第55話 指輪物語
さて、マントとも話がついたので、あっちは大丈夫だろう。残るはこの指輪の方だな・・・まあ、指輪の火炎属性魔法の三階級クラスアップはかなり魅力的だからな・・ワンドの全魔法属性攻撃アップ、火炎属性魔法三階級クラスアップと合わせると、俺のクラス2のファイヤーボールがクラス8までパワーアップされる。火炎属性魔法のクラス8といえば、四次職の魔導職が使うクリムゾンフレア並みに強化されることになるってことだ。火炎属性特化の攻撃だけど、それでも強力な攻撃力を手にするのは魅力的であった。
問題はどんな呪いが付いてるかだな・・・
「とりあえず、装備してみるか」
マントと同じく、俺は躊躇することなくそれを装備した。だが、指にはめても特に変化はない。それからしばらく様子を見るが、何も起こらなかった。
何だ呪いってのもガセなのかな・・そう思って一回指輪を外そうとするけど、どういうわけか指輪が外れない。
「くっ・・・ダメだ。外れない」
「やっぱり呪われてるんじゃないのか」
シュラの言う通り、これだけ外れないのは普通ではない。しかし、装備を外せない以外の変化もないので、その日は深く考えないで寝ることにした。
だが、本当の呪いの効果は、気持ち良く熟睡してから起こった。
「ぐっわー!」
俺は何か顔に痛みを感じて飛び起きる。何が起こったか確認する為に周りを見渡すが何もない。気の所為かと思いまた眠りにつく。すると今度は耳を何かに引っ張られた感覚で起き上がる。
「誰かいるのか!」
何者かの気配を感じてそう叫ぶが返事はない。ちょっと嫌な感じだけど、買い物で疲れていた俺はまたすぐに眠りにつく。だけどその得体の知れない何かは、俺を熟睡させてくれないらしく、今度は耳元で大きな声で叫ばれた。
さすがに気の所為じゃないだろうと、起き上がった俺はランプの光をつけた。そして俺の睡眠の邪魔をする何者かを探し始めた。だが、驚きはそんなバタバタと部屋を探索する状況と、ランプの光で明るくなった部屋にも関わらず、熟睡するユキとシュラの二人であった。
「キキキッキャハ・・・」
小さな笑い声が聞こえる。俺はその方向を見た。そしてそこには呪いの正体が姿を現していた。
「妖精・・・ピクシーか!」
「キャハハ、あなた面白いわね。『誰かいるのか!』て、キャハハ」
うむ・・・どうやらピクシーは俺を馬鹿にしているようだけど、正直そんなことはどうでもいい。こいつ・・小さいのにエロいぞ・・辛うじて大事な部分を隠している服を着ているが、露出度は高い。そしてサイズは小さいのに、出るとこは出てるし、体のラインも十分にエロかった。
俺はパッと手を出してピクシーを捕まえる。
「え!! どうして私を触れるのよ人間!」
捕まったピクシーは、体をバタつかせてそう叫ぶ。どうやら本来は人間には触れない存在らしい。ふっ、だが、計算違いだったな。俺は例の悪霊騒動でなぜか身に付いた、霊に触れるという特技を持ってるのだ。まあ、霊と妖精が同一のものかは知らないけど。
うむ。見れば見る程エロい体じゃないか・・これで人間サイズだったらすぐにしゃぶりついてるぞ。
「・・・何よそのいやらしい目は! 私をどうする気! まさかエッチなことをするんじゃないでしょうね!」
「ふっ・・そのまさかだ!」
俺はそう叫ぶとピクシーの服を剥ぎ取った。ぷるんと形の良いおっぱいが姿を表す。
「きゃあああ!」
服をひん剥かれたピクシーは叫び声をあげて抵抗する。そんなことお構いなしで、体を触りまくろうとした。だけど・・・抵抗していたピクシーは、先ほどの騒がしさが嘘のように静かに、シクシクと泣き始めたのだ。
「う・・嫌なの・・こんなの嫌なの・・・うっ・ヒクッ・・うわああん」
なんだこの罪悪感は・・そんな泣き方されたらもう何もできないではないか・・
「・・・・ごめん・・・」
気がつくと俺はそう謝っていた。
「・・・ヒック・・うっ・・・」
「ごめんよ。もうしないから」
「・・・本当?」
「ああ。ほら、服を着て」
そう言うと、泣き止んだピクシーは服を着て、俺の手から逃れた。そして豹変する。
「バーカ、バーカ! 嘘泣きに決まってんじゃん。騙されてやんの! へへん!」
「なっ!」
俺は絶句する。くそ、腹が立ったので今度こそ捕まえてエロいことをしようとするが、油断していないピクシーは素早い。なかなかさっき見たいに捕まえられない。
「うすのろ人間。バーカ、バーカ!」
「くっ・・貴様・・・許さんぞ!」
「へへん。私は貴様、なんて名前じゃないよ。ミチルって可愛い名前があるんだから」
「そうか、そうか、ミチル。俺も人間なんて名前ではないぞ。ジンタってちゃんとした名がある」
「そうなんだ。それじゃ、うすのろジンタ。こう呼べばいいんだね」
「素晴らしきジンタ様と呼ぶことを許そう」
「キャハハハ。自分で素晴らしいとか言うのおっかしいんだ」
「ははははっ。自分で可愛い名前って言うのもおかしな話だ」
「ライトニング!」
「ぐわっ!」
ピクシーの放った雷撃魔法が俺に直撃する。
「ミチル・・・攻撃魔法は反則だぞ!」
「へへん。ちゃんと手抜いてるよ。指輪をはめてるあなたが死んだら私も消えちゃうもん」
「ほほう・・・それはいいことを聞いた。だとすればミチルは俺を殺すことはできないってことだな・・・」
「ぐっ・・・余計なこと言ったみたいね」
「ははははっ。この指輪の力と、このワンドによってクラス8までパワーアップした俺のファイヤーボールを喰らうがいい!」
「可愛いピクシーちゃんになんてもん喰らわそうとしてるのよ」
「さぁ覚悟しろミチル!」
「・・・・・ゴメンなさい! もう悪口言いません。許してください・・」
ミチルは素直にそう謝ってきた。もちろんさっきと同じように俺を騙そうとしているのは見え見えである。
「ふっ・・同じ手に二度も引っかかる俺じゃないぞ」
そう言うとファイヤーボールを放つ真似をする。もちろんこんなところでそんなもんぶっ放したら大変なので本当に打つわけはない。
「うっ・・うわあん・・謝ってるのに・・・ヒック・・許してくれない・・」
さっきと同じようにミチルは泣き出した。すると後ろから俺を非難する声が聞こえて来る。
「あ〜あ。ジンタ、そんな可愛らしい子を泣かしちゃダメだよ」
「ジンタ。いじめちゃダメだよ」
ユキとシュラであった。さすがにこの騒ぎなので起きないわけないよな。しかし、こいつら、途中から見ているから事の顛末を知らないので、完全に俺が悪者になっているようだ。
「いや、違うぞ。こいつのこれは嘘泣きで・・・」
「うわわん。お姉さん、助けて。私・・・酷いことされてるの!」
そう言ってシュラの胸元に逃げていく。
「ジンタ。理由は何か知らないけど、もうやめてやれよ」
「ジンタ。謝るんだよ」
「ぐっ・・・なぜ俺が・・・」
「ジンタ・・」
諭すようにシュラに言われて、仕方なく俺はミチルに謝った。
「悪かったよミチル・・・」
それを聞くと、シュラがミチルにこう語りかける。
「妖精ちゃん。ジンタも謝ってるから許してやってくれるか」
そうシュラに言われて、ミチルは猫を被ったように素直にこう返事する。
「うん。許してあげる」
くっ・・・とんでもない指輪だなこれ・・だけど、ミチルの体はエロくて良いんだよな・・性格はあれだけど、少し我慢して付き合ってやるか・・
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