第59話 戦いの後で

全ての敵を戦闘不能へと追いやると、俺はアルラウネの女体を堪能する。だけど、彼女は俺を振り払うと、戦闘不能になったテイマーの男の元へと駆け寄る。そして俺たちからそのテイマーを守るような仕草を見せて立ちはだかった。


「君はあんな目に合わされてもその男を守るのか・・」


テイム技術が高いからなのか、アルラウネはろくでもないその男に忠義を尽くす。健気なその行動に何か寂しいものを感じる。


それ以上の攻撃は意味がないので、俺たちはそこを立ち去ることにした。赤のミノタウルスの連中はアルラウネが守っているのでそこに放置しても大丈夫だろう。


結局、こんな遠出までしてレベルも上がらずに帰ることになった。ちょっと不本意だが、新しい装備の性能確認と思えば良いかな。



寮に戻ると、ヴァルダ、ディレイのサブマスたちに、赤のミノタウルスとの一件を報告する。他ギルドとの揉め事はギルドに報告する決まりなのだ。


「赤のミノタウルスか・・前にルキアがボコボコにしたギルドだな」


ディレイの話だと、赤のミノタウルスとの揉め事は今回が初めてではないらしい。

「ゴメンなさい・・向こうは私たちを殺す気でいたので、戦うしかなかったの・・」

ニジナが控えめに言い訳をする。

「あいつらが悪い。ニジナが謝ることじゃない」

俺がそう言うと、ディレイたちもそれを否定しない。

「赤のミノタウルスが問題ギルドだというのは知っている。それを考えればお前たちの話に嘘はないのは間違いないだろう」

ディレイの話にエミュリタも同意する。

「そうだな。あれだけ無茶苦茶しているギルドだから、いつか誰かが揉めてただろうし、それが今回ジンタたちに回ってきただけだな」


「まあ、揉めたのはいいとしてギルドメンバーに注意はしたほうがいいだろう。逆恨みしてうちに嫌がらせをすることは十分に考えられるからな」

ヴァルダの言う通り、ああいう連中は自分のやったことは棚に上げて根に持つ輩が多い。


「それにしてもそいつら三次職のパーティーだったんだろ。よくジンタとニジナで倒せたな」

ディレイが感心したようにそう発言する。

「まあ、ユキとシュラは三次職に匹敵する力があるから、それほど不思議ではないと思うぞ」

エミュリタはユキとシュラの力を高く評価しているようだ。


そのあと、サブマスたちからギルドの仲間には、赤のミノタウルスには注意するように通達された。このまま揉め事が拡大すればギルド戦争にも発展しかねない。そうならないようになるべく挑発には無視するように指示が出る。


俺とニジナも、狩場を変えてあいつらに会わないように配慮することにした。しばらくはタイガーホールへは足を運ばないようにしないと・・



狩場を変えた俺とニジナは、ドーンダンジョンの最下層へと行くことにした。ドーンダンジョンは全10階層。ルーディアから歩いて一時間ほどの場所にあるダンジョンで、人気が高いのだが、最下層の狩場はそこに行くまでにかなりの時間がかかるので、そこは比較的パーティーは少ないと思われた。


今回の狩りには、ハイレンジャーのキネアを連れてきた。実はドーンダンジョンの最下層には、トレジャーボックスが湧き出るポイントがあり、レベル上げのついでにそれも頂こうと考えたのだ。トレジャーボックスには罠がかかってることも多く。開けるにもかなりのスキルが必要になるので、罠探知と解錠スキルを持っているキネアを誘ったのだ。3人だとレベル上げの効率は少し落ちるけど、トレジャーボックスからはレアなアイテムが手に入ることもあるのでやはり無視はできない。


ドーンダンジョンは最下層以外の難易度は比較的低い。9階層から急激にモンスターの強さが上がり、10階層になると、三次職でも苦戦する難敵が多く出現する。10階層まで行く道のりは、時間はかかったが苦戦することもなく無難に到着した。


10階層に到着すると、トレジャーボックスを確認しに行く。どうやら先を越されたのかトレジャーボックスはすでになかった。トレジャーボックスの沸き時間は12時間から24時間らしいので、また後で見に来ることにした。


10階層までに来るのに十時間くらいかかったので、その日は10階層にあるセーフティーポイントでキャンプをして休むことになった。今回はキャンプスキルの高いキネアがいるのでキャンプ飯のグレードが高い。


彩り野菜のサラダ、イリニア鳥のじっくり焼き、三種キノコのクリーム煮込、果実のタルトと、普段のキャンプの食事では食べられないようなラインナップである。


「ジンタ。これ美味いぞ」

シュラがほくほく顔でイリニア鳥にかぶり付いてそう言う。ユキも果実のタルトが気に入ったのか、ミチルと仲良く分けて食べている。


「これ、食べたらちょっとトレジャーボックス見てくるよ」

キネアがトレジャーボックスが気になるのかそう言ってくる。

「明日でいいんじゃないか」

「また取られてたらショックでしょ。まだ湧いてなかったらすぐ帰ってくるよ」

「一人じゃさすがに危ないから俺も行くよ」

「ありがとう。ジンタ、意外に優しいのね」


そういう話になって食事を食べ終わると、俺とキネアはトレジャーボックスを確認しに出かけた。


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