第50話 優雅な休日

ジンタに貰ったチケットで、ユキちゃんとシュラちゃんとやってきたのはアンダルシア劇場。セレブの人たちが来る場所で、私たち末端の冒険者が気軽に来れる場所ではない。


ちょっと異様とも言える高級な雰囲気に、私も二人もちょっと戸惑っていた。出迎える劇場スタッフに話しかけられただけで驚いてしまう。


「ニジナ。あれ食べたい」

劇場に入ると、普段、目にすることのないような高級なお菓子が売られていた。ユキちゃんがそれに食いついたので、三人分購入する。三万ゴルドは痛い出費だがユキちゃんが嬉しそうなので良しとしよう。


「ニジナ。私はあれが飲みたい」

シュラちゃんがおねだりしてきたのは高級そうなお酒だった。値段が書いてないのが怖い・・・だけどこんな日じゃないと飲めないようなものだったので、そこにいる店員さんにそっと値段を聞いてみた。そして聞いた値段にフリーズする。


グラス一杯で二万ゴルド・・まじですか・・フクロウ亭の果実ジュースが40杯は飲める値段だ。さすがに躊躇したが、物欲しそうに見ているシュラちゃんを見て、一杯だけご馳走した。


劇場内に入ると、係りの人が席に案内してくれた。ゆったりとした座席は見るだけで高級な感じが伝わって来る。開演前には劇場内が少し暗くなった。それをいいことにシュラちゃんが私の手を握ってくる。やんわりそれを拒否していると演劇が始まった。


演劇の話は、どこかの貴族の悲劇のラブストーリーだった。話はありがちだが、演出にお金をかけていて中々面白い。ユキちゃんには内容が大人な感じなので少し早いのか、ちょっと退屈のようだ。シュラちゃんは隙を見せると私の体を触ってくる。どうも演劇を真面目に見てるのは私だけのようだ。


演劇の方は、クライマックスに突入する。貴族の青年が愛したのは、娘に姿を変えていた魔物だったのだ。しかし、魔物の純粋な愛に心惹かれていく青年は、やがてそんな魔物の少女の愛に気がつく。


私は少し共感出来る内容に惹きつけられていく。最後は、貴族の青年の親に雇われたハンターに、魔物の少女は殺される悲劇的な終わり方なのだが、少女の死を知った青年が泣き崩れるシーンを見て、真の愛とはこうあるべきだと考えさせられた。


「いい演劇だったね・・・」

しみじみとそう言うが、後半寝ていたユキちゃんと、私の体を触ることばかりに意識がいっていたシュラちゃんには共感が得られなかった。帰りは小洒落たお店で食事をして、そのまま寮へ帰る。ユキちゃん達を送る為にジンタの部屋に行くと、彼はなぜかすごい疲労感たっぷりで倒れていた。


「おう・・・・ニジナか・・演劇どうだった・・・」

「すごく良かったよ・・それにしてもジンタ、あなた一人で冒険にでも行った? すごい疲れてるみたいだけど・・」

「いや・・ちょっと自主練だ・・召喚の練習だ・・」

「・・・・なにそれ。あんた用事があるって言ってなかった?」

「まあ、用事が終わった後に時間が余ったので練習してたんだ」

召喚って練習すると上手くなるのかな・・そんな素朴な疑問はあったけど、そんなひたむきな姿勢は嫌いではない。そんな彼を見ていると、何か手伝いたくなってくる。

「何か手伝えることある? 鍛錬したいんだったらまたペア狩りでも行く?」


そうだな・・反抗的な召喚モンスターたちにエロいことをさせるには従属補正を上げる必要がある。その為にはジョブポイントが必要だ。もう俺は三次ジョブクエストまで終わらせて、ジョブクエストでのジョブポイント獲得ができないからレベルを上げて稼ぐしか方法がないからな・・


「よし・・ニジナ。またレベル上げ付き合ってくれるか」

ジンタが私を頼ってくれるのが嬉しくて、二つ返事で了承する。


話をして、さらに効率のいい狩場を探す為に、少し遠出をしようと話になった。少し準備もした方がいいってことになったので出発は来週にして、今週は準備期間とすることになった。ジンタはブラックドラゴンにマントを焼かれているので買わないといけないしね。私も装備を新調したい。なので明日にでも冒険者デパートへと買い物へ行くことになった。

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