第62話 寄り道しましょう

狩りの危機を乗り越えて、その後は慎重に戦いを進めた。だけど結構な時間狩りをしていたのでみんなの魔力も枯渇してきた。なので今日の狩りはこのへんにすることにした。帰りにもう一度トレジャーボックスを見に行く。


「おっ。トレジャーボックス沸いてるね」


見るとトレジャーボックスが昨日と同じように置かれている。当然のごとくキネアが近づいてカチャカチャやり始める。もちろん罠が設置されていて、それを解除した。


罠を解除すると、鍵を開けて箱が開かれた。中を見ると、ポツンと書物が置かれている。なんとそれはマーメイドの可愛い美少女の限定書物ではないか・・俺は思わずそれを手にする。当たり前のように罠が発動した。

「ぐわっ!」

トレジャーボックスから黒い煙が吹き出してみんなに吹き付けられる。その黒い霧の所為か一瞬で体調が悪くなった。


「ぐえ・・・毒食らった・・」

「何やってんのよ、ジンタ! あんた学習能力ないの!」

昨日と同じミスをして、さすがのキネアも怒っている。


「キュアクリア!」

ニジナが状態回復の魔法を使用する。みんなの毒状態が回復された。そのあと、キネアの説教が始まる。

「罠が毒くらいでよかったけど、爆発とかテレポートとか、もっと危険な罠だったらどうするつもりなのよ。ちょっと反省しなさい」

「・・・ごめん・・」


さすがに反省した俺は、なるべくトレジャーボックスには近づかないと約束した。


セーフティーゾーンに戻った俺たちは、その日もそこでキャンプをすることになった。四、五日はここで狩りをするつもりなので、しばらくはこの繰り返しになると思う。



その後、特に問題も起きずに狩りは終了した。五日間、ここで籠って狩りをして、その結果だけど、俺のレベルが21にあがった。五日で20から21にあがるのは驚異的らしいので、ひとまず狩りは成功と言っていいだろう。さらにトレジャーボックスから五つのアイテムをゲットした。三つは魔法装備で、二つは魔法素材であった。このパーティーに鑑定ができる者はいないので価値はわからないけど、ある程度の儲けは出そうだった。


また、マグマドンやプラズマパンサーからも幾つかレアドロップが手に入っているので、それも分配できそうだった。


俺たちはまずまずの成果で狩りを終えて帰路につく。そのままルーディアに戻っても良かったんだけど、五日もダンジョンに籠っていたので、かなり汗や何やらで汚れている。なので、ニジナとキネアの希望で、ドーンダンジョンの近くの村にある温泉宿で一泊することになった。


成果が出ている狩りだったので、みんな気が大きくなっているのか、宿の部屋のグレードも、いつもより少しだけ良い部屋をとる。


ニジナとキネアが同室で、俺とユキとシュラが同じ部屋になる。もちろんミチルも俺の部屋であった。


まずは何より温泉だろう。ここには有名な露天風呂があるので、飯より先にひとっ風呂浴びることにした。


風呂に行くと、先客がいるようであった。かなり大きな体が目に入る。俺は洗い場で急いで体を洗うと、すぐに湯船へ静かに浸かる。


「フゥ・・・」

極楽とはここではないだろうか・・そう感じるほどの至福の感動に癒される。


「気持ちよさそうだな、ジンタ」

いきなり名前を呼ばれて驚く。声の方を見ると、そこにはあのサブマスのヴァルダがいた。あの先客のでかいのはヴァルダだったのか。


「ヴァルダ。こんなとこで同じギルドの仲間に会うなんて、なんか変な偶然だな」

「そうだな。で、ジンタたちはどこ行ってたんだ」

「ドーンダンジョンで狩りだ」

「もうそんなとこで狩りしてんのか、本当お前は成長が早いな」

「もっともっと早くレベルを上げたいのだ」

「そんな急いであげてどうするんだよ」

「色々と考えがる・・・」


色々とエロい考えがあるのだが、ヴァルダは真剣なジンタの表情に何を勘違いしたのかこう声をかける。

「そうか・・・まあ、あまり無理はするなよ。何かあったら俺たちが手伝うからな」

「うむ。頼んだ」

ジンタはたまに無意味に態度がでかいのだが、ヴァルダも他のサブマスをそんなことを気にする人間ではなかった。


「それよりヴァルダは一人なのか」

「いや、ディレイやエミュリタたちと一緒だ。俺たちはアクアダンジョンに狩りに行ってきた帰りだ」


アクアダンジョンはドーンダンジョンの先にあるダンジョンで、難易度はドーンダンジョンより数段上である。

「すげえな。何かいいアイテムとかドロップしたのか」

「ふふっ・・かなりのお宝を手に入れたぞ」

「おぉ・・それじゃ、ここの宿代は奢りだな」

「はははっ。考えといてやるよ」


ヴァルダとそんな話をしていると、ディレイが温泉に入ってきた。そして俺の顔を見ると、こう声を掛ける。

「何だ、ジンタ。なぜお前がいるんだ」

「ふっ・・俺はどこにでもいる」

「意味わかんねえよ。まあいいけど、今日の宴会に付き合えよ」

「・・・・まじか・・」


エミュリタとディレイがいる飲み会は荒れるからな・・まあ、酔わせて宿代を奢らそうかな・・

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