第21話 宴会のその先に

どこからおかしくなったのだろうか。楽しいはずの宴会が地獄絵図へと変わったのは・・ロッキンガンとブレイブルが裸踊りをし始め、エミュリタが激ギレしたのが始まりのような気がする。


怒られた二人が、宙づりにされて、それを肴に酒が進み、異様な盛り上がりを見せた。アマゾネスのジュエルが脱ぎ始め、ルルナがそれを泣きながら止める。ニジナはなぜかそれを見て笑っていた。


男どもは狂乱に酔いしれて、女は静かに嵐を見つめる。静と動の共演は続き、やがて破壊行動にでる者まで現れて、そして俺たちは・・・


勇者酒場を出入り禁止になった。


「何がどうなっている。ディレイ、エミュリタ。お前らサブマスが2人もいてどうしてそうなった」


サブマスの中で、もっとも古株のヴァルダが、勇者酒場出入り禁止の話を聞いて、昨夜の宴会に参加していたサブマス二人に説教していた。

「すまん・・途中から収拾がつかなくなってな・・」

「私は止めたのよ。だけど男どもが暴れ始めたらどうしようもないわよ」


「勇者酒場はルキアのお気に入りの店だからな。あいつが帰ってくる前に出入り禁止を解かないと怒られるぞ。すぐに手土産持っておやっさんに謝ってこい」


「・・・・わかった」

「・・・・・はい・・」


お土産は、勇者酒場のおやっさんが好きな魚の干物と決まった。そしてなぜか俺まで同行させられている。昨日のドタバタで俺はまだ『にぎってあげる。』を購入できていない、今日こそはと思っていたのだが・・・


勇者酒場に入ると、おやっさんのでっかい怒鳴り声が響く。

「馬鹿野郎! おめえらは出入り禁止だと言っただろうが!」

「おやっさん。すまなかった。うちの連中も反省しているから出入り禁止を解いてくれないか・・」

「ダメだ、ダメだ。あんな無茶苦茶されたら店が潰されちまうわ!」

「もう店で暴れるようなことはさせないので、どうにか許して、おやっさん」

それでもおやっさんは怒りが収まらないのか、無言で表情を変えない。

「お父さん。もういいじゃない。随分反省してるみたいだし、それに【ギルド・パルミラ】の人たちは昔からの常連でしょう。今回は大目に見てあげたら」

そう言ってくれたのは勇者酒場の看板娘である、おやっさんの娘のルシーであった。


「チッ。しょうがねえな。今回だけは勘弁してやる。今度は本当に出入り禁止にするからな」

おやっさんは娘のルシーに甘いので、その言葉に怒りを収めたようだ。


ルシーはうちのギルドの女連中と仲がいい。それもあってフォローしてくれたようだ。なんとか出入り禁止の問題も解決して、俺は『にぎってあげる。』を買いに行こうとした。


「ジンタは三万でいいわよね」

「そうだな、俺たちで五万ずつ払えばいいだろう」

「・・・なんの話だ?」

ディレイとエミュリタの会話に俺の名が出てきたので聞いた。

「いや、ヴァルダに怒られたろう。なので今回の宴会の費用をギルドに請求しにくくてな、自腹にすることになった」

「・・・・それはいいが、なぜ俺の名が出る」

「何言ってんだよ。今回の主催だろ。お前が払わんでどうする」

「・・・・なに言ってんだ! 俺は無理やり参加させられたんだろ」

「だから、ほとんど俺とエミュリタで払うんだろ。差額ぐらい払えよな」

「・・・・くっ・・納得いかんぞ」


半ば無理やり、俺は宴会費を払わされた。これにより、『にぎってあげる。』を購入するには、お金が足らなくなってしまった。


いかん。早急にお金になるクエストに行かなければ・・


俺はその足で、金になりそうなクエストを探しに冒険者組合に向かった。


「おっ・・クエスト報酬、二百万ゴルドだと・・推奨レベルも15レベルとやってやれない感じじゃないし・・これにするか」


俺は冒険組合の担当にその依頼書を提出して、クエストを受けた。


まずはこのクエスト用にパーティーを考える。クエストの内容は探索系クエストだ。それを考えると、レンジャーやハンターなどの情報収集の得意なジョブが有利に思える。


まずはうちのギルド唯一のハイレンジャーであるキネア。それとスカウトのルーカス。戦闘要員でディレイあたりを誘おう。


早速、寮に帰ると、キネアとルーカスを捕まえてクエストに誘った。クエスト報酬が高額なので二人とも乗り気で参加してくれた。あとはディレイを誘おうと彼の部屋に行こうとしたら、ニジナに呼び止められる。

「ジンタ。今回のクエスト、ヒーラーはいらないの?」

「あっ。キネアが簡単な回復ができるから、大丈夫かな・・」

「・・・でも、キネアの回復量じゃ、強敵が相手なら足らなくなると思うんだけど」

どうやらニジナは今回のクエストに誘って欲しいようだ。どこかで高額クエストだと話を聞いたのかな・・まあ、お金を借りた恩もあるし、連れてくか。

「そうだな。それじゃ回復を強化するかな。ニジナ。暇なら一緒に行くか?」

「しょうがなわいね。暇じゃないけど付き合ってあげるわよ」


ニジナはすごく嬉しそうなのに嫌々感を出してそう答えた。

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