第64話 理想の女性に出会いました

「ジンタ。みんなタチ悪いから部屋戻る」

ユキは早々に避難を開始した。それがいいだろうと俺もそれを勧める。そんな俺もこの場から逃げる為の隙を伺う。だが、子供のユキと違って、俺を逃がすつもりは微塵も無いようだ。


「ジンタ〜酒があまり進んで無いんじゃ無いのかな・・・ダメだぞダメダメ。こんな美味しいお酒は滅多に飲めないんだから〜」

いつも冷静なキネアも酒が入るとこのざまだ。そう言いながら決して大きく無いその胸を俺の体に押し付けてくる。さすがに胸を押し付けられても、キネア相手に興奮などしないので、そのまま平常心でいたのだが、なぜかそれを見たニジナがキネアを押しのける。

「密着しずぎ! キネア・・酔っ払いすぎだよ」

そう言っている本人もべろべろに見えるんだが・・・

「何よ、ニジナ。今、初心うぶなジンタをからかってるんだから邪魔しないでよね〜」

「ジンタは初心じゃない!」

なぜか力強くそう言い切るニジナだけど・・・論点はそこじゃないような気がする。だけどなぜかそれにキネアも言い返す。

「ジンタは絶対、初心だって!」

「違うって!」

そんな二人の言い合いが、こちらに飛び火してくる。

「ジンタ。あなた初心でしょ?」

「初心じゃないよね?」


うむ・・どっちでもいいぞそんなこと・・酔っ払い同士の言い合いに付き合ってたら身が持たない。なんとかここを脱出しないと・・


そんな俺に助け舟が来る。

「ジンタ。もうひとっ風呂浴びに行かないか」

ヴァルダがそう誘ってきた。そんなに温泉に入りたい気分でもなかったけど、その場から逃げる為に、その誘いを受けた。その宴会場から出る時も、ニジナとキネアは言い合いを続けていた。


風呂ではヴァルダの自慢話が続いたが、宴会場でニジナとキネアの間に挟まれるよりはかなりマシであろう。


ヴァルダは温泉に酒も持ち込んでいた。それをチビチビやりながら湯船に浸かっている。俺はそれほど酒を飲まないので、手に酒を持っているだけで口にはしなかった。


そんな感じで四、五十分風呂にいたのだけど、どうやらヴァルダが風呂から上がるようだ。俺は宴会場に戻りたくないので、少しここに残ると言ってうまく別行動に持ち込む。かなりのぼせ気味だが、すぐに出ると意味がないので我慢する。


さて、出るかと思ったのだが、大浴場の奥に、さらに外に出る扉を見つける。もしかしたら露天風呂があるのか・・そう思ってその扉を開いた。


すると深い木々に囲まれた通路が続いていて、先にどうやら露天風呂があるようだ。せっかくなのでそっちに少し入るかと思い、その通路を歩き始めた。


静かなその木々の道に、先の露天風呂から水音が響いてくる。どうやら先客がいるようだ。大浴場から誰も出入りしていなかったので、別の入り口があるのかな・・まあ、気にせず俺はそっちへ向かった。


だが、露天風呂について息を飲む・・そこにいた先客は、女性だったのだ・・しかも人ではない・・亜人・・・サキュバスに似ているが、翼の感じからさらに高位の魔族に見える。彼女は露天風呂の中心にある岩の上に座って寛いでいた。


薄い青い肌、美しくエメラルドグリーンに輝く長い髪に、黒くて鋭い翼・・瞳は大きく、宝石のような綺麗な輝きを持っていた。おっぱいは決して大きくはないけど美乳とはこれを言うのだと声を大にして言い切れるほどの美しさで、体のラインは理想のそれに一致する。


お尻から生えている黒い尻尾の生え際が、俺の性的興奮を一気にマックスまで持っていく。だめだ・・こんなご馳走が前にあるのに我慢などできるはずもない。俺は勢いよくその亜人に襲いかかろうとした。


「どうした。そんなとこに立ってないで入って来ればいいだろう。いい湯だぞ」

そう話しかけられて、襲い掛かる勢いを失う。とりあえず彼女の誘いに乗り、俺は露天風呂へと入っていく。


「失礼します・・」

「ふっ。君は冒険者か?」

「はい。召喚士をやっています」

「そうか、そうか。だから私を見ても恐れないのだな」

恐れるどころか性的興奮をしていますとも言えなくなり、黙って頷く。

「あなたはテイムされてるんですか? それとも召喚契約・・・」

そう聞くと、彼女は豪快に笑い始めた。

「はははははっ。そうだな、私のような魔族がこんなところにいれば、普通はその二択だろう」

「違うのですか?」

「私は冒険者だ。少し珍しいけどな」

なんと・・闇冒険者ダークアドベンチャラー・・そういえば聞いたことはある・・少数だけど闇種族の冒険者がいるって話・・・


「それより、さっきから君は私を性的な目で見ているようだな」

「えっ! は・・はい・・魅力的なので・・そんな目で見ちゃってます」

その美しい瞳に見つめられると嘘がつけなかった。素直にそう言った。

「悪いけど、私は自分より強い男にしか抱かれる気はないのだ。残念だけどひいき目に見ても、君は私より強いようには見えない」


なんと・・ここから良い雰囲気になると思ってたのに・・

「名前を聞いて良いですか!」

「私はリスティア・・・ダークプリンセスのリスティアだ」

なっ・・・ダークプリンセスって五次職じゃないか・・あの天然ギルマスのルキア並みの怪物ってことだよな・・・うわ・・さすがに無理だろ・・襲わなくてよかった・・だけど、どうやら俺はこの人に惚れたようだ・・諦めきれない。

「俺はジンタです・・いつか・・いつかあなたより強くなります・・そうしたら・・犯らせてもらえますか」

俺はストレートにすごい失礼なお願いをする。

「そうだな。私より強くなったらいいぞ。思う存分抱くがいい」

そんな変なお願いを、リスティアは少し笑ってそう答えてくれた。

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