第30話 これは無茶ではない
最初の、ペア狩りの狩場に選んだのは、グラリア遺跡と呼ばれる場所であった。そこは、狭い範囲にモンスターポータルが12個も存在して、休みなくモンスターが湧いている危険な狩場である。
狩場推奨レベルは15から20、パーティー人数は6人以上必須と、俺たちのパーティーから考えると、どの条件から見ても場違いである。
だけどこれくらいの場所でなければ意味がない。気合いを入れて狩りを始める。
今、目につくとこにいるモンスターは10匹ほど、ほとんどがパワーオーガで、レベルは18前後と勝てない相手ではない。だけど遠くにヒドラが見える。あれが襲ってきたらかなり厄介であった。
「ヒドラには近づかないように、パワーオーガを狩りまくろう」
俺がそう言うと、ニジナ、ユキ、シュラが小さな声でおーと声であげる。
まずはシュラが前に躍り出る。そしてオーガにその爪で攻撃を与えた。シュラの爪はオーガの硬い皮膚も簡単に引き裂き致命傷を与えていく。攻撃を開始したことで、周りのパワーオーガが集まってきた。それを離れたところからユキがアイシクルランスで攻撃する。氷の槍はパワーオーガを貫き凍らす。一撃で体力の高い敵を戦闘不能するその威力はさすがに反則級である。
俺も敵が近付いて来ないように、後ろからファイヤーボールなどで攻撃を与える。致命傷まではいかないけど、ダメージは与えているようだ。
ニジナは防御魔法を唱え始めた。物理耐性を大幅にアップする、プロテクトシールドを全員に付与する。光のオーラがパーティー全員に現れた。防御力が上がり、シュラが思いっきり敵に突撃する。岩をも破壊するパワーオーガの拳の攻撃をシュラが細い腕で弾き返す。そしてその爪で首を切り飛ばした。
シュラの後方から、3匹のパワーオーガが近づいてくるが、ユキのアイシクルランスで一掃される。
周りにいたパワーオーガは、想像より早く片付けることができた。だけどこの狩場の恐ろしさはここからが本番である。少しの休憩もできないうちに、次の敵がモンスターポータルから湧き出ていた。少しでも殲滅スピードが遅れると、無数のモンスターに囲まれる危険がある驚異の湧きスピード、それがグラリア遺跡であった。
そんな激湧きポイントで五時間ほど狩りをしていたのだが、さすがに魔力が危うくなってきた。まあ、ユキはまだまだ余裕がありそうだけど、俺とニジナは枯渇気味である。シュラのスタミナも凄まじく高いけど、さすがに疲れが見えてきている。ここらあたりで一度引いた方がいいだろう。
だが、その判断は少し遅かった。いつの間にか遠くにいたはずのヒドラがすぐそこまで接近していた。
「やばいぞ、シュラ。ヒドラがそこまで来てる!」
声をかけた時にはヒドラの首の一つが、口を開けてシュラに炎のブレスを吐き出していた。炎がシュラに直撃する。
「シュラ!」
だが、炎を受けたシュラは平気な顔をしていた。どうやら彼女は火炎耐性を持っているようだ。
「よくもやってくれたな蛇っころ! 服が焦げたじゃねえか!」
俺が買ってやった赤いビスチェの端っこが少し焦げたようだ。それを見てシュラが激怒する。シュラは高く跳躍すると、炎を吐き出した頭を爪で攻撃する。それを受けて、ヒドラの頭の半分が吹き飛んだ。
このヒドラの頭は三つある。一つを潰してもまだ油断することはできない。すぐに残りの頭二つが攻撃をしてくる。厄介なことに炎はユキの弱点である。俺はユキを守るように彼女の前に出た。
ニジナが最後の魔力を使って防御魔法を唱えた。それは火炎耐性を上げるファイヤープロテクトであった。これで炎の直撃を食らっても一撃くらいなら耐えれそうであった。
プロテクトの効果後に、ヒドラの炎は俺に直撃する。もちろん熱いけど、ファイヤープロテクトのおかげか、致命傷にはならなかった。その間に残りの頭の一つをシュラが粉砕する。これでヒドラの頭は残り一つだ・・
だけど、ここの狩場の恐ろしさはここからであった。ヒドラの相手をしている間に、周りにはパワーオーガが無数に湧いていた。それどころかもう1匹ヒドラが出現しているではないか、しかも今度のヒドラは四つ首である。ヒドラは頭の数が増えるごとに倍々で強くなると言われている・・・これはさすがにやばい・・
「ユキ! 絶対零度は使えるか?」
「・・・ダメ。絶対零度を使うほどの魔力は残ってない・・」
ぐはっ・・絶対絶命では無いか、どうする・・俺!
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