意なニンジャマスターが、不意の攻撃を感じることができなかった。しかもその攻撃は、ニンジャマスターの体に、想像以上のダメージを与えていた。両腕が折れ、右足の感覚がなくなる。全身の痛みは想像を絶していた。
ニンジャマスターが吹き飛ばされて、不意の訪問者に気がつく。赤のミノタウルスの連中は、ニンジャマスターを吹き飛ばしたその攻撃者を見た。
白銀の軽装の鎧に細身の剣、短い青い髪の女性がそこに立っていた。
「なんだテメー! そいつらに加勢する気か!」
黒い鎧の男の言葉に、青い髪の女性は静かにこう返事をする。
「もちろん、身内だからな。加勢するつもりだ。僕はちょっと怒っているんだよ。大事な仲間をよくも傷つけてくれたね」
そう言われて黒い鎧の男は絶句する。
「き・・貴様・・まさか・・」
「僕はルキア・・パルミラギルドのマスターだ!」
そう言って細い剣を振るう。凄まじい衝撃が黒い鎧の男の後ろにいた魔導士に直撃する。魔導士は粉々に粉砕した。
魔導職といえど、四次職の冒険者を一撃で葬った剣技を見て、赤のミノタウルスの冒険者たちは戦慄に震える。
「ま・・待てルキア! お前に俺たちが勝てるわけがない・・負けを認めるからやめてくれ」
そう敗北の宣言をされたルキアは剣を下ろしこう返事する。
「うん・・そうだね・・敗北を認めるのなら僕は助けてもいいけど・・彼は許さないと思うよ」
一瞬で太陽が隣に落ちてきた衝撃・・そう黒い鎧の男は感じた。強烈な闘気が現れたと思った瞬間、隣にいた拳闘士の体が四散した。あの拳闘士の丈夫な体が、文字どおりバラバラになり、黒い鎧の男の息が止まる。
「うわ・・うっ・・・」
黒い鎧の男は、そう言いながら後ろに下がる。拳闘士をバラバラにした男は鋭い眼光で睨みつけた。
「無理だ。お前たちはすでに死んでいる。この俺を怒らせたのだからな!」
その男はそう言って黒い鎧の男にその拳を叩きつけた。黒い鎧の男が装備しているレーヴェン級の魔法鎧が、陶器のようにバラバラに粉砕する。
黒い鎧の男は口から血を吐いてその場に崩れ落ちた。
「お前らは俺の子分たちを痛めつけてくれたんだ。楽に死ねると思うなよ」
「あ・・・うっ・・・お前は・・ジークか・・・」
「そうだ。俺の名はジーク。お前たちを殺す者の名だ。冥土の土産にその名を刻みこめ!」
そう言ってジークは衝撃波を放つ。黒い鎧の男は悲鳴をあげる余裕もなく消し飛んだ。
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