エルフの店主の鑑定結果を聞いていると、他のアクセはどれも無難にアタリのようである。その中でもユキとシュラにぴったりのアクセが幾つかあった。

火炎耐性アップと魔力の最大値の上昇がついた指輪と、火炎耐性アップと氷結属性攻撃アップのペンダントである。この二つをユキに装備させれば相当な戦力アップとなりそうだ。物理耐性と、物理攻撃アップの指輪と、敏捷アップと物理攻撃アップの腕輪はシュラに装備させよう。二人の特徴にあったアクセがあってよかった。

それにしてもどれもフィフス級以上のアクセで驚いている。もしかしてニジナって引きが強いのかな・・その考えを証明するかのように、彼女が選んだ青く光る宝石が埋め込まれたワンドがとんでもない品物だった。

「スフィード級魔法武器・・全魔法属性攻撃アップ、火炎属性魔法三階級クラスアップ・・特に呪いや悪いものも付いてない、純粋な高品質なワンドです。これ、どこで手に入れたんですか・・」

多分見た目から分不相応の装備に疑問を持ってそう聞いてきたみたいだ。

「上の魔道武器屋で一万で買った」

エルフの店主はそれを聞いて絶句していた。そしてこう言ってきた。

「いや・・普通に一千万くらいはするワンドですよそれ・・」

俺は信じられない価値に、喜びを爆発させる。

「よし！　俺の手柄！」

「えええ！・・・それ私が選んだやつでしょ」

そうニジナが抗議するが、俺は当たりなら俺の手柄と先に宣言している。後から何か言っても聞き入れない。

それにしても今日の買い物はかなり身のあるものになった。何かしら得体の知れないものが付いているマントと指輪は気になるが、それ以外はどれも純粋に大当たりだと思う。

「そうだ、ニジナ。これ、俺もユキもシュラにも必要ないからやるよ」

そう言ってジンタがニジナに渡したのは、ルーン級で神聖補正の付いた指輪であった。今日買ったアクセの中では一番の外れで、神聖補正などプリーストやシスターにしか意味がないので、ケチなジンタであったが気前良くニジナにあげた。

ジンタは何も考えずに渡した指輪であったが、ニジナは心の底から喜んでいた。神聖補正などはどうでもよかった。ジンタが少しでも自分の事を気にかけてくれたのが何より嬉しかったのだ。しかし、この喜びの勢いでか、なぜか鑑定代の半分をニジナが払うことになった。後でマントの鑑定代だけでよかったと後悔するが、貰った指輪の価値の方がニジナにとっては価値があった。

冒険者百貨店の最上階にある飲食店で、食事を食べて、その日は寮へと戻った。部屋に戻ると、曰く付きのマントと、何かしらが付いている指輪をどうするか本気で悩む。

「さて・・このマントと指輪どうするかな・・」

「一回、装備してみたら？」

シュラが無責任にそう言ってくる。

「装備して、呪いで外せなくなったらどうするんだよ。呪いを解くのはすげー金がかかるんだぞ」

「呪いくらいでガタガタ言うキャラでもないだろうに、大した呪いじゃないかもしれないだろ」

シュラの言葉に我に帰る。確かに俺としたことが後先を考えてしまっていた。呪いごときに恐れを抱くとは・・そうだな一回装備して考えよう。

そう考え、まずはマントを装備してみることにした。

「ふむ、特に変化はないな・・・」

そう思った瞬間、体がフワッと浮くような感じになり、俺はいきなりシュラに抱きついていた。

「こら、ジンタ。いきなり何すんだよ」

「いや。違うぞ。何か俺ではない意志がこうさせたのだ」

とりあえず一度シュラから離れるが、すぐにまたフワッと浮くような感覚になり、シュラに抱きついてしまった。

「だから・・ユキが見てるだろ・・」

「違うって！　俺の意思じゃないぞ」

「ジンタ。ユキも抱っこ・・」

ユキもなぜか抱きついて欲しいのか、大きく手を広げてこっちを見る。だけどユキの方にはいかないで、シュラにばかり抱きついてしまう。

わかったぞ。これがこのマントの訳ありか！　俺はマントを脱ぎ捨ててみた。するとシュラに抱きつくのは止まった。やはりこのマントが原因のようだ。

「う・・・ん。一体どういった呪いなのだ」

俺はもう一度マントを装備して、マントを眺めてみた。するとその呪いの正体が姿を表す。

「ぐはははははっ。俺は女が大好きなんだ。もっと女に抱きつかせろ、触らせろ、おっぱい揉ませろ」

「な！　マントが喋った！」

「気持ち悪いやつだな・・・」

「ユキ・・怖いよ・・」

「いいからその女に抱きついちゃえよ。気持ち良くなっちゃえよ。男の本能のままにしたがっちゃえよ」

・・・・こいつ男の煩悩の塊だな・・そりゃ曰く付きで売れ残るわ。しかし、ここであることを思い出す。このマント・・最高クラスの防具であり、性能は抜群に良いのだ・・このスケベな行動さえ制御できれば、その最高の防具を格安で手に入れたことになる。と、考えて、思ったのだが、これって制御する必要あるかな・・・いつもの俺の行動とそんなに大差ないような気がするぞ・・いや・・違う！　俺にとってはこいつは大変都合の良いものなんじゃないだろうか・・そうだ、可愛いモンスターを見つけて抱きついても、全部マントの所為にできるじゃないか・・・すげ・・俺にとっては全然デメリットじゃねえ。

俺は小声でマントに話しかける。

「おい、マントよ。話がある」

それは黒い相談であった。お互いに利益のある話に、マントも不敵な笑いで応じた。