第53話 驚きの鑑定結果は

そこは、モンスターを愛する冒険者の為の店であった。召喚士、テイマー専門店・・・いや・・俺にぴったりの店だけど・・俺の求めていたのはこんな馬鹿真面目な店じゃないぞ・・・なんか騙された気分だ。


しかし、召喚士、テイマー専門店というだけあって、品揃いは中々のものであった。他で買うのが難しい、調教スキルアップの鞭や、召喚石が普通に売られている。


そして俺はその店で、信じられないアイテムを見つけてしまう。


「おい! 親父! このタグに書いてることは本当なのか!」

「お客さん・・俺は嘘は嫌いでね・・・間違いなくその内容の通りだよ」

それは頭に装備するサークレットで、タグにはこう書かれていた。


召喚士、全ジョブステータス50アップ・・・他にも何か補正が付いてるが、これだけでも買いの装備だろう・・・そう思い購入を即決したのだが・・・値段を見て愕然とする。


「親父! このタグに書いてる値段、桁が間違ってるぞ! 二千万と書いてるが、2万の間違いじゃないのか!」

「間違ってねえよ。それはレアな一級品だからな、それでも安いくらいだぞ」


ぐぬ・・・二千万なんて大金どうにもならないではないか・・これはさすがに諦めるしかないな・・


そう思ってトボトボと店を出ようとしたのだが、シュラが獣人用の装備で気になるものがあったようでそれをじっと見ていた。シュラが見ているのは手に装着する鉤爪のような武器で、タグにはメタルクローと書かれていた。


「どうしたシュラ。それが欲しいのか?」

「・・・カッコよくないか、これ」

どうやら欲しいらしい。値段も2万ゴルドと手頃なので買ってやることにする。シュラの攻撃力が上がるのはいいことなので悪くない買い物だ。


夢のようなサークレットに後ろ髪引かれながら店を後にする。そしてそのまま鑑定屋へと向かった。


鑑定屋は地下の薄暗い場所でひっそり営業していた。小さな小屋のような店舗で、中に入るとさらに薄暗い。ちょっと不気味な雰囲気に、ここで大丈夫かと心配になってきた。


だけど、意外なことに、店の店主は若いエルフの女性であった。若いと言ってもエルフなので、人間よりはだいぶ歳を食ってるとは思うけど・・


「いらっしゃいませ。今日は何の鑑定ですか」

透明感のある静かで重い声が、小さなその小屋に響く。俺は今日買った未鑑定の装備をカウンターに広げてこう言った。

「これを鑑定して欲しいんだけど」

エルフの店主はそれを見つめると、何度か頷き、こう返事する。

「はい。わかりました。鑑定させてもらいます」

「いくらくらいになるんだ」

俺が値段を聞くと、少し考えて返答する。

「全部で五万ゴルドくらいですね」

さすがに鑑定代は安くない・・鑑定は特殊スキルなので、取得するのが難しい。貴重なスキルなので使える者も少なく、どうしても値段が高くなってしまうのだ。


エルフの店主は鑑定スキルを発動させて、丁寧に装備を確認していく。表情を変えずに鑑定をしていた店主の表情が変わる。

「こ・・これは・・」


店主の反応した装備は、あのいわく付きのマントであった。

「これはすごいマントですね・・ラグリュナ級魔法装備・・・レジェンド装備属性・・全耐性防御・・」

「何だと! あのマント屋の親父が言ってたことは本当だったのか」

しかし、そのままマントの鑑定をしていたエルフの店主が話を続ける。

「でも・・・何か悪いものが付いてるわね・・呪い・・いや・・もっとタチが悪いか・・」

うむ・・やはり曰く付きも嘘ではないようで、何かしらの悪いものがとりついているようだ。


「私の鑑定スキルでは完全にはわからないんだけど・・どうも悪い何かがそのマントに付いているようです。マントとしては最高の物ですけど、なるべく装備しない事をお勧めします」

せっかくの最高品なのに装備するなってのは酷な話である。


エルフの店主は、さらに鑑定を続ける。アクセの鑑定をしている時に、さらに大きな驚きを見せた。

「ちょっとこれ・・すごい指輪ですよ。ラレーヴェン級魔法装備・・火炎属性魔法の三階級クラスアップ・・魔力増加・・耐久力アップ・・あ・・・でもこれも何か付いてますね・・・」

何!・・指輪も訳ありかよ・・・

「う・・・ん。これもよくわからないですね・・悪いようにも見えるし・・そうでもないようにも見えるし・・」


この鑑定士大丈夫か、わからないことだらけじゃないか。

「念のためにこの指輪も装備しない方がいいですね・・」


当たりっぽい装備には何か理由があるのはなぜだ。これでは素直に喜べないではないか。

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